第35話 レイの怒り2
「引っ込んだぞ…おい」
「何で飛び降りてくれないの?」
「直前で怖じ気づいたんじゃねぇの?だっせぇ…」
「えぇ~…人が死ぬ所を生で見たいのに…アイツめ…」
「てか、本当に飛び降りたら俺達が犯罪者だよな?」
「いやいや美穂をレ●プした時点で既に犯罪者ですからww」
「そんなのパパに頼めば幾らでも揉み消せるわよ…それに、言い訳なら幾らでも出来るしww」
「そうそう…未成年の犯罪は大した罪にならないからな…ネンショーでも行った日にゃ、ハクがつくってもんだww」
あの子の記憶を読み取った限りでは落ちる様子を見届けるべく3人は近くにいる筈だと思った私は周辺を捜索した。
すると、近くの茂みに身を隠して屋上の様子を伺う3人の姿が見て取れたので話し声が聞こえる距離まで近づいてみたらトンでもない話をしていたの。
話を聞いている限りでは3人共、弱者を踏みつけて優越感に浸りたい、自己の欲求を満たしたいと言った極めて自己中心的な欲求の固まりみたいね。
てか、人が死ぬ所を見たいなんて願望を持っているなんて信じらんないわ…これはレイでなくても怒れるわよ…
本来ならこう言った輩が相手の場合はレイではなく私が怒り狂い、その挙げ句にレイが私を抑え込むのが毎度のパターンなのだけど、今回はレイが先に激オコしちゃっているので私が冷静にならないといけないよね。
然し…あの3人の悪意…本当に心からそれを望んでるの?
私は3人の中でも一番悪意の強い斎藤真紀に注目し、彼女の中に入り込もうとしたのだけど、どおやら先客がいる様で入り込めなかった。ならば他の2人はと思ったのだけど、この2人もなの?
…なぁ~る~ほ~ど…
これは本人が持つ悪意もあると思うけど、先客がその悪意を増幅させている可能性が有るわね。とても厄介な者に取り憑かれていると見て良いかな。
とはいえ、このまま放置するのも良くないよね。そう思った私は偶然にも帰宅したマンションの住人に憑依して3人に近付き、此処で何してると怒鳴り散らしたら一目散に逃げて行ったので追跡型アンテナで彼等を追跡調査する事にしてしてレイの中に戻る事にしようとしたのだけど、レイはレイでとても困っている様子。
仕方ないので管理室でテレビを観ていた管理人を誘導して屋上へと向かわせて事態の収集を図る事にした。
「飛び降りなきゃ絶交されちゃう…真紀ちゃんに嫌われたくない…」
「あのねお姉ちゃん…こんな場所から飛び降りたら死んじゃうよ。嫌われるも何もないじゃない死んだら何も出来なくなるじゃない」
「イヤ…真紀ちゃんに絶交されたら…美穂は…」
俺の声も真面に聞こえていない様子だな…かなり洗脳されているな…こりゃぁ…
話しかけようとしたのだが、真紀ちゃんの命令を実行出来なかったと泣くばかりで話しにならない。
もうこれは本能レベルで奴隷根性を刷り込まれていると言った方が早いな。
早まった事をしないように見守る事しか出来ない俺。全くもどかしいったらありゃしない…
と、そこに真智子から管理人を連れて戻るからもう少し辛抱してと連絡が入る。
「君!どおやって侵入した!!危ないから此方へ来なさい!!」
程なく屋上へ到着した管理人が美穂を発見し確保した。その後、管理室で立ち入り禁止の場所にどおやって入ったと追及する管理人に頑として口を割ることは無かった美穂を引き取ったのは親ではなく浦川学園の教師であった。
「どおやらあの子の生活環境から学校の内情とかを調べる必要が有るみたいね…うーん…調べると言えば箕浦刑事さんか…」
箕浦刑事の名前が出た途端に「エッ!?」と言った表情で固まるレイ。
実はレイってば、箕浦刑事さんを苦手にしているのよね。
あの後も何度か捜索協力はしているのだけど、全て私達に任せるしさ…ホント…マッタク…ヤレヤレだぜ…
とは言え、真紀とか言う名の女の子の口振りだと親は結構な大物と言った方が良いし、此処で箕浦刑事に更なる恩を売って置くのも悪くないと思うのよ。
「ヒャ~ヒャッヒャッヒャッ…あの親の娘ねぇww」
私が箕浦刑事と話しをしている時、アンテナの映像を観ていたレイが素っ頓狂な声を上げて笑い転げている。
何を見たのか後で訊く事にするとして、箕浦刑事に浦川学園の生徒が売春をして荒稼ぎしている事とレア級以上の幽霊が絡んでいる事を告げた後で関わっている生徒の名前を教えたら
「その斎藤真紀と言う生徒の親は自由党の議員で斎藤佑哉の一人娘だよ」
と教えてくれた。
それでレイがあんな笑い方をしていたのね。
2年前にこの街で行われた選挙にて、自由党の後ろ楯を得て当選した男で見てくれはハゲ・チビ・デブ・オマケに不細工の四拍子揃った容姿で、更に糖尿病を患っていると自己管理もロクに出来ない癖に金と権力にモノを言わせて3人の愛人を囲っているトンでもオヤジだったと記憶している。
当選して暫くの間は真面目に政治家をやっていたみたいだけど、去年の夏に公共工事の入札で談合があって、その時の黒幕がこの男なの。
その時は業者の方にレア級が絡んでいたので其方に気を取られている間にまんまと逃げられてしまった訳だけど、此処であったが百年目って所かしらね。
まぁ、打てる手は打った筈だから後は翌日以降でも良いかな?と思った私は雨降山に戻る事にしたのだけど、大きなミスをしていたことに気が付かなかったの…
翌日の朝…私達はこの時のミスを悔やむ事になる。




