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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第三章 コヨミさん不在
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第29話 遭遇2

地下に降りた時から妙な視線を感じていたのだけど、霊安室の前に来た時には消えていたんだよな。


…って事はこの中か…?


みたいね…結界を張るから離れないでよ?


あぁ…


小規模だが強力な結界を張り終え、緊張気味のコヨミが霊安室のドアノブを握って俺を見つめる。


うん…行こう


黙って見つめ返し静かに頷く俺。


ガチャッ…ギィ~~ッ…


背中に寒気を感じる程の軋み音を出しながら開いた扉の向こうには…


「何も無いね…」


LEDライトで室内を照らして中を確認したのだが、何もない空間が広がっているだけ。

然し、室内の空気が通路のそれと違っていてまるでソコが異空間の様な感覚を覚えた俺とコヨミは再び見つめあい、無言で頷きそして同時に


オイ!ソコの玉無し短小●茎野郎!居るのは解ってんだ!大人しく出てこい!!


と、大声で言ってやった。


魂喰こと大食いは無性であり、その事が自身のコンプレックスとして有るらしく、下ネタで罵倒されるのが大嫌いとの事なのだが、果たして本当に効果が有るのか?と…思っていたのだが…


だぁ~れ~が~玉無しだこらぁ!!


有った…単純な奴で助かったよ…天井から湧き出た魂喰の姿を見た途端、俺の中で大人しくしていた真智子が激しい怒りを顕にするが、コヨミの手前出て来る事が出来ない。なので落ち着けと一言言った後で魂喰を睨み付けるが、真智子の記憶で見た魂喰とは姿が違うじゃんよ。

見てくれはグラビアアイドル並みの容姿なのだが、容姿に似合わない野太い男声と男言葉って…そんな容姿をしているのなら、声にも拘りやがれってんだよ!


「お前だよオカマちゃん(笑)てか、無駄に美人だよな…胸デカイし」


「ホント…美人すぎて嫉妬しちゃうわ…(笑)」


「なっ…俺は無性であってオカマじゃねぇ!」


挑発しながらも結界の効果が薄くなっているのが解る。魂喰はその意思に関わらずターゲットに選んだ獲物の力を吸いとり補食するらしい。

そして補食した者の姿や力を我が物として成長するとても厄介な妖怪だ。

ってことは、この姿は取り込んだSSR級の姿が繁栄されているって事か?

んな事はどおでも良いのだが、お色気全開で迫られたらそのまま…ってパターンも有りそうだなオイ…


「ほぉ?結界を張っているのか?そんなチャチな結界では抵抗出来ないぞ」


勝利を確信したのか口角を上げ厭らしい笑みを浮かべにじり寄る魂喰めがけてコヨミが魔封じの札をクナイみたいに10枚程投げつけるも魂喰の1m手前で燃え尽きてしまう。


「コヨミは下がってろ」


今張っている結界は対妖魔結界で幽霊を相手にする結界と違い、妖怪や悪魔に有効な結界なのだが、その結界が何の役にも立たないとなればコヨミは真智子と同じ運命を辿る可能性が有る。

なので後ろに下がらせてサポートに徹して貰う事にして戦闘は俺がやることにしたのだが…


近寄れない相手にどおやって攻撃したら良いんだよ!?


思わず考え込む俺に「あの技を使えば何とかなる!」と真智子が言って来る。


あの技…?あぁ…あれか…って…未完成な技を使えってか?


あの技ってのは、ゲームや漫画に登場する飛ぶ斬撃。

高めた霊気を得物に込めて放出する技だ。

この技は振り抜くと得物の軌道に沿って刃の様に放出され、突き出すと玉となり放出されて敵を襲う。

簡単に書くとこんな感じなのだが、実際にはかなりの技量と集中力を使う。

俺の霊気は暴れ馬の様に不安定で制御をするのには真智子の補助が必要不可欠なのだ。

で、今回は真智子が補助してくれているから大丈夫ってか?そりゃぁ、俺と真智子のコンビなら何とかなるだろうけど、コヨミの目の前だぞ!?等とボヤいている間にも魂喰の侵食は止まらない。


「迷っている暇は無いよ!」


迷うより実行!真智子により、既に霊気は練られていて何時でも行使可能。

俺は刀の柄を持つイメージで右手を握りビュンと振ってみる。

すると、妖しい輝きを放つ美しい一振りの刀が出現する。とっておきの術を放つ準備をしていたコヨミが驚愕の眼差しで俺を見つめている。


頼むぜぇ~成功してくれよ~


魂喰に見えない様に居合い抜きの要領で構え立ち刀身に霊気を溜めた途端、青白い霊気が刀身を包み込むのが解る。此処までは修行の段階で出来る様になってんだよ…問題はこの先!

心を落ち着け最大限に集中力を高め素早く刀を真一文字に振り抜く。


グハッ!!


瞬間、切っ先から作り出された巨大で鋭い霊気の刃が物凄い勢いで飛んで行き虚を衝かれた魂喰は対応出来ずにモロに喰らってしまい、上半身と下半身が切断された。


「ハッ!労せず増殖出来たぜ!ありがとよ(笑)」


ヤッたか?と…思ったら切断された部分が即座に再生し2体に増えやがった!然も高笑いしているし…

しまったぁ~忘れていたぜ!

コイツは切ったら切っただけ再生して増殖するんだった!

近接戦闘も斬撃も無理なら俺に打つ手無いじゃねぇかよ!

万策尽きた俺を補食するべく詰め寄る魂喰の能力でどんどん力を奪われて行くのが解る。


「単なる幽霊があんなこと出来るなんて思いもよらなかったが…残念だったな」


終わった…訳も分からず妖怪達に狙われて最後はエサになるなんて…

俺の中に去来する絶と望の二文字。

そんな俺に勝利を確信し、俺を補食すべく手を伸ばす魂喰。


「い~た~だきまぁ~す♪」


俺を捕まえようとしたその瞬間、魂喰の背後に出現した黒い穴に引っ張られる様に魂喰が後ろへ下がる。


青「忌々しい事に強欲とその卷属は自らの核をも分裂させて増殖することが出来るから、もし分裂させてしまった場合、その全部に核が在ると思っていた方が良いぞ」


青の言った事が本当なら、この2体は両方とも本体となる訳だから複数体同時に然も完全消滅させるのは今の俺には出来る訳がない。出来るとしたらコヨミぐらいか?


「複数体同時に葬り去る様なそんな便利な術って存在するのか?てか、使える?」


と訊ねてみたらちょっとした仕込みをしないといけないけど出来るよとの心強い返事を貰っていた。


「な…何をした…」


予期せぬ出来事に抵抗しながらも俺達を睨み付ける魂喰に「ゴミはゴミ箱へって言うじゃない?」とバイバイと左手を振りながら、いけしゃあしゃあと言い放つコヨミの言葉を聞き届ける事なく2体の魂喰は黒い穴…もとい…ゴミ箱に吸い込まれて消えたのであった。


「フゥ…間に合って良かった…」


額に滲んだ汗を拭い安堵するコヨミとハイタッチする俺にアナタにあんな隠し技が有るとは思わなかったわと言い出したので、いつか驚かしてやろうと思って密かに練習していたんだと返事をした後でコヨミこそと言い返したら


「最初に投げ付けた札が仕込みになっていてね…」


ゴミ箱と呼んだ術は黄泉送りの陣の上位の術でコヨミが最初に投げ付けたのは魂喰にダメージを与える為の札ではなくゴミ箱へ放り込む為のターゲティグであった。

ターゲティグをしないでゴミ箱を出現させた場合は術者諸ともゴミ箱に引き摺られてしまい、2度と現世に戻って来れなくなる。

なので、術を発動させる為の仕込みとしてターゲティグは必要不可欠なのだ。

そしてゴミ箱の出口は当然ながら地獄。

然し、この術にはターゲティグから発動まである程度のタイムラグが発生し、その間に術者が倒された場合は全てがご破算になってしまう。そこで、俺が術の発動までの時間稼ぎをさせられた訳だが、実際問題として本当にヤられると思ったぜ。


イヤ…ホントによ…


あんな厄介なヤツとの戦闘は2度とごめん被りたいが、アイツは本体の一分しかないのだよな?此処の出来事は本体様にも知られる訳だから何れは復讐に来るだろうな。


何はともあれ危機は去ったと言う訳で念のために全階全室を点検して帰る事にした。


「10%の分身体とはいえ、撃退するとは…ますます気に入ったぞあの幽霊」


「ホント、短期間であんな技まで出せる様になるなんてこの先楽しみだわ」


「だよな…てか、あの成長度は異常だよな」


万が一に備えて2人を見守っていた青と黄はレイ達の成長ぶりに感嘆すると共に1つの疑問が生じる。


「そうよねぇ…あの幽霊の中にいる真智子って言ったかな?本当に人間だと思う?」


「かと言って引きずり出して取り調べする訳には行かねぇぜ?」


黄はレイの成長具合が異常な事に疑問を持った様子ではあったが、青の見立てでは魂のパターンは人間のそれと何ら変わらなく、追及も出来ない。


「まっ!奴等が何者なのかってのは、時期に解るだろうぜ!それまではのんびり気長に待とうや」


議論しても何も変わらないので、引き続き黒にレイ達の監視を頼んだ青は黄と共に魔界へと帰還するのであった。


レイ君の回想終わりです。次話から新しいお話になります。

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