表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第13章 勝つのはどっちだ
215/218

第204話 イザ行かん

フム…

どおやらハメられたようだな


胴塚から出て来て周囲を一望しただけでこの場が人間界ではないと看破し、呆れとも怒りとも受け取れる表情になる山本八郎座右衛門。


魔界からの通路を通った筈なのに何故この場に?


専用空間からでも人間界へ来る時には必ず通路は通ることになる。出口は人間界になるがイザ来てみたら何故か人間界ではなくレイの専用空間であったのだから無理はない。


見れば見るほどソックリに創られてます…

流石はフローラの化身とでも言いましょうか…


千里眼で周囲を観察しながら歩き回る山本。

その姿は隙だらけで不意打ちで致命傷を与えられそうだ。

不意打ちにあう可能性があるにも拘わらず、何故、隙だらけで歩き回ることが出来るのか。

山本は半径1mの範囲に絶対制空権なる、ある種の防御結界を常に展開させているのだ。

絶対制空権とは、その範囲に侵入する汎ゆる攻撃に対して無意識で反撃出来ると云うトンでもない代物だ。

強欲が戦わずして配下に加わった理由は絶対制空権を攻略不可能であると判断したからである。


然し…

全滅とは…

情けない…


少し離れた場所に発見した眷属の死体の山にブツブツと独り言を呟きながら空を見上げて何かを探す。


彼処か…以外に近いところに居る………


どおやら楓夏達の場所を調べていたらしい山本が急襲をかけるべく移動しようとしたその時、山本の胸から一振りの刀が飛び出て来た。


ゴホッ…


何が起きたのか理解できずに口から大量の血を吐き出して崩れ落ちそうになるのをかろうじて耐え、背中から突き刺さっている刀を引き抜く。


ば…バカな…絶対制空権が発動しないなんて…


絶対制空権の特性上、身体の1cm手前であっても出現したものは弾き返して相手に跳ね返る。

その特性を破るには更に内側に出現させる必要がある。


つまりゼロ距離からの攻撃。


それが出来るのは世界広しと言えど空くらいなものだろう。

然し、その空は魔界から動いている気配はない。


誰がこんな芸当を…


幸い急所は避けられたが為に傷口を再生させるだけで済んだが、更に3振りの刀が山本の身体を穿いた。


ガハッ!


刀を引き抜く時の痛みに耐えながら山本は考える。

初手で食らったのは仕方がないとは言え、今度は何処から飛んできた?

こんな事も有ろうかと傷口を再生した時、絶対制空権の精度を上げてゼロ距離対策もしたというのに何故…

此処まで思考を巡らせた時、三度飛び出る刀。

然も今度は5振り。

これでは見えない何かがピッタリと貼り付いているようではないか。


イヤイヤそれはない


何かが貼り付いていようと絶対制空権の中では全て排除される。それ程までに絶対的な自信を持っていた。


少し前の話


山本をギリギリ認識出来る距離に出現したレイは千里眼を利用して山本を観察していた。

アンテナで観察した場合、見つかる可能性がある。

それ故に千里眼を利用したのだ。

観察した結果、山本の周囲に妙な結界が張り巡らせていたのが解ったので直接攻撃は避けるべきだと判断したと同時に、あの結界の攻略方法を考え出していた。


アレやってみるか…


今まで見たことがない程の悪魔の微笑みを湛えたレイは霊気で作り出した藁人形に2つの名前を書き込んだかと思ったら、ポーンと空に投げ上げ落下してくる間に素早く印を結び、藁人形が目の前まで落下してきたタイミングで



気合を入れて呟くと藁人形が空中で止まると形状が変化し、山本と瓜二つな姿になり、レイの手に収まる。


名付けて「終わらない処刑」


言い終えると霊気で作り出した小さな刀を藁人形に刺したのだ。

するとどおだ山本の身体から身体からが突き出たではないか。


掛かった


突然突き刺さった刀を引き抜いたのを確認したレイの表情が更に悪くなる。

レイが突き刺した刀は対象者の体内を通過する際に幾つもの小さな針を撒き散らす。

その針は対象者の力を吸い取りながら急速に成長し、刀となり突き出ると言う厄介極まりない呪いなのだ。

この呪いを解呪するには神力を体内で練り上げて撒き散らされた針を消し去るか死ぬしかない。


理由もわからず突き出た刀を引き抜く度に数を増して突き出てくる刀に流石におかしいと思った山本は刀を引き抜くことを止めて身体の中に意識を向けて原因を探り出した。


ここまでだな…ご苦労さん!


言うやいなや藁人形を投げ上げ、刀で滅多斬りにするレイ。

すると山本もまた、断末魔の悲鳴を上げてバラバラになって崩れ落ちていく。


通常なら此処で終わりの筈なのだが終わらないのが山本八郎座右衛門と言う妖怪だ。


バラバラになった肉片が意思を持っているかの様にモゾモゾと動き出して再生を始める。

注意深く見ていたレイはあることに気が付く。


おー動いてる動いてる

・・・ン?

何だあの再生の仕方は


バラバラになった肉片が再生を始めたとなると、肉片に指令を出す核が存在していてそれが中心となる様に動く筈なのだが、肉片それぞれが意思を持った様に蠢いているのだから肉体そのものが核なのか、それとも肉体を構成する細胞一つ一つが核なのか、そもそもアレは本物なのか。

答えが出そうで出ない気持ち悪さ。

まるでクシャミが出そうで出ない時の気持ち悪さと同じ気持ち悪さを味わうが、このまま再生させるわけには行かない。


魔雷


地獄界で鳴り止まぬ魔力で構成された雷を召喚し肉片へと落とすと再生中であったソレは抵抗も出来ずに消し炭となって消えて行く。


あっけ…


ないなと言葉を続ける筈であったが、その言葉は発することは無かったと言うかその言葉の後に出た言葉は


金太郎飴かよ!


だった。

それもその筈で、同じ場所に3名の山本八郎座右衛門が出現したのだから無理もない。

然も、全て本体であったから困惑気味になってしまったようだ。

ヤツの本体が何人も存在しているはずがない。

少し考えれば解る。

アレはクローンで間違いないだろう。

クローンに5%程の核を植え付けた後で成長させれば良い。


まぁ、魔界での俺達と空のやり取りを見ていたら出来てしまうだろうな。

そうは思っても納得いかない部分が残る。

空がレイ達の妖怪ボディーを制作するに当たり、それなりの施設と技師が長い年月をかけて作り上げていたからだ。

考えられるのは、技師の中に眷属が紛れ込んでいて情報をフィードバックしていたとか?

等と考えながらも再び魔雷を発動させようとした時


Darkness Fire

Explosion!


状況を把握した3体の山本が動き出そうとした時、彼等を包み込む様に闇の炎が発生したかと思ったらそのまま大爆発を起こしたのだ。

一瞬ではあるがこの出来事に困惑するレイ。

術の規模や威力を考えると術者はレッドであるのは間違いないだろうが、そもそもレッドには闇系の術は使えない筈。

怪レンジャーの中で闇属性の者はブラックなのだが、隠密行動に特化していて派手な術は使えないのだ。

では、ゆう子が?とも思ったが、ゆう子の忍術と掛け合わせて発動させたとしても中爆発がせいぜいだろう。

レイとは別の場所でこの状況を伺っていた8人の男女。ヒーロー達と是流と村岡で、今の術はレッドと是流の合体術だ。


「シッカシ…あの通路を弄くり回すなんてトンでもないヤツだな」


魔界と人間界を繋ぐ通路は往路と復路の2本存在しているのだが、空間操作能力を持つ者ですら弄くり回すことは不可能なのだが、そこにバイパスを作り上げ専用空間と繋ぎ、更にバイパスとの分岐点になる地点から人間界へと続く通路を塞いでしまっているのだ。

そのことを呆れた様に言う是流に対して


「マジで非常識の塊だよ」


と返すレッドはこれまでのエピソードの一部を話すと驚いたようだが、此処で疑問が発生する。


ヤツは本当に人間の幽霊なのか…と…


勿論、レイの正体は空以外に知る者はいない。

それはレイの母親である楓夏も同じなのだが、ローラがフローラの半身だと判明している以上、そう言うことなのだろうなと理解している状況だ。

こんなことを話している間にも次から次へと山本クローンが湧いて出てきて反撃を開始しようとしている。


おい!レイ!聴こえるか!?

山本モドキは俺達が相手するからサッサと本体を片付けて来やがれ!


レイに対して一方的に念話で話した後でクローンを掃討するべく行動を開始する。


………

……


・・・あんだけの勢力を成敗しているのにまだ暴れたり無いのかよ・・・ 


レッドから一方的な念話を受け取ったレイは半ば呆れながらも本体の居場所を探っていたものの、クローンと本体の反応が同一な為にどれが本物か特定出来ずにいた。


このままではやべぇな…


クローンが通路を通って来ていることに一抹の不安を隠せないレイ。

と言うのも、バイパスを繋いだ分岐点の人間界へと続く通路を塞いだのだが、そのことがバレてしまわないかとヒヤヒヤしているのだ。

もし、バレてしまった場合、無理やりこじ開けて人間界へと行ってしまう可能性が高いからだ。


アンテナをフル稼働させて索敵をするも、どおやら人間界には居ないようだったので索敵範囲を魔界と地獄界にも広げたのだが見つからなかった。


チッ…厄介な…


此処まで見つからないとなると考えられるのは唯一つ。


専用空間だ。


専用空間は別次元に存在しているが為に行くことが出来ない。

何故かと言うと、所在が掴めないからだ。

例えば、人間界が三次元に存在しているのに対してその他の存在場所は四次元に存在しており、専用空間が存在する次元はその中間。つまり3.5次元となり、そこを亜空間と呼んでいる。

その亜空間に各々が専用空間を構築しているのたが、広い空間内で個人の専用空間を探り当てるのは不可能だと言う話だ。例えるのなら、太平洋に落ちた10Cmの石ころを探すことに等しい。

更に、セキュリティ対策も施されているが為に億が1にも特定されたとしても、主からの許可が無い限り入るのも叶わない。


ご主人様

座標を特定しました


山本の居場所を探っていたのはレイだけではない。

魔界に残る真智子とローラもまた探っていて、漸く座標を特定出来たのだ。

何故、特定出来たかと言うと、クローンの出現場所を追っていたから。

恐らくは専用空間は絶対に安全だと云った慢心からだろう。


虎穴に入らずんば虎子を得ず


ローラから座標を訊いたレイはその言葉を言い残して移動をする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ