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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第二章 修行と事件と記憶探しと
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第20話 ガチ鳥の怪1

コヨミと真智子のおかげで着々と力を付けているレイが直面した新たなる怪異が襲い掛かる

1ヶ月後の昼下がり


「かなり良くなったわね。」


この1ヶ月の間、コヨミ指導の下、霊気を操る訓練をしていた俺はアンテナ飛ばしから瞬間移動する技、壁抜けの応用で地中を移動する技、物に憑依する技(特に人形に憑依して自由に動かす技)を主に訓練していた傍ら、真智子と剣技を中心とした格闘技の訓練とまぁ、事件らしい事件も無かったのも手伝ってみっちりと濃密な時間を過ごしていた。



「じゃあ、そろそろ次のステップに移行するとしましょうか」


コヨミが言う次のステップとは、黄泉送りの陣を始めとする術系の技の習得する事だ。


「…と、思ったけど、明日は廃病院の調査に赴かないと行かないといけないから明後日からにしましょうか。」


と俺に伝えて来る。


廃病院…


その単語を訊いた真智子に緊張が走る。

真智子からしたら思い出したくない場所でもあるのだろうか。


「一緒に来て欲しいけど…憑いてきて貰える?」


小首を傾げて強制ではないけどと言いながら一緒にと誘うコヨミ。


迷う俺に決意を固めた真智子が俺の背中を押す様に行こうよと言い出す。

真智子が良いなら俺に是非はないので、コヨミの誘いを承諾して翌日の17時に駅前で待ち合わせをする。


17時かぁ…なら18時に待ち合わせかな?


等と思いながら帰るコヨミを麓まで送る為に1度下山したのだが…


ついでだからあのラーメン屋に行ってみない?と真智子が提案してくる。


別れ際に此からどおするの?と聞いて来たコヨミに少し前に出来た「ガチ鳥」ってラーメン屋を覗いてから図書館にでも行こうと思っているよと返事をすると着いていっても良い?って訊いて来たから二つ返事でOKする。

最近の俺とコヨミの間柄は、友達以上恋人未満ってところ。

幽霊と生者の恋愛なんて成立しないと思っているので、この程度で満足しないとな。

てか、これ以上発展しようものなら意図しなくても俺がコヨミを引っ張りかねない。

それはそれで俺のポリシーに反するのだ。


隠しても仕方がないから白状しておくと、俺はコヨミが愛しくてたまらない。

恐らくは生前にも味わった事がないと思われる程の気持ちに戸惑っているってのが本当だ。


神社の鳥居の横に設置されている自転車置き場に行き自分の自転車に跨がり颯爽と走り出すコヨミの後ろを憑いていく俺。


自転車は農道を走り抜けあっという間に住宅街へと到着し、ガチ鳥の前へと来た訳だが…

到着した俺達が見た光景は長蛇の列。


時刻は13時半


いい加減お客も減っただろうと読んでいた俺はお客が減っていない事に驚きながらもザッと数えたら35名程店の前に並んでいた。

店内は10席程しか無かったからこの列びは仕方がないと言えばそうだろうが、凄い繁盛しているな。


「この辺には飲食店が殆どないから仕方がないのかもね」


ガチ鳥の営業時間は昼時の11時~14時迄と17時~22時迄となっているが為、この列び加減では落ち着いて食べられないと思ったのか、また後で来ましょうと言うことになり、そのまま図書館へと行くことにしたのだが、道すがらコヨミがこんな事を言い出した。


「あの店の前って廃墟が在った場所だよね…」


廃墟が在った場所だってのは周知の事実みたいなので、それが何の関係が有るんだ?とシレッと訊いてみたのだが、その廃墟ってのが、実は幽霊屋敷と噂されていた程の不気味な廃墟であったと云う。

家は1階5LDK2階3Kベランダトイレ付きでそこそこの庭と車2台停められる駐車場付きの家

でこの辺でもトップクラスの家で住んでいたのは、100年続いていたこの街で有名であった和食店の社長一家。


そんな一家が8年前のGW真っ只中の夜、突如として失踪したのだ。


現場検証の結果、殺人事件と断定した警察は捜査を開始したのだが、犯人の手掛かりはおろか1人の目撃者も見付からずに事件は迷宮入りしている。

痕跡は有るのだが、一家の死体が出て来ないと云う謎を残して…


社長を失った店は副社長がそのまま引き継ぎ切り盛りしていたが、社長と副社長では経営の手腕は元より取引先の信用も違っていた。

何よりも社員からの信頼度が雲泥の差が有ったのだ。

副社長もまた、そう言ったハンデを乗り越えようと頑張ったが、客離れも激しく1年も経たずに他社に吸収され呆気なく100年の歴史の幕を降ろしたのであった。


然し、話はこれからが本番だ。


良くある話ではあるとは思うけど、捜査を終えた家は暫くの間は現場維持の為に立ち入り禁止になっているのにも関わらず夜になると建物の中から異音がしたり何者かの話し声が聞こえて来たりと怪現象が起こっていた。


最初は火事場泥棒かと思われたのだが、警察の調べでは盗まれた品物は皆無であった。


そうなると社長一家が成仏出来ずに幽霊となって未だあの家に住み着いているとの噂が立つのは必然であり、その手のマニアの格好の的になり、1年後には不法侵入を繰り返しては検証を繰り返したり霊能者が霊視をしたりと幽霊の正体を暴こうとしていた。

だが、ラップ音や物やドアが動いたりとポルターガイスト現象が確認されたのみで幽霊のそのものや話し声や怪しい影等は一切確認されなかったのであった。


それらしき現象は起きたと言う事で疑問符付きではあるが、社長一家の霊が未だ成仏出来ずに住んでいるとの結論に達したらしい。


然し…


それは表向きの話であった。


実は、幽霊は出るのではなく、取り憑かれてしまい気が付いたら自損事故を起こしていたり自宅まで憑いて来られ、金縛りや数人の男女に追いかけられた挙げ句に最後に殺される悪夢を見たり誰も居ないバスルームでシャワーが独りでに作動したり等々…あの家を出た後で霊現象怪現象に悩まされる者達が続出していたのだ。

更には鬱病を患ったり自殺をしたりする者が出たと云うが、これはあくまで噂の範疇にしか過ぎない。


そしてあの家は何時しかこう呼ばれる事になる。


悪霊一家の棲む家


と…


その後、何度か家を取り壊してマンションや駐車場にしようと何件かの業者が数回入り込んだりしたが、作業者が全員何らかの事故に遭ったり最悪の場合は会社そのものが倒産したりと良からぬ現象が続出した為に、つい最近まで放置されていたのだ。


その話を訊いた俺はコヨミは霊視とかしに来なかったのかと訊ねると「漫画の連載で忙しかったのと和樹に止められていたからやってない」との事。


・・・って事は・・・


真智子!テメッ!!隠してやがったな!?


と、真智子を問い詰めようと思ったのだが、真智子とてこの状況を読めていた訳でも無ければあの家の真相に辿り着いていた訳でもないので言えなかったと言ったところかな?


「じゃあ、その悪霊とやらがいつの間にか成仏したとか、とても力の強い祓い屋さんが祓ったとか?そうじゃなければラーメン屋なんて出来っこないよな」


と、何気に呟いた俺の言葉を遮る様に


「気が付かなかった?あのラーメン屋の土地から微かに漏れ出ていた怨みの声が?おそらくあれは個人への怨みではなくこの街全体を怨んでいる声よ」


と、言い出した。

これには真智子も同意した様子でラーメンに気を取られていた何処かの食いしん坊さんには無理な話しよねぇと薄ら笑いを浮かべて俺を馬鹿にしやがった。


「じゃあ、祓えないから結界を張り悪霊を封印したってのか?」


SSR級は1個人への怨みが強すぎて怨霊化した幽霊でR級はどちらかと云うと複数の人達であったり特定の会社に強い怨みを持っていたり居場所と定めた場所を荒らされたと認識した者を攻撃したりする幽霊。


その認識で言うのなら今回はとても強いR級が居ると云う事なのか?


コヨミの見立てでは、その認識で間違いはないとの事。


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