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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第13章 勝つのはどっちだ
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第197話 決戦直前2

全国区で活躍するバンド「エクストリーム」のリーダー三浦将暉みうらまさきは何気に閲覧していたウーチューブの動画のタイトルに載っていたクリスマスイベントのURLリンクをクリックしてみた。

飛んだ先は株式会社オタクのサイトのイベント専用ページ。

イベントはクリスマスライブの宣伝ページであり、その他はこれといった内容は載ってない。

これだけでは「ふ〜ん」としか思わなかったのだろうが、前座枠に記載されていたバンド名に引っ掛かりを覚え考え込んでしまったのだ。

暫く考え込んでしまった将暉は知っている限りのバンドを思い出していたのだが、ウルトラモンスターなるバンド名は知らないし聞いたことがない。

知らないバンド名なのに何故ここまで引っかかる?

自問自答をしても答えは出ない。

出ないがあの連中に会いたいと云う気持ちは次第に大きくなっていったのである。


………

……


女性アイドルグループ「桜姫7」は7人で構成されるグループだ。

元々オタク気質のある7人もまた、あの夢の中に招待された者達である。

7人は寝夢の世界で歌っていなかったが、俄ダンサーズに混じってエクストリームの曲で踊っている。

その7人の中でもリーダー格でもある八重樫麻耶やえがしまやだけはあの世界での出来事を覚えていた数少ない人の1人だ。

と言うのも、麻耶は夢を明晰夢としてみることが出来る人物であり、明晰夢でみた夢は夢日記として記録する癖がある。

勿論、あの世界の出来事も明晰夢として覚えていて、夢日記に記録済みだ。

そんな麻耶が【聖夜の馬鹿騒ぎ】の情報に行き着いたのは、怪レンジャーのファンからである。

怪レンジャーの人気は高くはないが底辺でもないし、関連グッズの売り上げもまぁまぁな成績を上げている。

熱烈なファンとまではいかないが、それなりにディープなファンだと自負もある麻耶は、あの夢の中で出会ったあのバンドのメンバーと怪レンジャーの俳優が非常に似ていると疑いを持っても不思議ではない。

それ故に会って確かめなければと思い立ち他のメンバーとマネージャー更に事務所まで巻き込んで飛び入りでの参加を懇願したのだ。

折しも、新人アイドルグループに押され始めて人気に陰りが出て来たことにより、12月の仕事が昨年比50%の状態となれば事務所側もココぞとばかり猛プッシュをし、多少強引ながらも地元バンドの後にねじ込んでしまった。


スケジュールは

前座 ウルトラモンスター

地元バンド スカイ・ハイ

桜姫7

エクストリーム

そして有名女性歌手 麗華


と云った順番となり、主催側が対応に追われる事となったが、ギャラは普通に支払う事で決着が着き、緊急参戦と銘打って大々的に発表するとファン側で勝手に盛り上がっていた様だ。


………

……


「大盛況だなぁ」


緑地公園のキャパから考えて来ても来場者は千〜二千人程度だろうと予想していたのだが、予想を大きく上回る人数に驚きを隠せないレイにスタッフの一人が出演するバンドの方が面会を求めて来てますが如何しますかと訊ねて来たので会うことにしたのだが…


「「やっぱりそうだ…」」


会いに来たのは将暉と麻耶の2人で、開口一番声を合わせる様に確信的な言葉を発したものだから当然ながら困惑しながらも何が?と問い質すと将暉は夢の中での出来事を話し出すと覚えていたんだと麻耶が被せて来た後で明晰夢として見ていたので覚えていた事、そして夢日記にもそのことを記していたことを吐露する。

コレには驚いたレイにどおなってんだと詰め寄って来たので困惑の度合いを増す。


「話してやると良いぞ。コヤツ等は達人の大切な友人の面影がある。孫の可能性が高い」


急に室内の空気が変化したかと思うと何処からともなく現れた楓夏がレイに向かって話せと言い出した。

この状況に驚き固まったのは将暉と麻耶だけではない。レイも同様に固まってしまったのだ。

これは楓夏の世界に招待された訳でなく神力による結界を張ってこの部屋のみを外界から隔離しただけだ。


「どおした?そこの男から矢野治人の匂いがするし女の方からは糸居繁の匂いがしておるぞ?お主等の

祖父がそうじゃないのかや?お前が話さないのなら妾が話してやろうか?」


と、言い出したものだから将暉と麻耶がどおしてそのことをと驚いたところで漸く金縛りから解けた様にレイが楓夏を軽く睨んだ後で本当かと2人に問う。


「貴方が匠達人さんとは俄には信じられませんが、全てを話して頂けませんか?祖父の話より悪評の方が圧倒的に多いので」


と、将暉が言い出すと同意したように麻耶も黙って頷く。


「チッ…あまり時間がないのに…お前等があの二人の身内なら話は別だ…ちょっと待っていろ……」


レイがパチンと指を鳴らしたかと思ったら室内の空気が更に変わったところで景色も変わる。


「あまり時間がないんだ。悪いけどちぃ〜っとばかり空間を操作させて貰った。今の俺は匠達人であって匠達人ではない。今から話すことは紛れもない事実であり、コレを知ったらお前たちは後戻り出来ないがそれでも聞くか?」


鬼気迫る表情で迫るレイに対して躊躇いながら2人が頷いたので渋々ながらも事の経緯を話し出す。

レイの口から出た話は信じられない内容のオンパレードであり、嘘を吐くなと言い出した場面もあったのだが、鬼の形相で睨み付ける楓夏の迫力に押され借りてきた猫の様に大人しくなってレイの話に耳を傾けた。


「・・・と言う訳だ・・・」


話したくはなかったが、相手が元仲間の身内なら話は別だ。

矢野治人、根本正人、糸居繁の3名もまた達人が真智子と結婚する前後に相次いで結婚していて其々子供を授かっていた。

男児を授かった正人に対して女児を授かった治人と繁。

全てを話し終えたレイの口から短いため息が漏れると完全に腑に落ちた様な表情をしながら麻耶が


「匠達人と言う方がトンでもない悪党だったと噂がアイツを知る者の間で広まっているのが悔しくてたまらないとお酒を飲みながら愚痴る姿を何度か見ています」


と、言い出すと将暉もまた自分も同じですと同意する様に言った。


アイツ等…泣かせてくれるじゃねぇかよ…


平然を装いつつ心で泣いていた俺を察した楓夏がそこまでにしたらどおだと口を挟むと「貴女は何者ですか邪魔しないで頂きたい」と将暉が言い出したので


「妾が達人の母親であり、風神なのだが何か?」


と、暴露すると驚いた様に「マジですか!?」的な表情でレイを見る2人にあ〜ぁ言っちゃったよ的な表情を浮かべて


「本当だ。雨土山の天狗伝説って知ってっか?俺は風神様と大天狗様の息子なんだよ」


言い切るものだから2人の驚きは最高潮に達した様でその後は話にならなかったが、言っておかなければならないことがあった。


「何があってもライブは中断しないでくれよな」


決意と覚悟の表情を浮かべ言うレイの迫力に押され、頷くことしか出来なかった2人に安堵したのか再びパチンと指を鳴らすと空間が元に戻る。


あ…あれっ…??


ずいぶんと長いこと話をしていた様に感じたのだが、時間は数秒しか経過していなく、オマケにレイと何を話したのか殆ど覚えていない。

覚えているのはレイが匠達人であること、悪評は全てデマであること、そして何があってもライブは中断するな。

この3つの事柄だけ。

然し、胸のつかえが取れる様な妙にスッキリした様な感覚に捕らわれている2人は、それぞれのメンバーの居る部屋に戻ることにしたのであった。

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