第193話 破王社の落日
レッド「核は回収出来なかったがアレの処理が出来たから良しとしなければならないな」
イエロー「でもさ、影分身が肉体を得るなんてことあるの?」
ブルー「俺も驚いたけど、レッドはどお考える?」
レッド「正直言って驚いたがよ
此処は界底だぜ?能力を発動させるのに十分なエネルギーは補充し放題だったって事だ」
イエロー「まさかと思うけど、レッドの一族の誰かが食われていたって事は…」
レッド「そのまさかだ…」
イエロー「マジ!?」
レッド「レイが覚醒する少し前に長から訊いていたから知っていたよ。だから、何としても核を確保したかったんだけどな」
ブルー「まだ本体が残っているじゃんよ」
イエロー「でも、空から一切の手出し無用だとキツく言われているからね」
レッド「人間界の言い方を真似するなら、所詮は宮仕えなんだよな…俺達ってよ…」
ブルー「そればかりは仕方ねぇよ…」
イエロー「結果オーライだから良かったじゃん」
レッド「だな…」
何時でも助っ人に入れる様にと臨戦態勢で様子を窺っていたヒーロー達は些か消化不良な表情をしながらも無事に解決出来たことに喜んでいた。
その頃人間界では…
週刊誌 ミサイルより抜粋
破王社3代目社長濱田義明氏に殺人疑惑!
2年前に失踪した社員が残した日記を当社記者が極秘ルートで入手 その日記の内容に記されていた破王社の恐ろしい裏の顔!
なんと、破王社の社長が殺人狂だと告発した記事が掲載されていたのだ。
記事によると、4年前に建設会社のY工務店が経営不振により倒産。この時、路頭に迷う筈だったY社の社員を引き取ったのが破王社。
雇い主が変わっただけで仕事も普段通り出来ていたし給料も普通に支払われていたので、Y社の社員は動揺した素振りも見受けられなかった様だ。
然し、半年経過した頃からY社の社員だった者達が1人また1人と消えて行ったが、消えた人の補充は破王社から派遣されていたし特に騒ぎも起きなかったので別の仕事先を見付けて転職したとか会社側からの指示で別の現場へ飛ばされたとかの理由で居なくなったのだろうくらいにしか他の者達は思っていなかった。
然し、Y社営業部長A氏だけは、Y社倒産の真相に勘付いていた。
破王社は解体業をメインとする会社であったが、初代社長から代替わりする時に解体業だけではと建設業や公共事業にも進出する様になった。しかし、元々それらを生業としている会社の力には敵うわけがなく苦戦を強いられていたらしい。
それでも地道に頑張って他の会社と肩を並べる様になるまでには然程時間はかからなかったと言うか、他の会社が次々と倒産しだし、倒産した会社の社員を取り込んで事業を拡大して行き、そのおかげで破王社は仕事を請け負う事が出来る様になったと言う訳だ。
A氏の手記によると、この倒産劇の裏には破王社側の工作があったとの事だ。
手口としては有り触れているかも知れないが、破王社の息のかかった人間が社長の指示で他の会社へ潜り込み、内側からその会社をぶっ壊すと云う手口だという。
その手口はと言うと、作業中に態と事故を起こす様に作業員を誘導したり会社の悪口を言いふらしたりして信用を落とした後、破王社に作業員を移動させる様に誘導すると言った手法を取っていた。
酷いのはその会社の情報を破王社に流して出し抜いていたと云うのもある。
そして、会社側が異常事態に気が付いた時には仕事自体が回らなくなり、信用ガタ落ち仕事も激減し倒産と云う末路を辿る事になったと云う。
倒産した会社が続出した事に不振に思ったA氏は独自に調査を開始し、真相を突き止めたまでは良かったが、トンでもない事実も浮上してきたと書かれている。
なんと、義明氏自ら人を殺していると言うのだ。
遺体は密かに処分され、決して表には出ることがない。
何故知っていたかと言うと、破王社に転職した部下から証拠写真や社長と幹部社員の会話を録音した音声データが送られて来たとの事だ。
この部下もまた、同時に転職した仲間が突如として消えた事を不信に持った事から調べたらしいが、その過程で勘付かれてしまったことでA氏に全てを託したとの事だ。
この手記を残したA氏もまた、義明氏に命を狙われているとのことで、A氏が行方不明になった場合は殺されたと思って良いと書かれている。
実際問題として懇意にしていた本誌担当にこの手記を託した後、A氏もまた行方不明となっていて現在捜索中だ。
この告発記事は事前に雨音署でも信用が高い森田警部にも伝わっており、雑誌の発売日と同日の朝、義明氏及び殺人に関わったとして幹部社員全員逮捕となり、破王社は倒産の道を余儀なくされたと云う。
魔界側の援護は此処までだ…後は坊っちゃん次第だ…
レッドから界底での顛末を、超極丸から破王社の顛末を伝え聞いた空はボソリと呟いた。
物語はいよいよ最終局面へと突入する。




