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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第13章 勝つのはどっちだ
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第191話 解除

修業に修業を重ねた結果、五平は薬の神そして千代は雨の神としての地位を獲得するに至った。

然し、それだけでは界底へ来ることは叶わなかったのである。

界底は特異な空間である為に来るには当然ながらそこを管理している神の許可が必要となり、その許可の条件も幾つかある。

更なる修業を重ねなくてはならなく、途中、何度も挫けそうになったが、何とか条件をクリアし漸くこの場に辿り着くことが出来たのだ。


………

……


容赦なしの無差別攻撃と変わらないね…

此処から先へは進みにくいだな…


無防備で揺らぎの付近へ移動するのリスクは高過ぎるため、揺らぎの手前100里辺りから徒歩で近寄っていた2人。そこへ五平と千代の存在に気が付いた数名の怨霊が2人に近寄ろうとしたところ、揺らぎに近寄り過ぎたのか吸い込まれてしまったのだ。

千里眼の届く範囲に居なかったのにも拘わらず、五平と千代の神気に気が付いて救いを求めに来たのだろう。

触るもの皆ではないが、強力な掃除機の様な感じになっている揺らぎに対して、どう対処すべきか思案する五平に千代が何やら試して見たいことがある様子だが、揺らぎについて何も解らないし此方が起こしたアクションで中身が暴走する可能性だってあり得る。

不安がる五平に何とかなると思うだよと言いながら印を結び叫ぶ


こう


千代の叫びに応じたのか雨雲も無いのに揺らぎを中心とした半径70里程の範囲にポツポツと雫が落ちて来たと思ったら一気に豪雨へと発展する。


浄化の雨

この雨を浴びた如何なる者や物の悪意や汚れや不浄は全て等しく浄化される。

生者に対しての怨念渦巻くこの場において、この浄化の雨は御法度に近い所業なのだが、事態は急を要すると判断した(こうするしかなかった)千代は迷わず使ったのだ。


雨に濡れた部分が急速に浄化されて行くに連れて揺らぎもまたその形態を維持出来なくなりその正体を現して行く。


「毎度…毎度毎度毎度毎度毎度毎度毎度…

俺の邪魔しやがって…!!

ごぉ〜へ〜い〜!!」


現れたのは強欲の影分身であった。

この時点で強欲の正体を知らなかった五平は「コイツは何を言っているのでしょうか?」状態であったのだが、話し方や身に纏っている雰囲気が強欲の正体を教えてくれた。


「オメッ……弥太郎だか!?」


まさかの人物の登場に絶句しながらも、何時襲いかかって来ても良い様に速やかに戦闘モードへ移行しつつも先ずは会話を試みる。


「あぁ…そうだ!

オメェが俺の言う事を聞いてくれなかったからこうなったんだ

責任を取って俺にオメェの力を寄越してサッサと死ねぇ〜!」


ハァ…(ため息)


あまりの自己中心的な物言いに「コイツは何を言っているのでしょうか?」的な心理状態に陥ってしまったと同時に漏れ出たため息を吐いた五平に激昂しつつも攻撃をする隙を伺うが一分の隙も見せないことに怒りのボルテージは更に上がっていく。

そんな強欲の心理状態は看破済の五平は更に


「人の持ち物を奪っても奪われる方が悪い。

他人の嫁を寝取っても寝取られる方が悪い。

騙される奴が悪い俺は悪くない。

テメェが悪いのにも拘らず全てにおいて被害者面で反省のはの字もない!

万事がコレ!

テメェさえ良ければ他人が不幸になろうと死のうと関係ない。

自己中心的な考えだからそっただ欲しがるだけの醜い妖怪になったのにそれが何故理解出来んのだ!?

まぁ…村人全員から嫌われ更にお七からも嫌われていたことに気付けなかったオメェには相応しい末路だろうな」


等と煽ってみたが反応は如何にと思っていたら


「ハァ!?

嫁に先立たれた後、男手ひとつでお七を育てたのは俺だ!感謝されさえすれ嫌われる事は有り得ん!

それに、俺に良いように手玉に取られていた奴等がボンクラだったってことだろうよ!」


だと…

バカは死ななきゃ治らないと言われているけんど、アレは嘘だな…此処に死んでも尚こんな事を言い放つ人物が眼の前にいるのだから。

いや…治らなかったから妖怪に転生したのか?

まぁ…そっただことはもうどうでも良い話しだな…

眼の前にいる人物が強欲でも弥太郎でもどおでも良くなったオラは強欲に対して痺れ粉を浴びせる。

この痺れ粉は状態異常の耐性があったとしても確実に効果を齎す特別製の粉だ。

痺れの状態から見て保って人間界での時間で1時間だな…


「おっとう…彼処…」


此処に来たのは強欲の相手をすることではない。

こんな奴に構っている場合ではない。

2人は何処に行っただ?

強欲と対峙しながらもアンテナを飛ばして捜索をしていたのだが、やはり近くには誰も居ない。

そんな中、千代が揺らぎがあった場所を指差した方向を見ると何と表現したら良いか黒と灰色の中間の色をした球体が浮かんでいるのが見え、そこから数えるのも嫌になる程の意識が混ざり合っているのが解る。

もうあそこまで混ざりあっていたら分離するのは無理だろう。そして、浄化の雨でも効果は薄いと思った方が良い。

然し、何であんなものが…

問い詰めたところで強欲は何も話さないだろう。

状況を脱しようと必死に藻掻いている強欲の指がピクリと動くのが解る。そろそろ時間切れが近いか?

その時…


コヨミ「飽和状態じゃないアレ…」


天音「彼処までピッチピチだったらチョット突くだけで霊界が崩壊する程の大爆発が起きるよね?」


レイ「この状況で五平殿の力じゃあ荷が重過ぎるわな」


ゆう子「様子を窺いに来ただけなのに何でこうなるの?」


背後から聞き慣れた4人の男女の声に振り向く五平と千代。現れたのは、神人モードのレイとその家族。

来れる筈がない4人が来たことに驚く五平と千代にその話はまた後でと行った後で


「五平殿はサッサとあのゴミを片付けて下さい

俺達はアレを何とかしますので」


と、レイに言われて五平は強欲の影分身討伐することにする。


「感謝するだ…」


実のところ強欲だけなら何とかなったが、アレを傷付けないで片付けるのは難しいと感じていたのでこの申入れは有難すぎた。


「おっとう…」


弓を構えた千代がオラに問い掛けに無言で頷いたところで痺れ粉の効果が切れたのと同時に分身体を作り出してこの場に居た全員に襲いかかって来た。


「や…ヤラせん!

ヤラせんぞぉ!!」


せっかく作り上げたものを消されてたまるかと言わんばかりに分身体全員の全身に妖気を纏わせて突撃を敢行する強欲に向けて矢を連続発射する千代の矢は五平特製の毒薬を塗布されている矢で神気ではなく霊気を纏っている。


追尾する毒矢


あの闇丸が使用していた手裏剣の弓矢版だ。

本来、影分身は威力は劣るが本体と遜色しない程の能力を有しているし、この程度の矢なら難なく撃ち落とす事も可能性だ。

然し、ソレは影分身のみでそこから作り出された分身体はボディの強度こそ強いが矢を撃ち落とす能力は有していなかった。

それが仇になった分身体は毒矢に捕まり消失していくが、影分身にも毒矢が迫っているので構っている場合ではない。

襲い掛かる毒矢を撃ち落とそうとしたのだが、毒矢には仕掛けがされている。

その仕掛けに気付いた影分身が分身体を作り出して対処して見せ、よくもやってくれたなと言い放ちながら五平に襲いかかって来た。


ヤベ…このままじゃあ…


なし崩し的に始まってしまった五平と強欲の戦闘に危機感を覚えたレイ。

それもその筈で、戦闘をしながらも五平の力を奪いにかかっているのだから焦らない方がおかしい。

影分身に力を奪われる=本体の力が増すことを意味するのだから。


「集中力を乱すなバカ息子!」


いつの間にか天音と入れ替わった楓夏が檄を飛ばす。

レイ達の眼前に転がる球体の中身は数多の怨霊の怨念を抽出し、それをエネルギーに変換させて作り出された言わば爆弾。それも、霊界を破壊する威力を持つ程の威力を持ち、更に防衛機能まで搭載されている代物なのだ。

爆弾の防衛機能を陽のエネルギーで無力化しつつ中心に存在している悪意にコンタクトを図るレイ。

どおにか中心部に辿り着いたは良いが、困ったことにそこには2つの意識が存在することが判明した。

その意識からは許さないと言った感情と何故だと言った苦悩。そして何よりも、自己中心的な欲望の強い人間が良い思いをするだけの世の中なら全部壊れてしまえと言った破壊願望が伝わってくる。

その意識の正体を調べるべく細心の注意を払い霊視を試みるレイ。


結果…


(お七ちゃん六郎殿…頼む気付いてくれ…2人を助けに来た五平殿が弥太郎に攻撃されていてピンチなんだ…五平殿を救えるのは貴方方2人しかいないんだ)


必死になって2人に呼び掛けるも反応無し。

他の者達の意識と混ざり合い過ぎて自我も残っていないのだろうか。

いや…悪意が残っている限り自我は残っている筈。


(頼む…!目を覚ましてくれ…!

五平殿と千代殿を救えるのは2人しかいないんだ!)


必死の呼び掛けにも拘わらず無反応の2人。

呼び掛けることが間違っているのだろうか…それとも…


2人の自我自体が周囲に渦巻く悪意だとでも言うのか?

呼びかけながら原因を探すレイ。

五平と影分身強欲の戦闘は、遂に両者の力は拮抗しだし、立場が逆転するのは時間の問題かと思われる。


その時…


「何時までイジケてるの!?彼奴等は罪を認めて死罪になった!いい加減にしなさい!

六郎も六郎じゃ!いい加減にしないと妾が貴様に引導を渡してやるぞ!」


いきなり説教をしだしたのは楓夏だ。

あの騒動の後、お七の治療中の間、一時的に楓夏が親代わりをしていたので、この説教は効果抜群過ぎた。


ふう…か…さま…?


流石は楓夏と言いたいところだが、身内同然の関係を築けたことが功を奏したのだろう。

楓夏の説教により正気を取り戻したお七と六郎が楓夏の前で正座をして座る。


ン?

アレは…


お七と六郎の自我が戻ったせいなのかは解らないが、2人の後頭部から黒い糸が伸びているのが解る。

魂の糸かと思ったが、界底へ落ちた魂は基本的に復讐が終わるまでは輪廻転生する事はないのであの糸は魂の糸でないのは確かだ。

考えられるのはただ一つ。

あの黒い糸こそ、この球体の要であると云うことだろう。

この球体の状態を考慮すると、お七と六郎を信管として怨念を暴走させ爆発させる仕組みとなっているのだろう。

あの黒い糸を切ってしまえば取り敢えずは危機から脱出出来るんじゃね?と思った俺は刀でぶった斬ろうと思ったのだが、それを不動明王が止めてきた。


アレを斬ったら暴走が始まるぞ

よく見てみろ


言われて注意深く2人を見ると、2人の右足のから灰色の糸が伸びている。どおやらあの糸が本命の様だな。なので、そっちの方を斬ると、あんなに詰まっていた怨念が雲散霧消していくのが解る。

不動明王に言われてなければ間違った行動をするところだったぜ。

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