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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第13章 勝つのはどっちだ
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190話 五平殿界底へ

静かすぎるだ……


此処は界底

言わずと知れた生者に強い恨みを持つ怨霊達が蠢く場所。

この場を訪れた五平と千代は不気味な程に静まり返っている森の入り口で身震いすら覚えていた。

普段は数多の怨霊が其処此処で復讐対象になる相手の魂をいたぶる場所であるが為にザワついている筈の森なのだが人影すら見当たらない。

試しに千里眼で森を見渡して見たのだが、視界の届く範囲には怨霊の「お」の字も見付ける事が出来なかった。

考えられるのは此処に居る怨霊達が揃って輪廻転生をする為に次のステップ(地獄)へ行ったからと云うことだろうが、それではこの事態は説明が付かない。

そもそも人間の負の感情が無くならない様に、この場所に怨霊が絶えることはないのだ。

尚も千里眼で事態を把握しようとしていた五平と千代は、ある地点の違和感に気が付いた。


何だ…?


二人が立っている場所から2時の方角で距離は500里程先に生えている木が僅かに揺らいで見える。

最初は人間界との接点かと思ったがそうではないことは理解出来る。

と言うのも、その揺らぎからごく僅かだが妖気が漏れ出ているのだからゆらぎの先に広がるのは人間界ではないのは確かだ。


「おっとう…」


揺らぎから何かを察知したのか、不安気に五平を見る千代を安心させようと「大丈夫だ」と優しく言った後で揺らぎに向かって歩を進める。

直線距離で500里となればかなりの時間を要するのだが、それは人間界での常識。

此処は界底であり、人間界での常識は通用しない。

行きたい場所さえ解っていれば念じるだけで行けてしまうし、時間の経過も人間界の1000年で漸く1年経過すると言う感覚なので五平が生きた時代の人間が怨霊となりこの場に居ても何ら不思議ではない。

何故、五平が神の力を手に入れなければならなかったのか。

そして、そこまでしてまで界底に来たかったのか。

その理由は六郎とお七にある。


お七の治療が終了したと同時に勃発したお七の争奪戦に勝利したのは六郎であったと言いたいところだが、実際のところ、六郎は争奪戦に参戦してはいない。

決して男色趣味でもなければ結婚願望がないわけでもない。

寧ろ女性は大好きだし結婚願望は人一倍強い。

それは周知の事実であったがために争奪戦に参戦しなかったのは周囲を驚かせたが、参戦者はライバルが1人でも少なければそれだけチャンスがあると思い我こそはと名のりを挙げて行き、遂には10人もの男達がお七の夫候補に名乗りを上げていく。

そんな男達を見てウンザリ顔のお七は心配そうに見つめる五平にどおしたら良いかと相談を持ちかけるが


「お七の気持ちに従えば良いと思うだよ」


と言うだけに留まるのであったが、これにはお七への助言は極力避けることと村長からのお達しがあるがために誰が良いとか、ヤメておいた方が良いとかは言えなかったのだ。

結局、男達全員がお七の体目当てであり、嫁としてはどうでも良いと考えている者達だと判明した為に全員をフッてしまい、六郎に惚れてしまった様だ。

理由は六郎が優しいところと他の女性に見向きもしないところ。


「他の男達は浮気しそうで怖い

その点、六郎さんは一緒にいて安心出来る」


この発言が全てであるのだが、納得が行かない者が出て来るのは仕方がない。


「嫁に貰えるのなら一生大事にするに決まってるだろ!決して体目的ではないのは理解して欲しい!それを踏まえて再考して欲しい。

それに、六郎は参加者ではないだろ?結婚する権利すらねぇよ!」


お七が六郎を選んだのにも拘わらず諦めきれない候補者は六郎に辞退しろと騒ぎ立てる。

楓夏の件が終結した後、男装をする必要が無くなった者達が一斉に女性へと戻り結婚相手の選択肢は広がっているのだが、降りなければ六郎を殺すと言い出した男達のお七への執着は異常過ぎた。

この状況に至り六郎・お七・村長・五平の4人で対策を話し合った結果、雨土山を超えてすこし離れた村に住む六郎の親戚を頼る事になり、2人の姿は雨音から消え事態は終結した様に思われた…


然し数日後


2人は見るも無惨な姿で発見された。

どおやら村から避難することを知られていて、襲われてしまった様子。

六郎の死因は毒矢で殺され、お七はレイプされた挙げ句の絞殺だと結論付けられ、毒矢の形状から六郎を殺したのは川田葉水でお七を殺したのは夫候補に名乗りを上げていた3人の男達と判断され、それと同時に4人は雨音村から姿を消してしまったがために犯人は確定し、それを受けて雲海が天丸と地丸を引き連れて捜索に行ってしまう。


更に数日後、大怪我を負った4人を引き連れた雲海達が戻って来て村長が身柄を受け取り村人全員による裁判が執り行われた結果…

全力の謝罪と命乞いも届かず4人全員「死罪」となり、即日執行される事となったのであった。

ここまでなら悲しい事件として終わったのだろうが、4人の魂が地獄へ行かず黒い手により何処かへ連れ去られてしまったのを騒児を通じて知った五平はその事を楓夏に問うと確定ではないがと前提で


人間は特定人物に強い恨みを持ったまま死んだ場合、その魂は闇堕ちする事がある。

闇堕ちした魂は特定の場所へ辿り着き犯人の魂を捕獲して長い年月復讐し続けることになる。

2人の魂は恐らくそこに堕ちてしまい4人の魂を捕まえたのだろう。

復讐のその果ては地獄へ堕ち苦しむ事になる。


とのことだった。

4人は自業自得なので仕方がないとは言え、2人は被害者なのに地獄へ行かなくてはならないのは不憫で仕方がない。何とかならないかと問うと


「ならば、妾の眷属となり神としての修業を積んだ後2人の魂を救いに行くしかない」


との返事。

神となり2人を助けに行くか知らなかった事にして天寿を全うするするかの究極の二択。

迷いに迷った五平が選んだ答えは


神としての道を歩む…だ


この決断に楓夏は喜び千代はおっとうが神様になると言うならオラも神様になると言い出してしまう。

千代もまた、お七を救いたいと言う気持は同じであり、五平には止める事は出来なかった。

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