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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第12章 始まりの話し
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第189話 達人の仲間達

とある晴れた日の深夜

要石の上で大の字になって寝っ転がる幽霊1人


「星空が綺麗だなぁ」


要石の上から観る星空がたまらなく好きなレイは月に何度かこうして夜空を眺めている。

夜空を眺めリラックスしていたのと要石から立ち昇るパワーのおかげで少しウトウトしていたところに下手な替え歌を歌いながら近付いて来る男の声に気が付いたがどおせ見えていないのだろうなと思いながらもそのまま男の観察を始める。


ラーメン

ソーメン

タンメン

キシメン

ヤキソバ

チャンポン

(ウマ!ウマ!)

うどんまだかと催促したら

玉が無くなり出来ませんとの返事!

そりゃないぜ!

そりゃないぜ!

はぁ〜腹減った腹減った!


そんな替え歌を歌いながらデジタルカメラを弄りレンズを夜空に向けてそのままシャッターを切っては画像を確認して首をひねりながらカメラを弄り再びシャッターを切る。


「やっぱりフィルムの方が良いのか…な…?」


どおやら納得の行く画像にならなかった様子で今度は見ただけで高級カメラと解る様な立派なカメラを取り出しセッティングを開始して徐ろにシャッターを切る。


カシャ

カシャ

カシャ


周囲にシャッターの音が響く中、様子を窺っていたレイの視線に気が付いたのか要石の方に顔を向けて


「そこのお兄さん

カメラに興味あるのかい?」


と言い出したものだから驚きながらも「俺が見えるのか?」と訊き返してしまうレイに対しての返答は


「俺、見える人だし気にならないから大丈夫だよ

それにお兄さんからは悪意は感じられないしね」


だった。

男の名は根本要ねもとかなめ28歳独身

フリーのカメラマンで年の半分は海外で過ごして戦地や動物の写真を撮ったりしているとのことだ。


根本…


名字に引っ掛かりを覚えながらも興味はあるよと返答をするとデジタルカメラの映像をタブレット端末に落とし込んだ後で見える?と画像を見せて来た。


「う〜ん…」


画像は撮りたてホヤホヤの夜空の画像であり、感想を求めて来たのだ。

天の川までハッキリと写り込んだ見事な画像に感嘆しながらも首をひねってしまう俺にお兄さんならどお撮りますかと質問してくる要に対して少し考え込んだレイは少し離れた場所を指差して


「あの位置から要石と星空のコラボにするかなぁ」


と言いながらその場に移動して両手で4角を作り覗いた後で納得したようにウンウンと頷くレイに釣られた様に同じ場所で景色を確認した後で何かを確信したように1枚の古ぼけた写真をレイに見せる。


こ…コレは…


「この写真は祖父が所有している写真の1枚ですが、この写真は祖父が撮ったものではなく誰が撮ったのかも解らないみたいです。ですが何故かこの1枚だけは捨てられずに残していたとの事です」


正人…


写真は今2人が立っている場所で撮られたものではあるが、専用機材ではないので鮮明に写っていはいない。然し、その写真を見た途端、レイの口から出た固有名詞に驚きながらも貴男は誰ですかと問いただす要に喉元まで本名が出かかったが記憶を食われていて達人のことを悪人だと思っている可能性が高い為、本名を証すことは憚れた。

なのでレイの口から出たのは


「悪いけど自分に対しての記憶は無いんだ」


だった。

レイの言葉に訝しげに首を傾げたが、何か事情があるのだろうと理解してそれ以上は突っ込んでくることはしなかった。

根本正人はオカ研に在籍する傍ら趣味の写真が転じて写真部からヘルプを求められる事があって、どうせ暇だろうからと達人達も連れ出される事が度々あった。まぁ、その見返りと言っては何だがオカ研が心スポへ行く時は写真部へヘルプしたりもしていた。

ようは持ちつ持たれつの関係だったと記憶している。その中でエクストラスーパームーンの情報が入ったと色めき立った写真部はオカ研を巻き込みこの場で撮影に挑んだのだ。

当日の月の出は21時過ぎとあって早めに到着した一行は試し撮りと称して夜空を撮影しながら月の出を待った

その時の写真の1枚なのは間違いない。


あの時の満月はメッチャデカかったなぁ…

クレータも肉眼でハッキリと見えたもんな

あの時の写真は何処ぞのコンクールへ応募して大賞に選ばれたんだっけか?


レイが指定した場所から写真を撮りだした要を見ながら、おぼろげに残る記憶を辿り当時の事を思い出していたところにアンテナを通じて三条からの呼び出しがあったので雨降山から黄瑠璃庵に移動する。


「・・・消えた・・・

おじいちゃん・・・

どおやらあの人はおじいちゃんが言っていた様に悪人ではない様ですね」


強欲は達人を知る者から達人の記憶のみを食らったのだが、名前は残っているし何かの拍子に記憶が蘇る可能性があるために壊を通じてオカ研3代目部長は悪人だったと嘘の噂を流させたが噂はそれ程広まることは無く消えて行き、悪党匠達人と言う悪名だけが残っていくことになった。

然し、それは達人の記憶のみを食ったからであり深層心理までは消せてはいなかった。

特に達人と深く関わった2代目と3代目オカ研メンバーの達人への印象までは変える事は出来なかった様だ。


達人の記憶が消えた10日後、連絡し合った訳でもないのに風龍神社に集まった矢野治人 糸居繁 根本正人の3名は顔を合わせた途端


「「「何か忘れた事が有るような気がするんだけど…覚えている奴いる?」」」


と、示し合わせていないにも拘わらず同時に言ったものだから神社の境内にも拘わらず大笑いしてしまい巫女さんに注意されてしまう。


「こんな時は風神様に会うのが1番なんだけど…」


流石は元オカ研と言ったところだろうか、不可思議な現象の裏には妖怪の暗躍ありと細胞レベルで染み付いているのだろう。

こんな時は風神様にお伺いを立てるのが1番なのだが会えるかどおかは運次第。

だが、会いに行かねばならない。

風龍神社にはメインになる土地神 緑発を祀る拝殿と拝殿の裏手にポッカリと空いた洞窟の奥に風神

 楓夏を祀る祠が在る。

楓夏に会う手順として土地神様に参拝する時に風神様に会わせて欲しいとお願いした後で風神様の祠を参拝するのだが確率は絶望的に低い。

それでもやらずに撤退する訳には行かず必死になり土地神様へ参拝しお伺いを立てる。


ガルル…


洞窟の方から居ないはずの犬の唸り声がするのを聴いた3人は願いが叶ったかもと半信半疑のまま洞窟の祠に行き参拝したのだが…


「ご来訪ありがとうございます。申し訳有りませんが風神様は休眠状態にありますので御用は私が承ります」


現れたのは神主の衣装を纏った優男で名は右近。

そう、千代の旦那であり楓夏が休眠状態の時には代理を務めている者だ。

風神様に会えなかったが、代理の者と面会出来たことに安堵した3人は現在の状況を話し何が起きているのかをお伺いを立てたところ

横一列に並ばせ順番に3人の頭に右手を翳し何やら呟く。

どおやら3人の記憶を探っている様だ。


「フム・・・何者かに記憶の一部を食われてしまっているようですね・・・恐らくは妖怪の仕業でしょう」


予想通りだったのだが、妖怪が絡んでいると言われても狙われる意味も言われもない。その事を伝えたのだが、右近もそれ以上の事は解らないらしい。

更に食われた記憶は食った妖怪を倒さない限り元には戻らないとの事だ。


そ…そんな…


妖怪に対してフツフツと怒りが湧いてくるもどんな妖怪なのかも解らない。それでもどんな記憶が食われたのかと詰め寄る3人。

そんな3人に対して


「何方かは解りませんが、貴方方3人ととても深く関わり合った方なのは間違いない様ですね」


真顔で言う右近。その表情はすっとぼけた様子も演技している様子も見受けられない。

その言葉で3人にはピンと来た様であったが、どおしてもその人物を思い出せない。

もどかしさに悶絶しそうな3人に対して更に


「どんな事があっても信じる事です」


と言ったところで右近は忙しい身なのでと言い残して消えてしまう。


「深く関わり合った人物と言えばアイツしか居ないよな」


学園を卒業した後、バラバラになった3人はこの場で再会するまでは1度も会っていない。

従って思い当たる人物は自動的にたったの1人となるのだが、どんな人物であったのかが思い出せないどころか不安さえ覚えていた。

それでも信じようと固く誓いあった3人は神社を後にしたのであった。


後日、浦川学園のオカ研3代目部長匠達人とその家族、更に嫁や子供もトンでもない悪人だったと風の噂を訊いた3人であったが、肯定も否定もする事なく聞き流すことに徹したと云う。


暴れたくなる心を必死に抑え込みながら…


………

……


「あれで良かったのですか?」


「良い!」


3人が神社を立ち去った後、再び現れた右近が祠の上にちょこんと座る少女に問い掛けると凛とした表情で言うも何処か納得のいかない様子の右近に対して


「全ては計画通りなのじゃ!

何の心配もない」


と言い切るが、この街全てを灰燼に帰したいと云う荒れ狂う気持ちを必死に抑え込むので精一杯だ。

その気持ちを抑え込む為、休眠状態へと移行するのであった。

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