第187話 黒幕は強欲ではない?
何時終わるとも解らない検証とシュミレーション
その全てがあの事象と繋がらない。
「何かヒントがあると良いのだけど」
ボソリと焔が呟く。
然し、他に視せられるビジョンには事象に繋がるヒントは見当たらない。
解らないまでも仮説は立てる事が出来る訳で以下のことを立てみた。
1・神同士の喧嘩
2・悪魔が神々へ喧嘩を売った挙げ句の出来事
3・クロノスより上の神の暴走
取り敢えず2は無さそうだが、1と3はありそうで怖い。
神といえど全員が全員仲が良いと言う訳では無いし良い神もいれば悪い神もいる。
もし、悪い神が天界を征服する目的で行動を起こしたのなら何かしらのヒントがありそうなものなので1は有りそうで無い。
とすると、3の可能性が高くなるのだがクロノス以上の存在となると
最高神 セシウス
創世神 フローラ
破壊神 ラグナ
の3神となるがあり得るのか?
「あり得るとしたらラグナだろう…
そうするとフローラは何故動かない?
セシウスはこの事を黙認するつもりなのか?
黙認するつもりだからクロノスが動いたのか?」
「いや…セシウスが気付けない程に上手くやるのだろうよ…」
「と言うかよ…クロノスも妖怪側に情報を流さんでセシウスに相談したら良いじゃねぇかよ」
「それが出来ないから我らに流したのだろうよ」
全知全能の神 セシウスは天界を守護し神々の暴走を鎮める役目を担っている。
事象が起こると言う事はセシウスの目を盗んで悪事を働く黒幕がいると言うことになる。
この世はマザーと呼ばれる1つの世界から分裂して生み出された世界であり、いくつもの似たような世界が存在していて神々もそれぞれの世界に存在している。
また、世界を終わらせる事象を引き起こすとなればその世界の神々が見限った時のみであり、ほぼ有り得ない事なのだ。
その後も考察と検証は続けられたのだが、答えに辿り着く事は出来なかった。
………
……
世界の始まりに二柱の神在り
二柱の神の名は「フローラ」と「ラグナ」
フローラが世界を創りラグナがそれを壊す。
気の遠くなるような時の流れの中で幾度も繰り返された創造と破壊。
ある時、フローラは幾つかの世界をマザーから分離させ其々の世界を創造した後、姿を消しそれに気付いたラグナもまた姿を消した。
そして創造された其々の世界はそこに誕生した神々に管理され運営される事となったのである。
「創世神話ですか?」
魔界に存在する図書館の中でも最古の図書館に保管されている創世神話を夢中になって読み漁っていた真智子に話しかける超獄丸。
この人イケメンすぎて苦手なんだよね…
突然話し掛けられて驚く真智子は一瞬体を強張らせたが直ぐに調子を取り戻し超獄丸と向き直り何か用ですかと問い掛けると真智子殿ではなくローラに用がありますとの返答。
用があると言われて素直に従いそのまま図書館から出て行く超獄丸とローラの後ろ姿を見送った後、再び創世神話に目を通す。
世界を管理運営するのは様々な役割を任せられた神々と未来永劫流れる時を管理するクロノス。
そしてその神々を管理する最高神セシウス。
八百万の神と言われる通り多種多様な神が存在しているが為に如何にセシウスが全知全能の力を持っているとは言え、目が届かない部分が出てくる。
当然ながらセシウスの目を盗んで悪事を働く悪神を管理仕切れなく代わりに裁きを下す事が出来る種族を創る事をクロノスに命令する。
時を観測するだけのクロノスは当然ながらそれは出来ないと言ったが1つの案を提示して来る。
それが妖怪だ。
妖怪の存在とは
クロノスの眷属であり、神の天敵である。
そして神にもなれる存在である。
では人間とは何なのか…?
此処まで読み進めて疑問に思った真智子は更に読み進める。
裁きを受けた神は消滅する訳ではなく、全ての能力・神としての記憶を消され罪を償う為に専用の世界へと落とされる。
その世界へと落とされた神は能力や記憶は無いが、姿形は人型をしていて何もしないと死んでしまう為、生きる為に行動する。
この落とされた場所が人間界と呼ばれる様になったのであった。
消えた神「ラグナ」と「フローラ」か…
創世神話を読み終えた真智子は思考を巡らせる。
破壊神「ラグナ」=濱田壊
では創世神は…レイ?
いや…ローラ?
んなアホな…
じゃあ、レイの存在理由とは…?
そもそも濱田壊の力はそこまで大きくならない筈…
幾ら強欲が多種多様な能力を持っているとは言え濱田壊を強化する様な知恵も能力も持っているとは思えない。
真の黒幕が何処かにいると言う事?
「怪しいのはいるにはいるけど…
あ〜っもう!イライラしてきた!!」
考えれば考える程に出てくる矛盾そして絡み合う糸。その絡み合う糸を解す様に続けられる考察。
然し、絵を完成させるにはパーツが足りない。
私の中のレイは5%でそんなに力は無い為に協力は求められないし本体も人間界で行動中なので呼び出す事も気が引ける。
そんな中、無表情で戻って来たローラが無言で真智子の中に戻って行く。
どおやら空と激しいやり取りがあった模様だが、何も語らないのでその事には触れないことにしたのであった。