184話 強欲
欲しい…
より優れた能力…
欲しい…
この世の財の全て…
欲しい…
絶対無敵の力…
欲しい…
欲しい…
何の前触れも伏線もなく突如として現れた妖怪は生まれながらにカナリの力を有し目に付いた妖怪を手当たり次第襲ってはその妖怪が持つ固有スキルを奪い取っては自らの力に変え成長していった。
欲の塊の様なその妖怪に危険な臭いを嗅ぎ取った空は討伐命令を下すのではなく自らが出向きその妖怪を討伐し核ごと消滅させた
かと思われた…
その妖怪は
消滅の間際3%程を切り離し魔界を脱出する事に成功する。
その事に気が付いた魔王はその妖怪を追跡したのだが、断念せざるを得なかった。
その妖怪の行き先は
界底
だったのだから…
前述の通り界底とは理不尽に殺され現世に残れなかった人間の魂が行き着き特定人物を長きに渡り復讐する事を許された場所であり、通常では人間の魂の他は一部の神しか入る事は出来ない。
然し、何事にも例外はあるもので3%以下の核でなら妖怪でも悪魔でも入る事は出来るが、当然ながら肉体は滅んでいる事が前提条件となる。
更に、人間の魂には指一本触れる事はおろかコミニュケーションやそれに準ずる意思表示をしてはならないと言う条件があり、破ろうものならそれは即消滅を意味する。
界底へと逃げ込んだこの妖怪は魔界を脱出した時は3%であり移動中にも当然ながらエネルギーは消費する。
何としても生き残ってやる!
徐々に減るエネルギーと界底への距離を考慮した時は消滅を覚悟したが、何とか辿り着く事が出来た様だ。
残存エネルギー0.5%
まさに執念で生き残ったと言いようがないが消滅は免れた事には間違いない。
核の再生を行いながら妖怪は魔王 空のことを考える。
能力は魅力的ではあるが
アレは要らん
アレは欲しい力とは真逆の力だ
核の再生が50%までになった時に出した結論がこれであったが本音は天界含めた全てが欲しい。
真綿で首を絞める様なやり方では途中で潰される
対抗勢力が手を出せない程に一瞬で世界を消滅させられる破壊神の力と全てを構築する創世神の力が欲しい
全てを手に入れ自らを頂点とした都合の良い世界の構築。
そうまでしないと欲しいと言う気持ちは収まらない。今まではそう思い込む事で納得させていたが、今なら解る。
コレは怒りだと…
生きとし生けるもの全てを滅ぼしても尚消えることの無い狂おしい程の怒り。
何故怒りが消えないのかは理解出来ないが、その為に必要な力と能力を欲しているのは間違いない。
そして核の再生が90%を超えた頃、この妖怪に転機が訪れる。
アレは…
名前までまんまじゃねぇか…
フフ…フフフ…
ヤツを手懐けて取り込めば…
先ずは…
偏に言うと界底は何処迄も広がる森と言った表現がピッタリ来る程の場所ではあるが、所々半径10m程の池らしき場所が在る。
その池らしきものを覗くとあら不思議
その水面に映るのは自分の顔ではなく人間界の様子であり特定の人間の生活を観察出来る。
未だ不安定ではあるものの、肉体を再生させる事が出来るようになった妖怪は人間を観察していた。
そんな中見付けたのが当時小学一年生だった濱田壊だった。
壊少年が妖怪が求める力の持ち主だと言う事は直ぐに気が付いた。
あの人間の子供がそうだと言うのなら、真逆の力を持つ子供も出現している筈…
何処だ…何処に居る…
妖怪は血眼になって探した。
目的を果たす為には邪魔な存在となる人物を排除しなければならないが、どれだけ探しても見つかる事はなかった。
「ほぉ…触れるだけでカラクリが壊れるとは…
実に興味深い…然し、あのままでは人間界の時間に換算して持って後3年と言うところか…」
目的の人物が見付からなく、気持ちばかりが焦るなか、壊少年が小学6年の時にはその力は顕著になり妖怪の見立てでは保って後3年。つまり中学3年には自らの力を制御出来なくなり暴走する。
更に精神状態によってはもっと早くなると予想していた。
人間界へ手を出せない以上、手を拱いて見ているしか出来ないもどかしさに苛立ちを感じながらもどおしたものかと考えるが、妙案が浮かぶ訳もなく悪戯に時間が過ぎて行く。
このパターンでは・・・ダメだ
じゃあ、このパターンでは?
・・・あぁ〜クソっ!
今まで奪い取った能力で使えるものをフル活用して考えてみたが、奪い取った能力は本当の意味では自分のモノにはなってない。
と、言うのも自分のモノにはなるにはなるが、能力によって使用回数は異なるが最高でも3度使えば消えてしまうのだから使い所が難しいがそんな事を言っている暇はない。
まかり間違えば何も出来ないままこの世が終わる可能性が高いのだ。
能力 サトリ
能力 狂科学者
2つをレベルマックスで發動
考えが纏まらない妖怪はとっておきの能力を使いどおしたら延命措置を取れるか全力で調べた。
その結果
俺が人間の子供に取り憑き負の感情をコントロールしつつ溢れ出た力は眷属へ流せば良い。
その上で能力を少しずつ奪い盗れば暴走する事はないだろう。
それが導き出した答えだった。
路線は決まった…
後は行動あるのみ。
妖怪は万が一に備えて数%の核を影分身の中に残して人間界へと向かい、壊少年と接触することになる。
最初こそ警戒されたが、そこは能力を活用して何とか取り入ることに成功する。
「お前の欲深さは筋金入りだよな
今後お前の事は強欲のゴウ君と呼ぶことにする」
「ゴウ君って…あのなぁ…まぁ良いや…仲良くやろうぜ相棒」
かくして此処に最悪コンビが誕生した。
(後はアレを探し出して始末したら…フフ…フフフ…)
心のなかで笑いが止まらないゴウ君は最新の注意を払いつつ、更に壊を手懐けることに注力を注ぐことにするのであった。