第175話 レイまさかの
だぁ〜〜〜!
クッソぉ〜〜〜!
人間界で大嶽と愉快な仲間たちが暗躍?している最中、怒りまくり吠えまくる男が1人。
レイだ
何をそんなに荒れているかと言うと、魔都を修復した時に使った力が回復し切ると同時に魔王90%からガチバトルを挑まれ辛くも勝利してしまったが為、なし崩し的に魔王として就任してしまったのだ。
レイからしたらただ強くなりたいだけで魔王に挑んでいただけなのだが、魔界のルールとして魔王にその強さを認められて指名された者が次の魔王にならなければならないと云う鉄の掟が存在しているらしい。
あんのヤロー…
最後の最後で手を抜きやがって…!
なぁ〜にが
「次の魔王はお前だ!」
だよ!
おかげで自由が無くなってしまったじゃねぇかよぉ〜〜〜〜〜!!
勝負は全くの互角で最後に互いの最強の術をぶつけあった結果レイの術が魔王の術を破りレイの勝利が確定。
と、言えば聴こえは良いがレイの術が魔王の術を破ったのではなく破った様に見える様に魔王が術を解除して態と負けて見せたと言うのが真相だ。
勿論、この事実はレイ以外は気付いていない。
最初から最後まで魔王の掌の上で踊らされていることに怒りが収まらないレイに対して「これくらいの事はやってくれないと困る」と無責任な発言をする楓夏そして尊敬の眼差しで見つめる家族達。
然し、魔王の称号を得た事で獲得したモノはレイの基本的なレベルを底上げするものであり、現在それをローラが整理している。
それとは別に副産物とでも言うのだろうか、妖怪としての肉体を手に入れる事が出来たが見た目は人間と何ら変わりがない。
これにより、人間としてではないにせよ現世に残る事も可能になった訳ではあるが、魔王の家族として認められたコヨミ・天音もまた妖怪としての肉体を手に入れる事が出来たようだ。
ゆう子はと言うと、ピンクとの婚姻関係を結んでいるがためにゼロから妖怪としての肉体を手に入れる事が出来ている。
「レイは元々妖怪の血を引いているし孫娘は幻獣と婚姻関係を結んでしまったからな
こうなるのも仕方があるまいよ」
とは楓夏の弁であり、雲海に至っては
「漸く家族仲良く暮らすことが出来る様になったわい。何なら魔界で匠自動車を復活させるのも悪くないのではないか?」
と高笑いをしていた。
後に当時の事を振り返った空は
「魔界の都合で奴等を巻き込んでしまったからな
せめてもの償いだ」
と高笑いしながら語ったと言う。
そしてレイが消えてから人間界の時間で1ヶ月程経過した頃…
22時半過ぎ黄瑠璃庵にて
「娘達は何時まで向こうに居るつもりなんだ?」
あの会議以降はレイの影分身は動くことない。それどころか街中に配置しているレイのアンテナさえも微動だにしていない。
唯一動きを見せているのは俊哉の部屋に設置してあるアンテナのみなのだが、一方的に話すだけだとのこと。
妖怪達もそのことに関しては一切口を開く事はないがためにイライラが止まらない三条のボヤキは止まらない。
レイ達が無事なのはアンテナを見たら解るので、心配はしていないが、徐々にではあるがアンテナに妖気が混じり出した。それが気に入らなくて人間側からは何にも出来ないので更にイライラが増幅しているのだ。
「まぁまぁ…少し落ち着いて下さいよ
その内帰って来ますから」
宥める様に命が言うも聞く耳を持たない三条は一瞬バツの悪そうな表情をするも、直ぐにいつもの表情に戻り少し発散して来ると言い残して何処かに行ってしまう。
八つ当たりされるSSR級が可哀想だわ…
そう呟いた命の目の前にズラリと並んだ新メニュー候補の料理をスタッフと一緒に審査をするのであった。
「貴様はやり過ぎた!
悔い改めて成仏するなら良し
抵抗するなら地獄へ落ちると知れ!
返答は如何に!」
3時間後、雨音の隣町に在る一戸建ての事故物件の中で暴れ回るSSR級相手に大立ち回りの末に妖縛陣へ捕らえ身動きを封じ三条が最後通告を申し渡す。
然し、生者へ強烈な殺意を抱いている幽霊は
「うるせぇ!
誰の指図は受けねえ!
テメェが死ね!」
身動きが出来ないのならと言わんばかりに眼力のみで三条に対して死の呪いを掛けて来たのだが、呪いへの耐性があるので通用はしない。
「ほぉ…
まだそんな抵抗が出来るとはな…
反省する気が無いのなら…」
斬る!
さんざん痛め付けて身動きを封じた状態での反撃を受けて幽霊の事を改めて深く霊視したのだが、これが酷かった。
何が酷かったかと言うと、あの、黒尾を更に極悪にした様な人間であったと言えば理解出来るだろうか。
更に人を殺す事にエクスタシーを感じてしまう程の人間。
そして、死してなお人を殺す事に執着しているとなれば容赦する必要はないと判断した三条の姿が揺らいだかと思ったら次の瞬間、1秒にも満たない時間で幽霊の背後まで移動した三条の手に握られていたのは御神木から切り出し作り出した神刀だ。
然し、幾ら神刀で斬ったとしても幽霊を消滅させれる訳ではない。
三条が斬ったのは幽霊が抱えている悪意そのもので自らの行いに罪悪感を植え付ける為の斬撃であるのだ。
グオぉぉぉぉぉぉ…
断末魔の悲鳴を上げ苦しむ幽霊の姿が徐々に薄まって行くのを無表情で見つめていたが、臨戦態勢を解いてはいない。
と言うのも、幽霊が消滅するこのタイミングで地下から何かが飛び出して幽霊と融合してしまったからだ。
そのおかげで消えかけていた幽霊の存在も息を吹き返したかのように存在感を高めていく。
妖気…いや…何じゃこの禍々しい気は…
それは紛れもない魔力であり、三条にとっては初めて遭遇する気であったからどお対象して良いか解らない。
既に妖縛陣はタイムリミットを超えたが為に消滅していて、それと新たなる力を手に入れた幽霊が三条へと襲いかかって来たものだから防戦一方になってしまう。
「よくもやってくれたなぁ
殺すだけじゃ済まさねぇ!
魂まで粉々に粉砕してやんよ!」
形勢逆転され優位に立ったと感じた幽霊が三条をなぶり殺しに掛かる。
苛烈な攻撃に加えて飛んで来る物に翻弄される三条の中に芽生える「死」の一文字。
レイと違い、祓い屋にとって幽霊と対峙すると言う事は常に死と隣り合わせで事に当たっているが、SR級迄なら問題なく祓えてもSSR級ともなれば常に死と隣り合わせになってしまうのだ。
況してや得体の知れない何かが幽霊に取り憑いてしまった状況で危険度も爆上がりしている。
「影分身には悪いが万が一を考慮して連れて来て良かったわい!」
防戦一方になりながらも準備を進めていた三条が印を結び叫ぶ
閻魔の裁き
ジャッジメント!
レイの十八番である閻魔ジャッジ。
閻魔ジャッジは神と繋がり直接裁きを下す事が出来る術であるが、神と繋がる為には膨大な霊力が必要になる。
影分身をその為のエネルギーを得る為に利用した。その為に影分身はエネルギーを大幅に削られ存在自体怪しくなってしまったが、何とか持ち堪えたようだ。
閻魔ジャッジに捉えられた幽霊に黒い手が絡み付き、幽霊に取り憑いた何かと一緒に全ての力を奪い無力化していくと同時に深い闇へと引きずり込もうとすると取り憑いた何かが最後の抵抗を試みようとしたのだが時既に遅し。
「ほぉ…やりますねぇ…ぶち殺されると思っていましたよ」
何処からか見ていたのだろう突如現れた大嶽が見直した感満載で三条を褒め称えるも、それには反応をせずに
「最後のアレは何だったのだ?」
と疑問をぶつけると少し迷った素振りをした後で説明をする。
それによると、最後の何かは人間界で悪事を働いていた悪魔であり、あの幽霊を取り込んで力を付けようと目論んでいた所、三条に消滅させられそうになったので慌てて取り憑いて暴れたとの事であった。
と…三条には説明したのだが、実のところそれは半分嘘でありその正体は山本八郎座衛門の眷属であった。
悪魔にも眷属が居たとは…予想していたとはいえ人間界にまで魔の手を伸ばして来たとは…少し忙しくなりそうですね…ヒーローが…フフフ…
内心面白くなってきたとほくそ笑む超獄丸は後始末をヒーローに丸投げするのであった。