第174話 Win-Winな話…なのか?
尚も煮え切らない様子の役員達。
レイが消えた翌日に現れ手助けを申し入れて来た大嶽。
そのタイミングが胡散臭くて仕方が無いと言った滲み出ているのは仕方が無い。
「大嶽と名乗る人物のことは社長は知っている様ですが我等は大嶽なる人物もその他の人物との関係も知りません。」
要は社長に対して知っていることを全て話せ今直ぐ話せさぁ話せと詰め寄って来ているのだ。
人間として接近して来たとは言え相手は妖怪であり彼等を知らずに信用は出来ないしたくないと言いたいのだと理解した社長は話せば長くなるがそれでも聴く気はあるかい?と問うが良いから話せと言った雰囲気になってしまったので重い口を開き話し始める。
「・・・マジですか・・・」
「ただの悪戯好きな変態幽霊かと思っていました」
「そこは問題じゃない」
「解ってますよ」
「あの妖綺譚を翻訳したのが彼だったとは…」
衝撃的な事実に絶句する役員達。
そこに…
「今の説明に付け加えると、レイ殿は人化した風神 楓夏様と大天狗 雲海様の子供です
レイ殿は意図的に作られた子供なのです。
知ってしまった以上は後戻り出来ませんよ?
私…イヤ…魔界は株式会社オタクに対し協力を正式に要請致します」
話を訊いていたのだろう大嶽と人化した妖怪は唐突に現れたかと思ったら深々と一礼をした後で社長の話に付け加える。
「関わってしまった以上は一蓮托生って訳ですか…狡いよなぁ…」
半ば呆れた様なため息と共に呟く伊良部に続くようにため息を漏らす役員達。
そんな中、納得行ってない人が1人…三条だ。
社長の話はレイの過去そして大嶽達との関わりのみだ。それのみの話だけなのに何故魔界からの協力要請を受けなければならないのだ?協力を要請して来るからにはそれなりの理由が有るに違いない筈なのだが、それを言わないで協力を申し出て来ている。
なので
「全てを話さないと協力は出来かねます」
と、言い放ったものだからその場に居た全員が驚愕の表情を三条に向けたのだが、そんな事は一切無視して続ける
「何度霊視しても覗くことが出来なかったレイの過去を知る事が出来たのは僥倖としか言いようがないが、それだけで魔界は協力をしろと言う
然し、それは飽くまでもレイと濱田壊の因縁だ!幾ら貴方方がレイの育ての親だと…人化した楓夏様と雲海様の息子だとしてもそこまでする必要はあるのですか!?」
そう、社長の話には決定的な部分が抜けている。
それは、強欲の存在だ。
社長は強欲の存在を知らないし達人殺しの犯人は壊だと思っているのだから仕方が無い。
それ故に三条は全てを知らない以上は協力出来る筈がないと言い切ったのだ。
然し
「親が息子の敵を討ちたいと思うのは当然かと思いますが?」
といけシャアシャアと言い切る大嶽に役員達は納得仕掛けるが
「コレはレイを初めて霊視した時に気付いたのですが、レイには人間では解除できない程の強力な呪いが掛けられているのが解りました
恐らくその呪いがレイの記憶を封印している事も
更に、何か得体の知れない何かが入り込んでいる事も!それは人間では出来ない事です
一体、貴方方はレイを使って何をしようとしているのですか!?それを知らない限りは協力なんて出来ないと言っている!
だいたい人間がいきなりあんな強さを持っているなんて有り得ない話なんだ…ブツブツ…」
詰め寄る三条に苦笑するしかない大嶽。まさか此処まで突っ込まれると思っていなかったのだろう。
勿論、三条も此処まで言うつもりは無かったのだが大嶽の態度があまりにも不誠実なのでカチンと来た様だった。
「それは…」(人間が此処まで素直でないとは…困りましたね…)
ここに来て初めて口ごもる大嶽。
これ以上は魔王 空の許可が無ければ言えないので仕方が無い。
然し、言わなければ収まりは付かないだろう事は明白な状況に困り果ててしまう。
「仕方が無い…此処からは俺が話をする」
驚愕の表情を声がした方向に向けると来る筈がない来ては困る人物が其処に居た。
「「天野殿!」」
大嶽と社長が見事なハーモニーでその者の名を呼ぶと屈託のない笑顔を社長に向けて
「お久しぶりです社長!
また、貴方の料理を食べたいものです
ですが、今は事の経緯を話さないとなりません
この話を訊いたら最後、後戻り出来ませんがそれでも訊きますか?」
先程の笑顔が一瞬にして真顔になり訊くか訊かぬかの2択を迫るも此処まで来て退く事は出来ない。
なので答えは当然
「お願い致します」
であった。
・・・解りました・・・
では、お話します。
………
……
「マジか……」
「残念ながらマジです」
天野の話を聞き終え、何度目かのこの一言を最後に言葉を失う一同。
「理解し難い事とは思いますが、私達妖怪は貴方方を操り、強引に事を進める事も出来ました。勿論、そうした方が良いとの意見もあったのですが、後の事を考えるとそれはしたくなかったのです」
事の経緯を努めて冷静に且つ丁寧に話し終えた天野は皆に対してどおかご理解の程宜しくお願い致しますと深々と一礼をする。
天野の話に終始狼狽えていた大嶽の態度を見たら本当の話しだろうし、天野は大嶽より上の立場であると言うのは間違いないだろう。
「はぁ〜…
妖怪にとって人間なんぞ取るに足らない存在でしょうに…
そちらの不始末が原因の厄介事なのですから人間界を巻き込まないで欲しかったですよ
いや…巻き込むつもりは無かったことは理解出来ますが、話が大き過ぎるし此処にいる者達以外は信じる奴は殆どいませんよ?
寧ろキチガイ…現在は中二病とでも言うのですかね?そう言った扱いされるのがオチなんですよ」
ため息混じりではあるが、そう言ったのは誰でもない社長だ。
まさか社長の口からそんな事を言われるとは思ってもみなかった天野は驚いたが、抵抗されるのは想定内の様子。
「そう言われると思っていましたよ。
然し、我々もより良い結果…最悪の結末を回避出来る方法を何万、何億とシミュレーションした結果なのです」
気が遠くなる程繰り返されるシミュレーション
その中には早々に大元を消す方法も有ったのだが、どおやっても結果は同じ。
良い方向に行ったのは唯一この方法しか無かった。
「結果として楓夏と雲海には辛い運命を背負わさせてしまった…この責任は魔王である俺にある…」
自らの正体を証した後、巻き込んで申し訳ないと深々と一礼をして謝罪をした。
「ご当地ヒーロー…」
トンでも真実に唖然ボーゼンの一同。そんな中、唐突に呟いた伊良部に全員の視線が集まる。視線を浴びた伊良部は言った言葉を取り消すかの如く何でもないと言ったのだがそれは有りかもと水田が
「確か出版部で世話をしている漫画家がいましたね?あの話の中に出て来る正義の妖怪って…」
と突っ込むと
「アレは相談役の過去話だ…ガチのな…」
と伊良部が返す。
「では、メディア部を新設してそこに彼等を在席させてご当地ヒーロー番組を制作して動画サイトで配信するというのはどおでしょうかね」
少し前からメディア部の構想は有ったのだが、アミューズメント部門がその役目を担っていたので無理してメディア部を新設する必要はないとの意見が殆どであったのでその案は見送られていた。
この状況に至りメディア部の話が現実味を帯びてきたのだ。
「ご当地ヒーローとは?」
意味が解らないと言わんばかりに首を傾げる大嶽に懇切丁寧に説明する伊良部。
そして…
「ヒーローが特撮ヒーローですか…それはそれで笑えますね…」
説明を聞き終えた後、愉快そうに笑う大嶽に対して迷惑そうな表情をする人化した妖怪達。
この妖怪達は怪レンジャーの面々なのだから笑えないのは仕方が無いだろう。
「メディア部に在席する事で人間界のエンターテイメントを学ぶ事も出来るし間接的とは言え相談役の話を実写化する事も出来るから我々としても良い事ずくめですね
もし、断っても何の腹も痛まないですからね」
纏める様に相良が言った所で
「では、その方向で良いかな?」
と最終意思確認をする様に皆に三条が問うと無言で頷くが前途多難なのは間違いない。
然し、動き出してしまった以上はやるしかない。
株式会社オタク メディア部
部長 大嶽敬之
部長補佐 嵯峨島武
部長補佐 レイ
正式に発足した瞬間であった。
魔王様が話した内容は後日書きます