番外編 大野真智子
これは海野玲奈の前世である大野真智子の物語
真智子高校2年夏
またか…
めんどくさいなぁ…
高校へ進学してから通算30通目
2年になってから20通目のラブレターを下駄箱に確認した真智子は暗鬱な表情と同時にため息を吐きながら鞄へ入れたかと思ったらそのまま校舎裏の焼却炉へ行きラブレターを捨ててしまう。
大野真智子
身長160cm
体重 ??
スリーサイズ(上から)
89cm
55cm
95cm
のナイスバディの持ち主であり、更に現代の芸能人に例えると◯蜜に似た顔の持ち主となればモテない筈がない。
モテない筈がないのは間違いないのだが、本人は生まれてから一度も男性と付き合った事がない。
かと言って同性愛者ではないのであしからず。
「今日は皆と雨降山の裏側に行く予定なのに余計な事で時間を潰す訳にはいかないわ」
真智子はオカ研の部長であり、現在は雨音の心霊スポットや妖怪伝説を纒める作業に没頭している。
真智子は大のオカルトマニアであり、それを理解し「受け入れない奴は付き合う資格なし!」と豪語している。
それならオカ研の部員にチャンスがあるのではと思うのだが、全員、1にオカルト2にオカルト3・4が無くて5にオカルト的な連中ばかりなので恋愛には興味がない人達ばかりで、その環境に居心地の良さすら感じていた。
1度帰宅して準備をして待ち合わせである風龍神社の前に向かうと既に来ていた部員達と合流して裏側に向かう。
メンバーは真智子含めて女二人男3人の計5人。
「ビデオはちゃんと回ってるよね?」
入口に到達した真智子はカメラマン役の部員に確認するとカメラ片手に空いている手でまるを作って大丈夫とアピールするのを確認した後で部員達と共に山へと踏み入る。
雨降山の裏側には参道と言うものは無いが、多くの自殺志願者が訪れる場所となっているためか定かではないが背の高い樹木は有れど道が出来ていて、中腹迄は雑草とかは比較的生えていない。
道のおかげで歩くのは容易いが街灯とかは無く、既に日は落ちている為に真っ暗で懐中電灯の明かりを頼りに奥へ奥へと進むオカ研一行。
「あ…あそこ…誰か居る…」
暫く歩くとそれ程大きくはないがシッカリとした枝のある樹の根本で蹲る物体を指さして女性の部員が震える声で皆に告げる。
部員達の顔が一瞬にして青褪めるが、此処で黙って見ていても何も変わらない。
「ビデオは回したままにしておいてね」
蹲る物体はスカートを履いているので人間の女性だと判断出来るが死体とも幽霊とも生きた人間とも判断出来ないので、部員の中で1番度胸のある真智子が近寄って確認する事になる。
恐る恐る近寄ると寝ている様な動きをしているので、死体でも幽霊でもないのは解るが、問題はその女性の近くに転がっている薬の瓶と水筒。
やだコレ…睡眠薬じゃん…
瓶のラベルを読み目の前に蹲る女性が睡眠薬による自殺を計ったと思った真智子は部員達に指示を飛ばず。
「この娘睡眠薬を大量に飲んでる!柳川さんと佐藤君で山を降りて救急車を呼んで!急いで!!」
まさかこんな事になるなんて思いもよらなかった柳川絵美里と佐藤健吾は真智子の指示に従って山を降りて行く。
「って…この女…男じゃない?」
そう言ったのは真智子と共に残ったカメラ担当の佐山修司が女装した男ではないのかと言い出したので改めて女性の顔をまじまじと見たのだが、顔は女性の顔にしか見えない。
修司曰く、少し前に女性として生活していた男性が付き合っていた男性と破局していたとの事で、その男性とこの女性の顔が良く似ているとの事だ。
それに関しては他人の空似と言う事もあるし身体検査する訳にも行かない。
ボソボソ…
ボソボソ…
今か今かと救急車を待っていると周囲に数人の人間が小声で話し合うのが解るが、姿が無い。
(静かに…兎に角、気付いてないフリして…カメラは止めるなよ)
オカ研の中で唯一霊感の強い前田康弘が清めの塩を二人に渡しながら無視していろと言うので言われた通り無視していると
チッ!!
程なく聴こえてくる舌打ちの音。
この音は3人全員に聴こえていて真智子と修司がビクッと身体を震わせるが康弘だけは安堵した表情になりもう大丈夫だと言う。
康弘の話によると、この山で自殺した霊5体程遠巻きに様子を伺っていてこの女が死ぬのを待っていた所に自分達が来たので襲うかどおか話し合っていたとの事。
然し、康弘が見える人で更に救急車と警察が到着したのが解ったのと女が死にそうにないと判断したが為に舌打ちして消えたとの事だ。
「取り憑かれると厄介だったけど、近寄って来る事も無かったから助かったよ」
と、康弘が説明したところで救急隊員や警察を引き連れた2人が戻って来た。
その後、事情聴取を受けたオカ研部員であったが女性が死ななかった事により、人命救助で表彰されたがあの時間にあの場所に行った事に対して怒られたと言う。
この女性は本物の女性で名を神下明子28歳で普段から会社の上司から嫌がらせを受けていた。既婚者で子持ちにも拘らず、結婚と恋愛は別との自分勝手な理由で明子に交際を迫り断られた挙げ句逆恨みした事による嫌がらせにより過労と鬱状態に追い込まれた挙げ句に自殺を思い立ったと言う。
その事を知った真智子は怒り狂い明子を焚き付け復讐させる事にした。
結果…
「交際を迫った覚えはないし嫌がらせもしていない!
全てはその女の被害妄想だ」
と、抵抗していた上司に対して社内でも明子に言い寄る姿を目撃されていたり、明子に仕事を押し付け他の女性社員と浮気していたと他の社員からの証言と数々の女性社員との浮気証拠を得て上司の妻を味方につけ、上司を追い込みクビに追い込む事に成功した。
「私の両親は父親の浮気が原因で離婚しているの。だから協力出来る事があると思うの。
それに、そんな人間の皮を被ったゴミクズに復讐しないで終わるのなんて許させることではないわ!」
「・・・宜しくお願い致します」
「これから宜しくね…
先ずは証拠集めから始めましょうか。
それと、母がお世話になった弁護士事務所を紹介してあげる」
「助かります」
勿論、赤の他人に協力してやる言われもないのだが、明子の実家が遠く離れた場所に在り頼る事が出来ないのと転勤で雨音に来ている為に頼れる友人が居なかったが為に協力を申し出たところ命の恩人からの申し入れに断り切れず快諾した。
明子とは、真智子が結婚するまで友達付き合いが続いたが明子の海外転勤が決まるとそれが切っ掛けに疎遠になってしまう。
そして真智子高校3年の春。
今日は入学式と始業式。
登校した真智子は教室へと向おうとしたのだが…
ポンポン
気配も無しにいきなり右肩を叩かれて驚き振り向くと、そこには見知らぬ男子生徒が立っていた。
制服が真新しいところを見ると新入生の様だが知った顔ではないし声を掛けられる筋合いはないし、況してや肩を叩かれる等と言う事は有り得ない事だ。
「あっ…気を悪くしたのなら申し訳ない。
肩に毛虫がくっ付いていたのでつい…」
と、シレッとした顔で床に落ちている毛虫を指差して状況を説明するとありがとうと言い残して立ち去ってしまう。
やだ…メッチャタイプ…
決してイケメン(正確にはイケメンの部類には入るらしい)ではないが、意志の強そうな力強い目にガッシリと引き締まったボディ。そして真智子を見ても緩むことのない表情にキュンとしてしまった真智子はつい照れ隠しで俯いて下を見ることで平静を装いその場をやり過ごしたのだが、本能のまま走っていたら「惚れました付き合って下さい」と言っている可能性が高かった。
「おい…今の見てたぞ…
毛虫を口実に祓ったよな?」
男子生徒に話し掛けたのは前田康弘。
話し掛けられたのは匠達人。
「なぁ〜んだ…先輩でしたか…小物でしたがヤユヨがくっ付いていたもんで…つい…」
康弘の父親が達人の実家のお世話になっていたせいもあって2人とも顔見知りと言うか悪友に近い。
まぁ、悪友と言っても達人の実家の従業員にお茶目な悪戯を仕掛けるだけなのだが、お互いに見える人だと言う事で何かと気が合うこの二人。
「まぁ…アレは俺の専門外だからな…詳しい事は明日部室で聴いてやるよ来ないと…バラすぞ!?」
「ちょ…俺が見える人だってのは…」
「わぁ〜ってるよ
たっちゃんのお母さんに殺されかねないからな
但し…」
「解ってますよ…」
そんな会話をした後、教室へと向かう2人。
翌日の放課後、オカ研の部室へ呼び出された達人は昨日の出来事について尋問されたと言う。
………
……
見つけた…♡
魔王サイドが何を考えているか…アタシがシッカリと見極めてやるわ
ウフフ…♡
………
……
浦川学園では入学式の3日後に部活の説明会があり、その後に部活を選択しなければならなく、その後は翌週から活動開始となる。
・・・♡
新入生の部活選択の結果を訊いた真智子は周囲がドン引きするほどに上機嫌であったのだが、少なからず不安もあった。
何故かと言うと、入部希望者全員が幽霊部員にならないかと言う事だ。
入部希望者は5名でその中には明らかに真智子狙いの入部者が居たから気が重いのは仕方が無い。
と、言うのも5名の中の3人は入学式翌日に付き合って下さいと交際申し込みしてきたのだ。
然も、ラブレターではなく面と向かって言って来たので「オカ研に入部したら考えてあげる」と言ってしまった挙げ句の入部希望であったのだから不安になるのも無理はない。
そんな中、しつこく付き纏ってくる男子生徒が1人。
その男子生徒こそが濱田壊であった。
あまりにしつこいので「好きな人がいるからゴメンね」と断ってみたのだが、オカ研には入部はしなかったが壊の辞書には諦めると言う言葉は無いのか段々と男の本能丸出しに迫ってくる様になった壊に困っていた時
「壊を諦めさせたかったら好きな人と本当に付き合ってしまえば良い」
そう言い出したのは達人だ。言った本人からしたら何気ない一言であったのだが、真智子にとって達人は外見だけでなく内面もタイプであり、真智子の気持ちは他の部員も知っているので此処で付き合ってしまっても文句を言われたり嫉妬されることもないだろう。
なので真智子がとった行動は当然
「匠くんに一目惚れしてしまいました
本気で好きです!付き合って下さい!」
であった。
然も、部員が監視している状況だ。
きったねぇ…逃げ場ないじゃん…
達人にとって真智子は尊敬する先輩であり、お姉さん的な存在であったのだがまさか惚れられていたなどと思いもよらなかった。そのせいもあって呆気にとられてしまったのだが、衆人環視の中での本気の告白などと言った行為は通常では出来ないだろう。
部員達もまさかこのシチュエーションで告白するとは思ってもみなかった様で達人同様に呆気にとられていたのだが、同時に「此処で部長の気持ちに応えてやらないと男じゃないぞ!てか、断ったら退部決定だかんな!」的な目で達人を見ていたのだから完全に逃げ道を塞がれた形になってしまっている。
それとは別の話はなるのだが、真智子は霊媒体質なのか、悪霊や妖怪から常に狙われている感もあるので守ると言う意味でも付き合うのは有りなのだろう。
真智子を嫌いではないし好かれているのは悪い気はしないが何か脅されている気分になっている達人に瞳をうるうるさせて上目遣いで「だめ?」と訊いて来る真智子に押し切られる形に「宜しくお願いします」と返事をしてしまうが、此処で康弘はすかさず「たっちゃんのお母さんこえぇぞぉ〜覚悟しいやぁ〜」とチャチャを入れてきたのだが
「そんなの知っているし…
寧ろ匠くんの父親連合の方が怖いよ」
と反論するも、真智子は達人の実家の事は噂程度でしか知らないが何とかなるだろうと楽観視している様子。
こんな経緯で付き合い出した2人であったが、諦める事を知らない壊はことあるごとに真智子を奪おうとして来たのだが達人と部員達の前に潰されてしまう事になる。
たつひとぉ〜
俺の女を横取りした罪は重いぞ
ヤツだけはゼッテー俺の手でぶち殺す!!
二人の仲を引き裂く事が不可能と悟った壊は諦めるどころか達人に対して殺意を抱く事となったのである。
………
……
ウフフ…
これで魔王サイドに入り込むことは出来たようね…
でも…
アイツは邪魔!
でも、アタシの想像通りだとすると…
下手に動かず成り行きに任せるのが吉かな?
人間としての人生も楽しみたいしね♡