171話 結婚式そして…
「損害賠償って…1…10…100…アタマイテ…」
魔王から請求された損害賠償の金額は日本円に直すと1兆円になる。
当然ながら「俺のせいじゃないだろ!ってか、俺は被害者だぞ!?」と抗議してみたのだが
「被害者ぶるな!貴様が来たから事は起きたのだから貴様に責任がある!」
と、いけシャアシャアと言い放つ魔王に対して
「俺は巻き込まれて連れて来られただけだっての!それを言うなら山本八郎座衛門はどおなる?ヤツが事を起こさなかったらこんな事にはならなかった筈だ。ヤツはお咎めなしなのかよ!?」
と、食い下がるレイに対して
「ヤツには魔王の名の下、指名手配を出しているから何も出来ないだろうよ」
と、言ったものだから
「指名手配出してハイ終了?専用空間でヒッキーやっていても眷属やら部下やらを抱えてんだろ?そいつ等を使って遣りたい放題やれんじゃねぇかよ。それに人間界には行けるんじゃねぇのか!?そこまで取り締まれるのかよ!」
と、返したら今にもブチ切れるのではないと思う程の表情になりながら
「ヤツとかその部下が人間界で暴れたら貴様が捕まえれば良いだけの話だろ?これ以上、魔界で好き勝手はさせないから安心せよ!」
と、言い返して来た後で
「兎に角、損害賠償は貴様に請求する事は魔王軍全員一致の回答だ!拒否は許さん!金で払いたく無ければ貴様が街を復興させよ!資材は使い放題にしてやっからよ♡」
と付加えて来る。
本音はそこかい!
金は街を俺に復興させる為の餌なのだろうが復興を拒否すれば本当に金を請求されるのは間違いないだろう。
あの力を使わせたいのでしょうね
魔王の意図を読み取ったのだろうローラがそんな事を言うと真智子もウンウンと頷く。
あの力と言うのは、俺の神としての力だろう。
勿論そんな事は解っている。
解っているが未だ制御出来ていない力を使うのはリスクがデカすぎる。
「孫同然のゆう子の花嫁姿を今直ぐみたいのだよ
貴様もそうじゃないのか?この式場は俺が建てたんだぞ!って自慢したくはないか?」
厭らしい笑みを湛えて迫る空。
ちょっ…魔王!
その事を交渉材料に持ってくるか!?
その話を持ってこられたら…
「観念したら?」
ゆう子の花嫁姿を見たいのは同じらしいコヨミが魔王の援護射撃して来ると便乗する様に
「その後のケアは妾に任せよ。
今直ぐ取り掛かるが良い」
と、楓夏様も煽ってくる。
魔王空間での修行中に育まれたピンクとゆう子の愛。サポートに回っていたピンクは最初は相棒として接していたのだが、接しているうちにゆう子の真面目で真っ直ぐな姿勢に心を動かされてしまい、友情が芽生えそれが何時の間にか愛情に変わってしまう。
ゆう子はゆう子で最悪の亡くなり方をしたこともあって家族以外の人を信じられなくっていたのだが、色んな面で相性が良かったピンクの愛情を受け入れたのだろう。
二人の愛情を深めていく過程で恋人同士なら当たり前の行為に耽っていたのをレッド達に見つかり妖怪エロノミーと云うありがた迷惑な名前を付けられてしまったのは別の話。
あの麻雀でゆう子がレイに要求したのは、当然ながらピンクとの結婚と魔界で結婚式を挙げる事を許可してもらう事だ。
レイが困る姿が面白かったのか、天音も魔王に着いた事で四面楚歌状態に追い込まれてしまったレイは遂に街の復興を承諾し
わぁ〜ったよ!
その代わり、俺の仕事に文句は一切言うなよ!?
そんな捨て台詞を吐きならが作業に入るレイの背中を見ながらしてやったり顔の空と楓夏。
その二人の表情を見たコヨミは悪党め…と思ったのだが、口に出すことはしなかった。
………
……
「マジで死ぬ…少し休ませろ…」
持てる力をフルに使って街の復興に励む事15日間。最後に結婚式場を建設し終えたレイは疲労困憊の表情でその場に倒れ込みそのまま動かなくなる。
魔王「おぉ…流石は…
いやぁ〜見事なもんだな…
関心関心」
レイ「結婚式は人間界式でやらせて貰うからな!?
文句は言わせねぇぞ!?」
魔王「フッ…好きにしろ」
結婚式場は魔都を一望できる丘にヨーロッパ調のお洒落なチャペルを建設した。
この式場は当然ながら披露宴も出来る様になっていて、ゆう子とピンクの結婚式を終えた後は好きに使えやと言った感じなので、この結婚式場で式を挙げるカップルが殺到するだろう。
それが証拠に結婚式の後、此処で結婚式を挙げたいと申し出るカップルが殺到したそうだ。
「1か月は掛かると思っていたのじゃが、まさか15日間で終了させるとはの…大したもんじゃ…癒やしの風…」
チャペルの前で大の字になってひっくり返っている俺の周囲に楓夏様が起こした優しい風が吹き体力を回復させて行く。
「あぁ…気持ち良い…てか、幽霊になってまでこき使われるとは思っても見なかったぜ…」
神力・霊力は戻らないが、体力はかなり回復出来た俺はずっとこうしていたい気持ちになってしまったのだが、そうも言ってはいられないし二人のための結婚式の打ち合わせやスタッフの募集と教育そして、何にしても神父役を決めなくてはならない。
「うわぁ…お父さんすてき…」
「ホント…」
「どおだぁ〜…と言いたいところだけど、お前たち二人はやらなければならない事があるのを忘れてはないだろうな!?」
「「ハイ…」」
「俺の代理でお母さんが付き添ってくれる筈だから行って来い!」
「「ハイ!!」」
俺にやれることは全てやった筈だぞ。
後は頼むよ筆頭殿…
「お疲れ様でした…後は任せて少しお休み下さい」
街の復興と式場の建設そして二人の結婚式の為の手配と各方面への根回しその他諸々の事をし終えたレイはその後の事を超獄丸に任せて専用空間へと行ってしまう。
スタッフの方は募集を掛けると直ぐに集まったのだが、肝心の神父役が決まらない。
と、言っても二人に絞られているのだが甲乙付けがたいのだよ。
何にしても幻獣王 ゼロと魔王 空だからなぁ…
と、悩んでいたいたら
「身内同然の者が神父役をするのは気が引けるからパス!ゆう子の花嫁姿を肴に美味い飯と酒を頂ければそれで良い」
とか言って魔王 空が辞退したのでアッサリと幻獣王 ゼロに決まったよ。
で…スタッフの教育も仕上がって来た頃、またもや問題が浮上してきた。
それは、Wウェディングドレスでやるのか何方かがタキシード又はモーニングを着るかだったが、ピンクが夫役をやると言い出したのでピンクがモーニングを着る事でアッサリと解決。
そして式場完成から2ヶ月後…
皆さん、今日が初仕事です!
今までの成果を出し切って結婚式を成功させましょう!
総勢50名にもなるスタッフを前に総指揮者でもある超獄丸が挨拶をすると声を揃えて「ハイッ!」と返事をした後で其々の持ち場に行き準備に取り掛かる。
そして…
ヴァージンロードを歩き幻獣王 ゼロの前に進み出たピンクとゆう子に対して出た言葉は祝福の言葉ではなかった。
「ピンク…いや…桃の花の妖精 桃花よ…」
「ハイ…」
「妖怪が幽霊を娶ると言う意味を…テメェ解ってんだろうな!?」
「ハイッ!」
「解ってねぇだろ!?一歩間違えれば霊界との戦争に発展しかねないのだぞ!?」
優しい表情ではなく鬼の形相でピンクに迫るゼロの意図が解らない参列者は一触即発の雰囲気に顔面蒼白になってしまう。
当然ながら人間は死後、幽霊となり霊界へと上がり輪廻の輪に乗って再び人間へと転生する。これを繰り返す事がこの世の理なのだ。
例外があるとしたら、レイ・コヨミ・天音の様に神クラスへと上がる事で輪廻の輪から外れる事なのだが、ゆう子の場合は神クラスへ上がる事は叶っていない。
と、言う事はゆう子は何れ霊界へと上がり輪廻の輪に乗らなければならない事を意味し、それを阻止しようものなら輪廻転生を管理している神の怒りを買うと言う事を意味する。
「お許しは頂いております」
既に神の許可は得ていて誰憚る事なく結婚出来るのだが、そんな事は些細な事でしかないとゼロは言う。
「お前が他の者に目移りしてゆう子を泣かす事はしないだろうなと言う事だ!」
「・・・!」
「人間界では浮気と言うそうだな
お前はゆう子だけを愛し守る事を誓えるかと訊いておる!もし、他の者に目移りした日には…解っておるな!?」
此処まで来たら脅迫としか言いようがないが、それをやってしまったら末路は想像することが出来るが為に内心冷や汗が止まらないピンク。
ピンクの二つ名でもあるヘルピンクとは、嘗ての変態女王を彷彿させる様なアブノーマルな趣味の持ち主だから付いた名だ。
その事を知らないゆう子には絶対に知られてはならない。
なので、返せる返事は唯一つ
「ゆう子だけを愛し、ゆう子を守る事を堅く固く誓います!」
だった。
この返事に内心ほくそ笑むゼロであったが、誓いの言葉を確実にさせる為に契約の呪いをかけ、ゆう子に聞こえない様に呪いの事を説明したところ、「何もそこまでしなくても良いではないですか」と言い返すのがやっとだったと言う。
「さて…ゆう子…
桃花を妻とし、どんなことがあってもコレを愛し添い遂げることを誓うか?」
今まで色々あったし、正直言ってピンクの事も100%信用していないが幻獣王 ゼロが脅しをかけ更に何かした事を考えると大丈夫だろうと思う。
なので、返事も当然
「ハイ…」
だった。
確たる意志を宿らせた目をゼロに向けてシッカリと返事をしたゆう子に対して満面の笑みで
「それでは誓いのキスを」
衆人環視の中、向き合った二人の唇が重なると途端に沸き起こる拍手喝采。
「多数の証人がいるこの場で新たなる婦婦が誕生しました。改めて祝福の拍手を」
(ホントヤレヤレだったぜ…)
(二人をくっつけるのに苦労したぜ…ホント)
(その苦労が報われて良かったわ…)
(これで空白のグリーンが決定したと言う事で良いのかな?属性も緑だからピッタリだ)
(あぁ…面倒な役回りになると思うけど、ゆう子には霊界への架け橋にもなって貰わないとならないからな。拒否と言う選択肢は用意していない)
(それと、レイの監視も…でしょ?)
(勝手に面白い事をやられてもつまらんからな)
(((同感)))
参列者全員の拍手喝采を浴びる二人を見ながらこんな事を話し合っていた他のヒーロー達。
妖戦隊
怪レンジャー グリーン
爆誕の瞬間であった。