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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第10章 第2次魔界大戦
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166話 決着その3

「悪魔軍を蹴散らせ!」


「我等の街をこんなにしやがって死を持って償えや!」


「敵は堕天使だ!

4人…いや…5人一組で行動しろ!

決して1人で殺ろうとするなよ!」


うぉぉぉぉぉぉ…!


一瞬にして街を破壊され絶望し戦意喪失し無抵抗で白旗を揚げるかと思っていたのだろうか、何処か余裕のある態度でいた悪魔軍側の兵士達。

然し、戦意喪失どころか闘争心に火が点いた妖怪達が堕天使に立ち向かって行くが、悪魔軍第一軍の強さは伊達ではない。

それに付加えて魔力との相性が悪いとあって妖怪側の方が不利だと言うのが現状だ。

悪魔軍の再来襲を予想していた魔王の妖怪強化計画の中で鍛えられている妖怪達は不利を撥ね退ける程の戦闘力を発揮し、更にタイマンではなく複数で堕天使に当たるものだから戦場は膠着状態へと突入していた。


「御大将!」


直ぐに終わると思っていた副官のドグラが困惑したような表情でベルを見るが、肝心のベルは一点へと目を向けていてドグラの声は届いていない様子。


「熾天使級は今直ぐ戦闘準備せよ!

脳筋夫婦が暴れるぞ!」


新たなる動きを察知したベルが叫ぶ。

そう、ベルが注視していたのは魔王城の上に立つ雲海と楓夏の二人の姿だったのだ。


ワハハ

祭りじゃ祭りじゃ!

喧嘩祭りじゃ!


お主ら巻き込まれたくなかったら下がっておれ!


戦いに乱入した雲海と楓夏は水を得た魚の様に瞬く間に堕天使を蹴散らして行く。


「楓夏様達ばかりに手柄を横取りさせてなるもか

皆の者気合を入れよ!」


後から参戦したのにも拘らず一瞬にして5分の1程の堕天使達を葬り去った雲海&楓夏の暴れ(暴走)ぶりに気後れする事なく兵士達に向かって行く妖怪達。


二人が参戦した事により、戦況は一気に妖怪側へと傾いたかの様に見えた。


然し


ドスッ…

ドスドスドスッ!


突如として空から黒い矢が雨の如く降って来て堕天使妖怪問わず突き刺さって行くが、直ぐに楓夏が風のバリアを発生させて矢を防ぐ。

矢は熾天使級から発射されたものだが、両軍入り乱れているが為に妖怪のみを狙い撃ちすることが出なかった。

その為に無差別攻撃を行ったのだろう。


この攻撃で敵味方合わせて半数が減ってしまったが戦況は何も変わらない。

寧ろ、堕天使の方が不利になってしまったかの様だが、熾天使級の攻撃は止まらない。


「面倒な…雲海!」


「応!」


矢を防ぐのが面倒になったのか雲海に向けて作り出した数本の竜巻を向かわせると雲海が羽団扇を使い竜巻を熾天使に向かって打ち出す。

まさに阿吽の呼吸と言うやつだ。

打ち出された竜巻は雲海の力で増幅されて巨大な竜巻となって襲い掛かり、神気を含んだ竜巻に出来た真空波で切り刻まれ瞬く間に戦闘不能に追い込んで行く。


「おお…爽快じゃの」


「コレはノーカンだな…」


竜巻の効果に満足そうな楓夏に対して少々不満気な雲海。

現在の殲滅数は楓夏1500に対して雲海1200なのでこの攻撃がカウントに入らないのは痛いところだろう。

そんな雲海にそちらのカウントにしても妾の優位は変わらないと言い出したので遠慮なくカウントする事にしたのだが、それでもプラス100にしかならない。


本当に温泉旅行ご招待するしかなくなるではないか


この期に及んでも自らが言い出した温泉旅行ご招待の件を気にしている雲海は内心焦りを感じるのであった。


「うぬぅ…脳筋め…」


冷酷な笑みを浮かべ暴れまわる楓夏と楽しくて仕方がないと言った表情を浮かべ暴れまわる雲海に触発される様に堕天使相手に大立ち回りする妖怪に戦意喪失した堕天使が次々と脱落して行くのを黙って見ていたベルの堪忍袋の緒が切れるが、ドグラに諌められ冷静になるかと思ったのだが


「コイツで方を付けてやる!

全てを焼き尽くせ

flame of darkness!」


魔都を焼け野原にしようとでも思ったのか、地獄の深淵で燃え盛る巨大な闇の炎を召喚し、限界まで大きくさせて行く。そのまま爆発四散させる為に育てているのだろう。

爆発四散した闇の炎は無数の炎の塊のとなり、四方八方へと飛び散り周辺一帯を焼き尽くす事になる。


「拙いのぉ…妾と雲海ではアレは防げん」


如何に楓夏と雲海が強かろうと闇の炎の前では敵う訳がないと言うか防ぐ術がないのだ。

それに付加えて妖怪達も炎属性に耐性はあれど、それほどでもないのは確か。


「なぁ、楓夏よぉ…

カエサルのものはカエサルに!

召喚されたものは召喚元へ還してやるのが筋だろ?

あのままゴミ箱に放り込んでやれば良いのではないか?」


レイが得意としている閻魔ジャッジ。それを簡単且つ強力にしたのが罪人直送便(通称ゴミ箱)それを使えば闇の炎とベルとその護衛を纏めて送り返す事が出来るのではないかと考えた雲海が提案してきたのだが、ゴミ箱の正体は術者が存在する空間と地獄を無理矢理繋げた時に起こる小さなワームホールのような穴だ。この穴をゴミ箱と呼んでいるのだが、時間は短く15秒程度で消えてしまうのと半径1m程度の穴しか出来ないので対象物がそれ以上の大きさの物には不向きなのだ。

更に、ゴミ箱を使用するだけでもカナリの力を消費すると言ったオマケが付く。況してや絶賛戦闘中の現在とあっては使うだけで不利な状況になりかねない諸刃の剣なのだ。

なので却下するしかないが、放置しておけば魔都は壊滅の憂き目にあってしまうのは間違いない。


「これで終わりだ!

explosion!」


「全員避難せよ!

こんな火で死ぬことは許さん!

許されん!」


臨界に達した闇の炎が弾け、無数の小さな炎の塊となり周囲へ飛び散り被害をまき散らす有様を楓夏を始め妖怪達は炎を避けながら見届ける事しか出来ずにいた。

闇の炎が魔都全体を焼け野原へと変えていく。


魔都が…


俺達の街が…


次々と戦意を喪失して行く妖怪達に襲い掛かる堕天使達。

魔都での戦いは悪魔軍の勝利で終るものと思われたのだが…


よくもやってくれたな…


妖怪達の周囲の空気がドヨンとした重いものに変わり急速に広がって行くが、これは悲しみではなく純然たる怒り。

然しそれは先程の激しい怒りとは真逆の静かなる怒り。

その怒りが堕天使の攻撃を阻む。

攻撃が通らない事に驚く堕天使達であったが、更に苛烈な攻撃を仕掛けるがそれでも攻撃が通らない。

事ここに至って狼狽する堕天使達そしてベルと側近達。

魔都を壊滅状態へと追い込めば白旗を揚げると思っていたのだろうが、当てが外れてしまった。


グシャ!!


ハンマーを振り下ろす様な拳の一撃が堕天使の脳天を捕らえたかと思ったらトマトの様に潰されて消えて行く。

まるで暗殺集団の様に素早く無言で的確に急所を捉えて一撃で葬り去るその姿を見て僅かながらとは言え顔色を青くする楓夏であったが、次の瞬間には冷酷な笑みへと変わり掻き消える様にその場から消える。


やべ…楓夏のヤツガチでキレやがった…


怒りが無いわけではないが、この戦場に於いて唯一人だけ冷静な雲海は楓夏を止めに入ろうとしたのだが、時すでに遅し。

楓夏がガチでキレた姿を見たことがあるのは魔界広しと言えど雲海と魔王の二人のみ。

そのキレた時と言うのが達人が壊に殺された時だ。

あまりのキレぶりに雨音では嵐が3日間続いてしまい、これ以上は人間界に被害が出かねないと警戒した魔王が鎮圧に出張って漸く治まった程だ。


「ベルのヤツ終わったな…」


姿が消えてから1分も満たない時間で残りの堕天使や副官の体が弾け飛んだかと思ったら、抵抗も出来ずに消されてしまったのだ。


「温泉旅行ゴチ!」


ベルの軍を一蹴してスッキリしたのか、とびきりの笑顔を雲海に向ける楓夏に恐怖に似た感情が芽生えたのであった。

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