第158話 超獄丸VSパズル
「ベルゼバブの野郎…舐めやがって…テメェ等も行きやがれ!!」
ヒャッハー!!
戦力にならない兵士達に加えて実験する余裕を見せる超獄丸の態度に業を煮やしたパズルの檄に応える様に奇声を上げて超獄丸に突撃して行く。
「…そろそろでしょうか…あなた方にも手柄を立てるチャンスをあげましょう」
孵化した眷属を雑音に悶絶していた妖怪達に寄生させチャンスを与えると述べる超獄丸。
眷属に魔力の耐性を付加させたのは悪魔対策だ。
魔力に耐性さえ有ればパンクロッカーズに対しても同等の戦力を有していると分析している超獄丸であったが、問題は魔力だけではない。
そう、あの雑音だ。
「確かに雑音は喧しいし迷惑極まりないですね」
演奏を再開したパズルの雑音を肯定した瞬間、それまで苦しんでいた妖怪達の動きが見違えたのだ。
超獄丸の固有スキル
「天邪鬼」
言ったことの真逆の結果を齎すスキル。
魔王の軍門に下った時、手に入れたある意味最強とも言える程のスキルがこの時点で発動したのだ。
「魔王様に褒められたくなければ戦わずに負けて下さい」
直訳するまでもなく「パズルの軍に絶対に勝て!」と、檄を飛ばしているが本当のところは全く期待していない。
パンクロッカーズと妖怪達の数は100名で数的には互角であるが、相性の悪さから見たら妖怪達は圧倒的に不利な状況。
その不利な状況をひっくり返す為に思い付いたのが眷属を利用したこの作戦であったのだ。
(頭さえ潰せば後は烏合の衆ですからね 私がパズルを潰す迄の足止めくらいには役立って頂ければそれで良いです)
持っていた楽器を武器に変化させ妖怪達に襲い掛かるパンクロッカーズを迎え撃つ妖怪達に目もくれずその場からパズルの間近に瞬間移動する。
レイお得意の入れ替わりだ。
少し注意したら解る事だが、兵士達の不甲斐ない戦いと演奏に気を取られていたパズルが超獄丸が飛ばしたアンテナに気が付く筈が無かった。
(やっぱりあの幽霊の技は使い勝手が良い。習得しておいて正解でした)
結構な距離が有ったのにも関わらず一瞬で差を詰めて来た超獄丸に驚く表情をするパズルであったが、更に驚愕の表情を浮かべる。
記憶が正しければ…こう…でしたかね…
物質創造で創り出したギターを構えて徐ろに弾き出す。
超獄丸が奏でるメロディはパズルが出していた雑音としか例えようのない出鱈目なメロディと違い、勇ましくも優しいメロディ。
そのメロディは嘗て達人が大好きな曲の1つであり、耳にタコができる程に聞かされた曲であった。
「この曲を聴いていると何故か元気が出てくるんだよね」
受験勉強の時も部活や友人関係でトラブルに巻き込まれた後や些細な事で真智子と喧嘩をして落ち込んでいた時に必ず聴いていたその曲。
少々アレンジはしているものの、分身体を使いキーボードやドラムそしてベースまで創り出し奏でたメロディはデスキャニオン中に響き渡る。
「もう良いでしょう
不毛な戦闘を止め和解しなさい!」
そのメロディに思わず聴き入ってしまったのは、パズルだけではなく絶賛死闘中のパンクロッカーズと妖怪達も、その動きを止め聴き入ってしまった程だ。
「ふぅ…記憶を辿り弾いてみたのですが、何とかなるものですね…さぁ…自分達のホームにお帰りなさい」
一曲目を弾き終わり、周囲を確認した超獄丸は立て続けに2曲目を弾き出す。
先程とは違い魂を鎮める様な優しいメロディ。
悪魔達への鎮魂曲
即興であるが、超獄丸オリジナルのメロディに聴き入ってしまったが為に恍惚の表情を浮かべて消滅して行くパンクロッカーズに気が付いたパズルが狂った様に楽器を掻き鳴らすが時既に遅し。
「あれだけ居た手駒が…
許さん…許さんぞ…
ベルゼバブゥ〜〜〜〜〜!!!!!」
数的には圧倒的有利に立っていたパズルの軍が超獄丸たった一人に良いようにされ、全滅の憂き目を見てしまい怒り狂い幾つもの火球を投げ付け、そして炎の竜巻を作り出し襲う。
おぉ〜〜熱い熱い…
襲い掛かる爆炎にも涼しい顔で佇む超獄丸に逆上したパズルが全身に炎を纏わせ、炎の化身と化して肉弾戦を仕掛けるが
火にはコレですかね
考える間もなく超獄丸の全身に氷が纏わり付き武器と防具に変化する。
「ヘッ!
そんなもんで俺様を止められるものかよ!?」
ぶつかる炎と氷
魔力と妖気
普通に考えたら圧倒的に超獄丸が不利なのだが、そんな事など些細な事と言わんばかりにパズルを圧倒するが、どおも決め手が欠ける。
「仕方がありませんね
貴方と同じ土俵に上がるとしましょうか」
このままでは不利だと踏んだ訳でも膠着状態になった訳でもない。ただ単に純然たる力でパズルの心をボッキリと折ろうと考え、身に纏っていた氷を炎に変え戦闘を継続する。