152話 ヒーローVSクラッシュストーンズ 2
「うわっ!コイツ等は辺りを石の森にする気か!?」
petrification field
石化フィールド 半径500m〜5Kmに存在するありとあらゆる物を石と化すメドゥの固有スキル。
このスキルを実行する事によりメドゥと眷属のステータスは何倍にもアップする。
最大出力で発動した石化の勢いは思ったより早く瞬く間にジャンジャングルの植物をも巻き込み石と化して行く。
勿論ヒーロー達も例外なく石化しているのだが、抵抗力が強いのか5人共膝から下が石化していて身動きを制限されてしまう。
「残念ジャー敗れたり!」
悪魔が使う魔力は元々妖気なのだが、地獄界へ行った事により変質したものであり、同時に妖怪にとっては毒になってしまっている。
メドゥの魔力は石化したヒーロー達の足元から侵食して行き抵抗力を奪い完全に石へと変化させる。
「ま…じ…か…」
石化への抵抗力を失ったヒーロー達は反撃らしい事も断末魔の叫び声を上げる事すら叶わずに石化していってしまう。
「妖怪にとって魔力は毒だって事知らなかったの?
お・ば・か・さ・ん♥」
キャハ…キャハハハハハハハハハハ
「ザマアミロ!
妖怪如きが悪魔に勝とうなんて10000年早いのよ!」
高笑いしながら石化したヒーローを砂になるまで破壊するメドゥ。かくして大した動きをする事もなくヒーローを片付ける事が出来たメドゥは魔王の居城へと進軍するべく動き出そうとした。
(呆気無さすぎる…仮にも魔界の秘密警察とあろう者達があれしきで簡単に殺られたりするものだろうか…)
ヒーロー達を倒して気を良くしたのか、意気揚々と進軍の命令を飛ばしているメドゥの後ろ姿を見ながら疑問を感じていた近衛隊長のシュナイダーは、ただ一人不安を抱えていたが、眼の前の出来事は紛れもない事実。
「さぁ、行くわよ!」
そんなシュナイダーの不安を知らないメドゥは残った悪魔を1箇所に集め魔王城へ向けて転送魔法を発動させようとしたのだが…
転送魔法は発動する事は無かった。
「何でよ…何で転送魔法が発動しないのぉ〜!!」
部下を転送する為の魔法陣を発動させようとしたのだが、何故か発動せず慌てるメドゥ。
「お前等はこの場で1番やってはいけない事をやってしまった…代償は自身の体で払って貰おう!」
低い男の声が辺り一帯に響き渡ったかと思うと地面から生える様に伸びてきた無数の木の根が一瞬にして残った悪魔達の殆どを捕獲し、抵抗らしい抵抗もさせぬまま地面の中へと引きずり込んでしまう。
この木の根の正体は、ジャンジャングルの主とも言える大妖怪 妖樹 ヤ・テ・ベオの根だ。
ヤ・テ・ベオは温厚で優しい性格なのだが、それは生息地を荒らさない者にのみ限定されており、荒らす者には例え今まで献身的に世話をしていた者であっても一切の容赦はない。
転送魔法が発動しなかったのは転送の為に開放した魔力を吸収した為だったのだ。
コレでメドゥの軍は近衛を含めて100名にまで減ってしまう。
それでも余裕の表情を崩さないメドゥであったが、ヤ・テ・ベオの存在はそこ此処に有り、どれが本体か解らない。
それどころか、悪魔の魔力を吸収したヤ・テ・ベオの存在値がグンと上がり更に妖気と魔力が混合された禍々しいオーラが大陸全体を包み込む。
最早この大陸全土がヤ・テ・ベオになったかの様だ。
「メドゥ様!」
この状態になって初めて自身が置かれている状況を理解したシュナイダーに対して尚も余裕の表情を崩さないメドゥは「慌てるでない」と左手で制する。
この余裕ぶりは恐らくはヒーロー達を葬り去った事から来るもので、更に魔力を吸収したヤ・テ・ベオを既に支配下に置く様に動いているからだろう。
然し…
「流石は大妖怪ってところかしらね…いい加減に言う事聞きなさい!!」
悪魔の力を手に入れた事により、妖気と融合させる為に生じた僅かな隙を突かれたようだが、範囲が広すぎて全てを支配下に置くのに手間取った様子。
然し、自らの魔力をヤ・テ・ベオとリンクさせてしまったが為に中途半端で止めるわけには行かない。
止める事は失敗を意味する。
それはメドゥがヤ・テ・ベオに取り込まれてしまう事を意味するのだから内心は必死になっているのだろう。
それが証拠に余裕の表情をしているが、体からは大量の汗が吹き出しているのだ。
ヤ・テ・ベオと言う妖怪は植物の妖怪で地に根を張っている分、移動は出来ない。
攻撃手段は根を触手にして攻撃する。
花の花粉を周囲に振りまき敵を惑わせたり行動不能にする。
葉っぱを飛ばして敵を切り刻む。
この3つしか持っていない。
然し、このヤ・テ・ベオは樹齢五千年を有に超え、妖怪の中でも年寄りの部類に入る妖怪で、妖気の高さも精神的な強さも魔界屈指の強者なのだ。
そんなヤ・テ・ベオが本気で精神攻撃に抵抗しているのだからメドゥも必死になるのは自明の理だろう。
「馬鹿野郎!早くリンクを切らんか!」
何かに気が付いたシュナイダーがメドゥを怒鳴りつけるが止める事が出来ないメドゥは聞く耳を持たない。
「クッ!全員メドゥ様をお守りしろ!早くしろ!!」
シュナイダーが切羽詰まった様な口調で近衛に命令を飛ばすも何が起こっているかが解らない部下達は直ぐに行動に起こせない。
「何をしている!?
メドゥ様を消滅させたいのか!?」
追い打ちを掛ける様な命令は最早怒声になっていたが為に慌ててメドゥを囲むように守りの体制に入るが…
「こ…この技は…」
「ば…か…な…」
「完全に消滅した筈…なのに…何故…」
炎の花弁が近衛を襲い切り裂き燃やして行く。
レッドの炎を使用したピンクの技が炸裂したのだ。
「桜花炎舞陣・極」
声がする方向をキッと睨みつけるシュナイダーの視線の先には神々しく優雅な舞を踊るピンクの姿そしてメドゥと生き残った近衛を睨みつけるレッド達の姿。
「やはりアレは魔似マネでしたか…然し、どこをどお見ても、本物にしか見えなかったですがねぇ…」
メドゥもそうであったが、シュナイダーも先程倒したのは本物のヒーロー達だと勘違いした程に魔似マネの精度が高かったといえたが為にシュナイダーには理解不能であった。