第15話 コヨミの悩み
今回はコヨミさんのお話になります。
「さぁ?知らないねぇ」
「そうですか…ありがとうございます」
真智子が勲と行動を共にしていた頃、コヨミはコヨミでレイの事を知っている人を探していた。
繁華街は全滅かぁ( -。-) =3真子ちゃんも知らなかったしこの時間は住宅街に行っても歩いている人も見当たらないから南に下ってみるとしますか…けど、レイが何十年も前に死んでいたのなら…
てか、たかが幽霊の為に何でこんなに必死になっているんだろう…あたし…
自分が何者かも解らない幽霊 レイの本名等を調べる為に奔走するコヨミはフと何故?と考えてしまう。
あの日助けられたから恩返しのつもり?
いや、違う!
記憶を取り戻してスッキリさせた後で成仏させたいから?
それも違う!
じゃぁ、何?何でレイに拘る必要がある?
解らない…何でだろう…
繰り返される自問自答。
「素直じゃないよね…解ってるでしょ?」
焦れったいわねと言いたげに不意に出てくるもう一人の自分。
ウーン・・・解らない・・・
どれだけ考えても解らないものは解らない。
じゃぁ、あたしが言ってあげる!楠コヨミさんは幽霊のレイ君をす「ヤメテ!それ以上言わないで!」
フフ…一目惚れだった癖に。だから和樹から逃げ回っていたんでしょ?幽霊に恋したなんて口が避けても言えないし、何よりも少しでも長く一緒にいたいからこんな面倒な事をやると言い出した!この世をさ迷う幽霊なんて成仏させてさっさと輪廻の輪に還してあげた方が本人の為なのに。
否定したい事実を無慈悲に告げるもう一人の自分の言葉に両手で耳を塞ぎ激しく頭を振る。
そんな事は解ってる!解ってるのよ!けど!
けど?何?
言いたい事は解っていると言いたげな表情で、もう一人のあたしがあたしを直視する。
魂が同じでも生まれ変わってしまえばそれは間違いなく別人よ!レイではない!!
あたしが…
言いかけて本当の気持ちに気付いたあたしは言葉に詰まってしまう。そんなあたしをもう一人のあたしが面白くなさそうにあたしを見て深いため息を吐いた後で入れ込み過ぎると火傷するよと言い残して消える。
火傷どころじゃない!それは貴女も知ってるでしょ!
心の中で絶叫に近い叫び声上げるあたしにもう一人のあたしの蔑んだ様な笑い声が響き渡る。
あたしはあたしの出来ることをやる!ただそれだけよ!
必ずレイの過去を探しだしてみせる!
意を決して工場地帯が在る南側へと向かう事にしたのであった。
車を持たないあたしの移動手段はタクシーかバスか鉄道になるのだけど、今回はまだ時間も有ると云うことでバスで向かう事にする。
何故車を持たないかと言うと、車は便利な反面、交通事故の素であたしが運転するととんでもない事になると思い込んでいるからであって他に理由は無い。
駅からバスに乗って約30分で工場地帯へと来れるのだけど、どおもこの辺は好きになれない。
と言うのも破王社と云う名の解体屋が在るのだけど、この会社の直ぐ近くに有名になり損なった武将の胴塚が在って、その胴塚を中心に半径2Km圏内は特殊な空間になっているからなの。
霊感が強い人なら特に感じると思うのだけど、何と云うか空気が重いのね。
その範囲の中に雨土山も含まれていて、麓には大きな霊園が存在するのだけど、霊園には一体の幽霊も存在していない。
あれだけ大きな霊園なら軽く100体を越える無害な幽霊が墓の側で眠りこけていたり霊園内をさ迷っていそうなものなのだけど、全く居ないの。
幽霊の存在を否定するかの様な空間に不気味さを感じるが為に余程で無い限り近寄らない様にしているのが本当の理由なのだけどね。
工場地帯で寄るべき場所はコンビニや霊園を管理しているお寺さん。
レイの過去に繋がる話が聞けたら良いのだけど、果たしてどおなる事やら。
「初代濱田社長の若い頃に似ているけど、別人の様な気もするし…ウーン…」
コンビニでは有力な話が訊けなかったけど、お寺さんで訊いた話では、レイは破王社の初代社長に似ているとの事。
そのまま破王社に行って話を訊きたかったのだけど、初代社長は15年前に脳梗塞て他界しているとの事で現在は3代目社長義明氏が切り盛りしていて、息子で2代目社長の彰氏は会長職に収まってはいるものの、現在は肺の病気で入退院を繰り返している為に誰とも会わないとの事。
破王社ってのは、約50年前に初代社長の濱田壊と云う人物が興した解体屋でスピーディーで安全な仕事ぶり、そして何よりも低価格で瞬く間にこの街の最大手にのしあがった会社。
然も、壊すだけではなく、廃材のリサイクルや建設にも携わっているとあって大勢の従業員を抱えていて、現在は関東に2社北陸と関西と東北ににそれぞれ1社の支社を持つ大会社へと育っている。
まぁ、濱田壊なる人物の詳細は後で調べる事にしましょう。有名人らしいからそう時間は掛からないよね?
さて、今頃レイはどおしているかな?やっぱり連れて来るべきだったかしら?一抹の寂しさを抱えながらも当面のターゲットを濱田壊に絞ったあたしは部屋に戻る事にしたのであった。