第149話 村岡再び
「では、早速行くとするか
ローラと真智子も着いてくるが良い」
一瞬で俺の背後に回り込んだ魔王は再び俺の首根っこをムンズと掴みズルズルと引き摺って料亭を出て行く。
「だぁ〜かぁ〜らぁ〜
俺は荷物でもキャリーケースでもねぇって言ってんだろ!!」
そんな事をしなくても着いていくから離せと涙目になりながら激しく抗議するも
「煩い手荷物だなぁ」
と、言いながら俺に妖気を流し込んで来た。
その妖気で抵抗も喋る事も出来なくなった俺は完全に魔王のなすがままになってしまったのであった。
話はレイが夢を見る少し前に戻る
此処は…
長い眠りに着いていた男が目覚めた場所は西洋風の部屋の中央に設置されているベッドの上。
「やっと目覚めたか」
部屋の片隅に設置されている椅子に腰掛けていた男がヤレヤレと言った表情で目覚めたばかりの男に近寄ると起きたばかりの男が少し怯えた様な表情になり誰だと呟く。
「??お前…記憶が無くなっているのか?」
起きたばかりの男の態度がおかしかったのでその事を突っ込んでみると
「すまない…少しばかり混乱していたようだ…
で?此処は何処だよ…是流」
漸く思い出したのか男の名を呼ぶ起きたばかりの男
この男の名は
村岡隆也
嘗て浦川学園をカオス状態に陥れた男だ。
「此処は地獄の俺の邸宅だ
本来ならお前はこれから人間界で行った悪事の罰を受けなければならない」
本来なら?
地獄へ行く事は解りきった事だったので取り敢えず目覚めるまで待っていてくれたのかと思ったのだが、本来と言う言葉に引っかかりを覚えてしまいその事を問い質してみると
「あの男が魔界へ行ったらしい
もっと強くなるぞ?」
挑発する様な表情で村岡に問い掛ける是流にあの男とは、あの時黒尾と戦っていた幽霊の事か?と返すとそうだと返って来たのだから困惑する。
「強くなったアイツと戦ってみたいと思わないか?って事だよ」
困惑する村岡を更に挑発する是流にそんな事が出来るのか?と問い質す村岡に
「お前が悪魔化し、我等の仲間になれば可能だ」
と、当然の事の様に言い放つ是流に断るとどおなる?と問い質す。
解りきった答えだが訊かずにいられなかった村岡に
「無間地獄へ落ちてもらい、最終的には完全なる無になって貰う」
と、脅すように言い渡す是流。
選択肢があってないこの誘惑に悪魔は怖いと思いながらもレイと戦ってみたい気持ちも無きにしもあらずの村岡の返事は?
………
……
魔界時間で二ヶ月後
「負ける事!それ即ち消滅を意味する…消えたく無ければ全力で来い!!」
「ゼッテー負けねぇ!!」
魔王の専用空間で尋常ではない時を過ごし、魂を昇華させる為の試練を経て辿り着いた高み。
高みに辿り着いた事により与えられた魔王への挑戦権。
挑戦権を得たとは言え、いきなり全力で相手をしてもらった訳ではなく手始めに30%の強さから始め50%70%と力を増し、漸く90%の強さまで引き出す事に成功したのだが、魔王の強さは異常過ぎた。
先ず、妖力の上限が半端なく高い為に術の威力がトンでもなく、それに付け加えて肉体強度も相当強いが為に肉弾戦も敵わない状態だったのだ。
苦戦しながらも辿り着いた魔王90%に対峙するレイは冷静に魔王の攻撃を見極めながら反撃を試みる。
「甘い!」
魔王の右ストーレートにカウンターを合わせたのだが、更にカウンターを合わせて来た魔王に対して冷静に対処し、更にカウンターを合わせる俺。
ボクシングで言うトリプルクロスカウンターの形になったのだが、当たる瞬間、間一髪脱出する魔王と俺。
「凄い…何処まで強くなるの?」
俺と魔王の戦闘を目を丸くして見守っていたコヨミがボソリと呟くと、同意する様に超獄丸が見学している暇は有りませんよと言わんばかりに仕掛けて来る。
現在、魔王の空間には超獄丸とヒーロー達そして俺達家族が居て、其々修行をしている状況だ。
そんな中…
「悪いが中断だ!
全員城へ帰還せよ!」
炎の術を繰り出そうとしていたのだが、突如術を解除したかと思ったら説明も無しに帰還命令を発する魔王のただならぬ雰囲気に何かを察したのか緊張した面持ちの超獄丸達は一斉に姿を消す。
「お前達はこの場で修行を続行させよ!」
と、言い残し魔王城へと向かう魔王達をボーゼンと見送る事しか出来なかったレイ達は魔王の空間で修行を続行させる事にしたのだが、魔界側に何かあったのは解り切っていたので気になったのだが此処は隔離空間であるが為に何も出来ない。
然し、それは以前のレイならの話だ
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
隔離空間に魔王達が居なくなり暫くした後、家族揃って座禅を組み瞑想を始める。
この瞑想はただの瞑想ではない。
レイが隔離空間からアンテナを飛ばして魔王城へ向かわせた。そのアンテナの映像を共有するためだ。
何故そんな事が出来るかと言うと、魔王の残滓を辿ったに過ぎないが、此処は隔離空間でありそもそも空間跳躍の能力が無ければ分身体どころかアンテナさえもこの空間から抜け出せる事は出来ないのだ。
では、幾ら残滓を辿ったからと言って隔離空間からアンテナを飛ばす事が出来たのかと言うと…
レイの魂レベルが神のレベルに到達しているからに過ぎない。
何故そこまでしなければならなかったのかは今は伏せるが、そうしなければならない理由がそこにあったのだ。
「アイツは…この状況って…」
アンテナの映像を視ていたレイがボソリと呟く。
レイ達が視た内容とは…