148話 全ては
・・・・・・魔王め・・・出しゃばりやがって・・・
どおしたよ
呪いが解呪された・・・
マジか・・・
どおするよ
そんなに心配することじゃねぇよ…マイペースで行こう
オイ!!
………
……
「それじゃぁ真智子は何者なんだ?」
先程の夢で見ていた事を考えるなら、答えは簡単に出ている筈なのだが訊かずにはいられなかった。
「お主の魂は100%中の60%しか回収出来ていなかった…と言う事は?」
敢えて答えを言わずにはぐらかす様に述べる魔王にこういった所は相変わらずなんだなぁズルいなぁと思いながらも別の魂ではないかと思いたかったレイに魔王が
「あの時回収出来なかった40%と昌子を使った転生体だ
拒絶反応も無しに融合なんて有り得る筈がないだろう」
話はこうだ
あの日、達人が殺される現場を手を出すことなく見守っていた昌子とヒーロー達は壊と強欲が消えるのを待って達人の魂の残りを集め、楓夏の空間にて昌子と融合出来なかった残りの魂を融合し転生の儀を行った。
この時、楓夏の転生の儀が魔王の転生の儀より早かった為に真智子達が和樹より遅く生まれた変わったのだと言う。
「まぁ、昌子は消えてしまったが生まれ変わりがシッカリお主を守っていたのだよ」
ウンウンと満足そうに頷く魔王に対して
「殺されるのが解っていて何で止めなかったんだよ!?生きてやりたい事が沢山あったんだぞ!
俺の人生返せよ!」
と、噛み付くレイに挑発する様な表情で
「返せるわきゃね〜だろぉ〜がぁ〜!
貴様があの場で死ぬのは予定されていた事なんだよ!」
と、言い放ったので怒り爆発のレイであったが、予定されていた事だった事を知って何でだ?どおしてだ?と魔王に対して更に詰め寄る。
「じゃあ、あの日あの場所で殺される為だけに生かされていたって事か?」
「理解できたか?」
「そんなのって…」
ない…
落ち込む俺に事のあらましを説明する魔王の言葉なんぞ頭に入って来なかったが、匠自動車の面々の掌の上(正確には魔王の掌の上)で踊らされていた事は理解していた。
………
……
「そんな事があったなんて…」
衝撃の事実に戸惑うばかりのコヨミとゆう子であったが、天音だけはニッコリ笑顔で楓夏の腕に甘える様に抱きついて
「天音は覚えていたよ?
ねぇ…楓夏おばあちゃん♥」
と、言い放ったのでその場にいた全員を驚かせた。
「こ…コレ…それは言わない約束じゃぞ」
困惑する楓夏。
恐らくはその表情自体初めての事で驚いたのと同時に珍しいものを見た的な感じになり微妙な空気が辺りを包む。
然し、コヨミだけは天音の態度に引っかかりを覚えたのか
「じゃあ、あたしとゆう子と天音は前世の家族でレイが旦那だったって事?
…って事は生まれてこなかった赤ちゃんが…?」
と、口走ると
「その子供がこのあたし…天音だよ!」
と、サラリと然し力強く言ってのけたのである。
「話を信じるのなら、あたしは真智子の生まれ変わりでゆう子は優奈の生まれ変わりと言う事になるけど、その解釈でOK?」
コヨミが楓夏様に問い掛けるとしぶしぶながら認める。
それで…
コヨミはレイと初遭遇した時の事を思い出していた。
初めてレイと遭遇した時、何故か懐かしい様な愛おしい様な感覚を覚えたのを覚えている。
それまでは和樹と結婚するのも悪くないと思っていたのだが、レイを見た途端、和樹との事はどおでも良くなっていた。
何故、そんな気持ちになったのか解らなかったのだが今聞かされた話で全てが繋がった気がしたのだが1つ疑問が残る。
「それはですね…」
その事は超極丸から説明され、納得せざる負えなかったコヨミであったが…
よりにもよって大切な人の名前を和樹に付けなくても良いじゃないのよ!
と、心の中で叫んだのであった。
………
……
「全ては…あの野郎とクソ妖怪が…」
壊と強欲が諸悪の根源だと断定するレイであったが
「あの人間も被害者だ!」
と、力一杯否定する魔王に
「俺を殺したのは強欲ではなくアイツだよ
その事実は変わらないよ!」
と、レイも力一杯返す。
そう、唆されたからでも不可抗力でもなくレイに対して逆恨みをし、貶めた挙げ句に凶行に及んだのだ。
従ってレイからしたら壊と強欲は同罪であり、復讐の対象者でしかないのだ。
「ではどおする?
あいつ等はお前の経験値を吸収して強くなっていると言うより既に人間では無くなっているのだぞ? 現状のお主が束になっても敵わないぞ?」
挑発するような言い回しでレイの反応を待つ魔王に
「なら、アイツより
アイツより強くなるだけだっての!」
と、言うが実際問題として人間の幽霊のままではコレ以上強くなれないのは火を見るより明らか。
要はカンスト状態なのだ。
その事を指摘されてグウの音も出ないレイに魔王が1つの提案をしてくる。
「・・・乗った・・・」
魔王の提案には乗りたくなかったが、目的の為には手段を選んでいる時間がないらしい事が判明。
迷っている場合ではない覚悟を決めて前へ進むしかない。
怒りの炎を内に宿らせ魔王の提案を受け入れる事にした。