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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第9章 レイの過去
154/218

147話 過去へ9

「この小さな人形が一体2000円かよ…結構するもんだな」


同窓会当日

午前中に雨音入りした達人は風龍神社で身代わり地蔵と言う物を購入していた。

実は同窓会に行くと真智子に言った時、思うところがあったのだろうか風龍神社の身代わり地蔵を必ずや購入しろと半分脅す様に言って来たのだ。

風龍神社の身代わり地蔵は霊験あらたかでカナリ人気がある代物だと言う事だ。

現在で達人には優奈と言う娘がいて、年末にはもう一人生まれて来る予定なので危険場所には行って欲しくないと言うのが本音だと思う。

同窓会はみず乃で18時からと言う事で時間的には余裕が有る。


「久しぶりだなぁ…序に山頂まで行ってみるか」


軽い気持ちで山頂へと向かった達人であったが、山頂へ到着する前にヘトヘトになり、到着する頃には息も絶え絶えになってしまい要石の上で大の字になって寝転がってしまう。


「何か癒やされる…そう言えば此処ってパワースポットだっけか?何時かこの石の謎も解き明かしてみたいものだ」


時刻は正午を少し過ぎたところ。

達人が何で考古学者を目指したかと言うと、雨音の謎そして土地と妖怪の繋がりそして古代文明の真実を調べたいと言う飽くなき探究心が強すぎたせい。勿論、その中には塚の事も含まれている。

それには、考古学者として地位を確立しなければならない。


あと少しで夢に手が届く…もう少しだ…


要石から放出される波動のせいなのか陽気のせいなのか疲れからなのかは解らないが、妙な心地良さに目を閉じるとそのままの状態で居眠りしてしまう。


「ン?少し寝てたのか?

ヤベ…そろそろ行かないと…それにしても疲れが抜けて無いのかな

まだ少し体が重いんだけど…しゃあねぇ〜か」


時間にして30分位だろか、目覚めた達人は若干ではあるが体の重さを感じながら下山し、みず乃へ向かう事にしたのであった。


?「行ったな…」


??「誘導するの大変だったけど無事に任務完了ってところか」


???「でも、何でこんな回りくどことをしなければならないの?ヤツを退治したら良いだけの話しでしょ?」


????「さぁね…文句あるなら直接言ったら?」


???「それこそ無理に決まってんじゃん

それにしてもあの玉子っていったい何だったの?」


?「さぁな…Egg of Beginningと言う名しか知らんよ」


???「始まりの玉子ねぇ…」


??「後は監視するしか出来ないからな

それがあの御方の絶対命令だ」


????「歯痒いね…」


??「まったくだぜ…」


下山する達人を上空から監視する赤・青・黄・桃色のスーツを着込んだ4人の男女は何も出来ない無力感に苛まれたのか、盛大なため息を吐く。



………

……


「どおしてもって言うから来たのに何だよあの態度はよぉ…馬鹿にしやがって!

みず乃の社長に会えたのは良かったけど行くんじゃ無かったな…

てか、あいつ等本当に人間だったのか?

何か変だったな…」


19時過ぎ駅のホームにて

同窓会には30人程の同級生が集結し、其々楽しい

時間を過ごしていた様だったが、何故か達人だけは学生時代にも受けたことのないイジメにあった気分にさせれていた。

然も、達人から話しかけようものなら物凄い形相で睨まれたり声もかけていない同級生からは聞こえる様にイヤミを言われたりしていた。

そんな奴等を嗜める様な素振りもなく他の同級生と話している壊と梓もまた、達人を無視していた。


そんな状態では楽しめる訳もなく開始1時間弱でトイレに行くフリをしてみず乃の社長に挨拶をした後で店を出た後、帰るべく駅まできたのだが


間もなく一番線に電車が到着します

危険ですので白線の後ろへお下がり下さい


達人1人しか居ないホームにアナウンスが電車の到着を告げたその時…


ゴキッ!!


派手な音が響いたと同時に物凄い衝撃が達人の後頭部を襲う。

グシャッと絶望的な音と共に視界が閉ざされ意識が刈り取られる。


何でこおなったのか誰に殺られたのかも一切の思考を一瞬で断たれ倒れる達人を何の感情も無い表情で見下ろす男そして男の中から抜け出て来た黒い人形ひとがた


「呆気な…」


「10kgのハンマーがモロに後頭部を直撃したんだ間違いなく即死だろうよ コイツだけは俺が殺したかったんだよ」


「ホント、人間はヤワだな…そんなもんで死ぬんだからよ…死体の処理は任せておけ」


「オイオイ…食うのは良いけど魂はブッ壊したから食えねぇぞ?」


「やり過ぎだっての…魂ごとが最高に旨いのに…ブツブツ…」


「時間は掛かるだろうけど魂は再生するさ

まぁ、記憶も残ってないだろうから何も出来無いだろうがな」


「ふーん…そんじゃあ、万が一の為に呪いでも掛けておくか」


「それ良いな

序でにコイツを知っている人間からコイツの記憶のみを食っておくってのはどおだ?」


「おぉ…良いなそれ

嘸かし食いごたえがあるだろうな」


「好きにしろ」(食いしん坊め!)



物言わぬ姿となった達人を見下ろし愉快そうに話をするのは

一つは濱田壊

もう一つは黒い人形ひとがた

この人形こそ達人が警戒していた妖怪。

その名は


強欲


妖怪の中でも最強クラスの存在で人間の欲を司る妖怪を従えるとても厄介な存在だ。

二人が達人を殺した犯人であった。


「シッカし…コイツを呼び出すのにはホント苦労したぜ」


「全くだ…眷属の殆どをお前の同級生に化けさせたのだからな…でも、此処までする必要があったのかよ?まぁ、俺としてはコイツの能力を奪えるから良いけどよ」


「コイツは俺の楽しみを邪魔しただけでなく腹違いの兄弟なんだよ そんなヤツの存在を何時までもこの俺様が許しておくと思うか!?食っても良いけど証拠は残すなよ」


「じゃあ、あんな派手な殺し方してんじゃねぇよアチコチ血だらけじゃねぇかよ」


「俺の怒りを表現する為にはこれしか思い付かなかったんだよ」


「お前なぁ…まぁ…コイツの能力を奪えれば何でも良いや」


対象者の死亡…確認…肉体の回収不可能…

身代わり地蔵を依代に壊された魂の回収開始…60%の回収を確認…依代及び自身を隔離空間へ避難…完了…呪いの正体の解析開始…解呪不可能

然し魂の再生に支障にならないと判断…

任務1完了

魂の再生開始を確認…観察を続行

続けて任務2へ移行…

回収出来なかった魂の補填を私の欠片を使用し融合開始…

成功…拒絶反応無し


魂の強化開始…



「・・・?」


「ン?どおした相棒?」


「・・・いや・・・何でもない」(一瞬トンでもない妖気を察知したのだが…気のせいか?)


「早く帰ろうぜ…嵐になるぞ…」


降り始めた雨そして次第に強くなっていく風に嵐を察知した壊は強欲を促し、死体と共に掻き消える様に消えてしまう。

降り始めた雨は暴風と激しい落雷を伴い荒れ狂い三日三晩続いた

雨は降るがこんなに荒れ狂うのは初めての体験で戸惑う住人達は只々混乱するのみであったと言う。


後にこの3日間の嵐は誰からとも言わず「風神様 怒りの三日間」と言われる事となる。



………

……


途中からまさかなとは思っていたけど、ヤッパリ全ての元凶は壊だったのか…それと…あの妖怪…許さん!

全て思い出した…

俺の名は 匠達人 考古学者

30歳の夏に殺された…

そうか…最愛の妻の名を和樹に付けてしまったのか…何てドジなんだ…俺は…


そうだ…真智子は…優奈は…それに、真智子のお腹の中には第二子が居た筈だ!

家族は…どおなったんだ!?


てか、あの日、要石の上でローラを仕込まれたのか…と言うことは最後の声ってローラなのか?

だよな…


ハッ!!


此処で目を覚ました俺は周囲を見回したのだが酒を飲んでいる魔王以外は真智子もローラも眠っている様子。

それから、改めて魔王の顔をマジマジと見つめるレイは夢の事を思い出したのか


「・・・魔王様って・・・工場長・・・?

って・・・事は大嶽さんは超極丸で山野さんは・・・?」


「思い出した様だな

そうだ…お前の母親は楓夏

父親は雲海だ

因みに山野は雲海でもある」


レイにとって衝撃の事実

そして何故こんな事になったのか重い口を開く。


魔王のいいわけを聞く限りでは

曰く

討伐した筈の強欲が復活し人間界で目撃された。

強欲の目的を調べる為に人化の法を使い人間界へ潜り込んで監視をしていたが、雲海だけは何故か人化の法が上手く行かず暫くの間、分身体を使い濱田源次郎を乗っ取ったと言うか依代にして顕現させて楓夏の護衛に着いたのだが、何時の間にか恋仲となり子供を授かる事となった。

まぁ、乗っ取ると言っても全てを掌握してではなく楓夏と接している時のみ出て来る状態にしていたので源次郎も楓夏と付き合っている感覚は有った。

その時の子供が達人…つまりレイだとの事だ。

達人を授かる一ヶ月前に珠代が源次郎に言い寄って来たが、源次郎の方が満更でもなかったが為に雲海は源次郎から離脱したと同時に昌子もまた源次郎と疎遠になる。

「まぁ、浮気をしたのが発覚した源次郎は昌子にぶん殴られていたがな」

同時期に雲海の人化の法が完成した為、各々匠自動車に集結し強欲の動向を探っていたとの事だ。

因みに匠自動車先代社長辰五郎氏と昌子の血縁関係は無く、養子縁組の関係だがそれは別の話。


「まぁ、人間界にも興味があったのでな技術やその他諸々を魔界に取り込めないかと試行錯誤をする目的もあったのだがな」


魔王の話を聴いた達人は納得したと同時に幾つか疑問が湧いたのでその事を問い質す。


その頃


「以上で婆の話は終わりじゃ」


レイが夢で見た過去の記憶の事を話し終えた焔は口を閉ざして消えようとしたのだが


「ちょっと待って下さい!

まだ話は終わってません!

これでは話の6〜7割です!」


と、立ち去ろうとする焔をコヨミが呼び止めるも何の事だと惚ける焔に


「匠自動車と真智子さんや娘さんのその後が語られていません」


と、詰め寄ったのだが無視するかの如く「知らん!」と言うだけ。


「その疑問は私からお話しましょう」


丁寧な口調であるが仕方がないと言ったニュアンスと話をしたくはなかったと言ったニュアンスが伝わって来る。

キッと超極丸が楓夏を睨むと知れっとした表情で「妾は覚えておらぬ」と言い放つものだから呆れた表情で話し始める。


「先ず、匠自動車ですが…坊っちゃん…達人君が死んだ日に倒産と言う形で会社を畳みました

その少し前から整備や修理の依頼を受けていなかったのでトラブルも無かったですよ

で…達人君の家族ですが…」


達人が壊に襲われた同時刻


パキッ!


夕飯の後片付けの為に洗い物をしていた真智子の眼の前で達人愛用のマグカップが何の予兆もなく割れてしまう。


「エッ…?罅割ひびわれも無かった筈なのに何で…まさか…達人に…」


不意に襲う不安と悪寒に達人の安否を案ずる真智子

そしてインターホンの呼び出し音が、部屋中に鳴り響く。

嫌な予感がしたので、応対しようとした優奈を制して真智子が応対すると来訪者は女性の様で宅配便の配達員と名乗った為に無警戒で応対しようとしたのだが


「誰の許可を得て此処にる!

此処は我等のテリトリーぞ!」


突如として聴こえて来る大音声。

声の主は誰でもない山野の声だったのだが、そんな大音声では近所迷惑になるからと玄関を開けて抗議しようとしたところにいきなり背後から羽交い締めされて身動きが取れなくなってしまう。


「詳しい事は後ほどお話し致します

今は大人しくしていて下さい

娘さんは天野さんが保護しているのでご安心を」


声の主は大嶽であった。

天野さんが娘を?

何で?

どおして?

?マークが頭の中でマイムマイムを踊り出す程に混乱した真智子であったが、相手が大嶽とあって大声で叫ぶ訳にはいかない。


ギャァァァ…


何が起きたかのか解らないが、程なく聴こえて来る断末魔の声が事を終えた事を物語る。


「相手は?」


「恐らくはヤツの眷属だ

最初は俺が人間だと舐めていたけど

俺の正体を知ったら逃げ出そうとしたから核を破壊してやった」


「そうですか…では…行きましょう」


この部屋に大嶽が居たことに混乱しているのに、更に外に居た筈の山野がドアも開けずに中に入って来て大嶽と意味不明な事を話をしたかと思ったら周囲の景色が一瞬で変わる。


「此処は…?」


景色が変わった先は茶室であった。


「ママ…」


背後から不安そうな声でしがみつく優奈を落ち着ける様に大丈夫だよと声を掛けていると奥の方から見慣れた男性が3人出て来て


「私は魔王 空 人間名は天野

右側に居るのが 超極丸 人間名は大嶽

左側にいるのが 雲海 人間名は山野だ

此処は魔界の魔王城の1室

急な事で申し訳なかった…

事態が急を要したのでね

手荒な事をした

すまなかった」


と、3人揃って謝罪してきた。

何年も同じ会社で仕事をし、苦楽を共にしてきた3人を見間違える筈もない。何にしても優奈が3人に対して警戒を解いているのが何よりの証拠だ。

然し、天野の口から語られた衝撃の事実に愕然となってしまう。


「嘘よ…達人が…壊に…?」


何故?


理由は解らなくもない。

解らなくもないがそんな理由で犯罪に手を染めるなんて事が信じられなかった。

あまりの事に崩れ落ちる真智子に辛い事実を突き付ける天野。


「申し訳ない…我等ではどおする事も出来なかった…しかし…手は尽くした…でだ…そなた等に2つの選択肢を用意した」


手を尽くしたと言うのは、達人が本当に殺された場合の保険らしきものを掛けていたとの事で、時間は掛かるだろうが復活するとの事だが、肉体は消失しているので幽霊として復活するだろうとの事だ。


此処で真智子と優奈がとれる選択肢は2つ。


1・妖怪として転生し達人の復活を待つ

2・転生の儀をし、人間として生まれ変わり達人が復活するのを待つ。

2を選択した場合、記憶は無いが、達人が復活する場面に遭遇出来るように誘導する事を約束する。

この時点で真智子も優奈も妖怪に目を付けられているので、人間界へ戻っても殺されるだけだとの事。


正直言って悩んだ


最愛の夫は殺され自分も娘も命を狙われている。


こんな理不尽な事って…


言いようもない怒り


だが、子供はどおなる?


「言っておきますが人間のままでは真智子さんと優奈ちゃんの居場所は人間界にも魔界にも有りませんよ」


魔界も空気は存在しているが瘴気も存在しているために人間は生存不可能。こうなってしまえば選択肢は2つしか残されていない。


「ママ…」


優奈が真顔で指2本出して無言で頷く。

この時、優奈は5歳。正直言って巻き込んでしまうのは気が引けたが妖怪に食われるよりはマシだろう。


優奈…生まれて来る筈のだった赤ちゃん…ゴメンね…貴女方の成長する姿を達人と見守っていたかったのに…


真智子は意を決して天野に返事をする。


転生の儀を…

人間へ転生してあの人の幽霊と出会う事にします。


「済まない…守れなかった事を許してくれ」


3人揃って深々と礼をして謝罪する事しか出来無いが後戻り出来無いのだ。


「只今より転生の儀を行う!」


魔王の大号令の下、3人はこの世を去り生まれ変わる為に旅立ったのであった。

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