第145話 過去へ7
「あの男の腕を持って解ったのですが、あの男は間違いなく半妖です。」
「ナント…半妖とな…」
「はい…その正体までは解らなかったのですが、かなりの悪党か強者と考えて良いかと思われます」
「半妖…と言う事は…」
「…あの男の親の何方かに人間に化けた妖怪がいたのでしょう。
舞謙草は人間には効果がありますが妖怪には殆ど効果は無いですからね…
恐らくはあの男の中に流れていた妖怪の血が舞謙草の効果を打ち消していたのでしょう」
「なんと…混血であっただか…で…その弥太郎は何処に?」
………
……
目を閉じればその光景が浮かんできそうな達人の巧みな話術に聴き入るお客さんは妖綺譚の世界へと引き込まれた様だ。
「以上を持ちまして妖綺譚の朗読を終了させて頂きます。長時間のお付き合い誠にありがとうございました」
時間にして2時間弱。最後の挨拶を聴いて現実へと戻されたお客さんから割れんばかりの拍手を貰った達人はテレから全身を真っ赤にさせがらも「ありがとうございます」と返事をして控室へと戻って行った後で明日香が本と風龍神社の御守りの販売準備が出来たので、もし宜しければご購入の方、宜しくお願い致しますと言うと瞬く間に本と御守りは完売となり、検証結果の発表の方もカナリの人気が出ていたらしくオカ研の出し物は大成功に終わったのであった。
この朗読会により達人はその後、街の議員から拝み倒され、2度ほどイベントで妖綺譚の朗読会をしていてこの時期から達人は本格的にタツジン君と呼ばれる様になる。
因みに達人のあだ名を広めたのは言わずもがな真智子であり、達人がそのことを知ったのは卒業式間近であった。
………
……
朗読会かぁ…あったなぁ…そんな事が…
そう言えばあの学園祭の後、急にモテだして何人かに告られたけど、真智子の嫉妬とお仕置きが怖くて断るのに苦労したっけなぁ…
だってよ…アイツ…浮気したらお仕置きよ!とか言って俺に首輪を嵌めてリードで繋いで犬扱いしようとしていたんだぜ?
俺にそっちの趣味はねぇって言うのによぉ…
あっ……だからお仕置きなのか…納得…
徐々に復元されてゆくレイの記憶
今後、どの様な経緯でどお言う結末を迎えるのか
………
……
学園祭が終わり、大学受験の為、オカ研を去った達人は猛勉強を開始。
元々成績が良かったのでそこまで頑張らなくても良いのでは?と周囲の者達を心配させる程の頑張りを見せていた達人であったが…
冬の足音が聴こえてきた11月中旬
「ン?お客さん?」
金曜日の夜で明日は図書館で1日勉強しようかなとか考えながら帰宅した達人は玄関に見慣れない男物の靴が有ったのでお客さんかと思い会わない様に部屋へ直行しようとしたのだが、帰宅に気付いた母に呼ばれて居間へ来いと言われてしまいシブシブ向かうと、そこに居た男から思いもかけない事を言われてしまう。
「なっ…この男が俺の父親だとぉ!?!?!?
てか、父親は死んだって…俺にはそう言っていたよな?全部嘘だったのかよ…答えろよ!母さん!!」
男の名は濱田源次郎と名乗った。
濱田源次郎と言えば濱田建設の社長であり壊の父親だ。そんな人物と母にどんな事が有ったんだ?
此処で濱田夫妻の紹介をしておく。
濱田源次郎
達人と壊の父親
生まれつきの女たらし。
イケメンで性格も悪くない為に女性受けはかなり良かった。
昌子と珠代二人同時に妊娠させ、二人の妊娠発覚後、昌子にフラれ未練を残しながらも珠代と結婚したが、女遊びは収まらなかったらしく、噂ではあるが壊の弟や妹は10人程いるらしい。
濱田珠代
壊の母親
高校時代にミスコンに優勝した程の美人で才色兼備と言われた程。
性格は一途だが、他人の幸せを妬む傾向にあり、自分の幸せの為なら他人を追い落とす事も厭わない性格 旧姓 迫田
源次郎は本気で昌子を愛し真剣に結婚も考えていた。
珠代は昌子と源次郎が付き合っていることが悔しく妬ましく恨めしい。
「私の方が源次郎さんとお似合いなのに…何であんな女と…そうだ!良いこと思い付いちゃった♥」
昌子の幸せな姿を拝むより源次郎を寝取って自分が奥さんの座に収まれば良いと考え行動に出る。
態と危険日を狙って源次郎を誘惑し、強引にホテルへ…
結果として源次郎との子供を宿すことに成功した珠代は源次郎に責任を取れと迫り、断わりきれなくなり昌子と破局し、珠代とゴールインする事となる。
昌子もまた妊娠していたとも知らずに。
「情けない話だけど、学園祭まで昌子さんに子供がいるとは知らなかったんだ…だから…」
切っ掛けは学園祭での朗読会。
あの朗読会で一躍有名人となった達人に興味を示した源次郎は名字が昌子と同じと知って調査会社を使って調べた。
結果として達人が自分と昌子の間に出来た子供の可能性が高い事を知った源次郎はこうして匠自動車を訪ねる事にしたのだ。
「だから何だってんだ?
今更出てきて父親気取り?
巫山戯んじゃねぇよ!?
俺の父親は天野さんや大嶽さん…匠自動車の作業員だよ!テメェが口出す隙なんかねぇんだよ!!それに、俺とテメェが親子関係にあるって証明出来んのか!?」
因みに昌子の血液型はO型で源次郎はA型で達人はO型なので血液型では矛盾していないとは思う。
自責の念から謝罪の弁を述べようとする源次郎に思いの丈をぶちまける達人は更に爆弾を投下する。
「それに、壊とテメェが鮫島を匿ったおかげで制裁出来なかったから学園祭を台無しにされるところだったじゃねぇかよ!何処まで舐めれば気が済むんだあ゛あ゛!?」
達人が投下した爆弾に狼狽える源次郎であったが
「それとこれとは話が別だ
ヤツの生殺与奪権は僕が握っている
従って、君達には手を出させる訳にはいかない!」
と、言ってのけたが
「せめてもの罪滅ぼしの為に此処からの汚れ仕事は僕がやる!いや、させてくれ!」
と、力強く言ってもいた。
源次郎は誠心誠意謝罪して達人に濱田建設を譲るつもりでその話をするつもりだったのであったが、此処まで拗れてと言うかブチギレた達人から思いもよらぬ反撃を食らい鮫島の処分を買って出たが
「ザケンな!
アイツだけは俺がこの手で地獄に落とさないと気が済まねぇんだよ!サッサとヤツを連れてこいや!」
鮫島を連れてこいと譲らない達人に手を出すなと言い張る源次郎の間に妥協点は見つからず平行線を辿る。
「これ以上は埒が明かないから濱田社長は帰ってくれないかな?それと達人坊っちゃんとアンタの血縁関係なんぞ無かったものと諦めてくれ。」
冷却期間を開けて後日話し合おうと天野が強引に話を打ち切ろうとすると、同調した大嶽も天野と一緒になって強引に源次郎を追い出してしまう。
「何で入れたんだよ!
俺は受験生だぞ!?
余計な事しないでくれ!」
源次郎が追い出された後、やり場のない怒りを昌子に向けた後、自室へ閉じ籠もってしまう。
どれだけの時間が経過したのだろう。
本来なら勉強している時間なのだが、帰宅後の出来事がショッキング過ぎて何も出来なくなってしまった達人はベッドに腰を掛け頭を抱えてしまう。
少しして昌子が何も言わずに頭を抱える達人の横に座る。達人のことが心配しての行動なのだが、ここで何を言っても火に油を注ぐだけだと解っているが為に何も言えないのだ。
「何だよ…言いたいことが有るならサッサと言えよ…」
男勝りで例え相手がヤクザだろうが政治家だろうが対等に渡り合う母が何と声を掛けて良いか困っている様子で達人の横に座っているのに苛ついた達人が堪りかねて昌子を軽く睨むと達人の頭をくしゃくしゃと掻きむしった後で言い訳もせずに「悪かった」と言い残して部屋を出ていった。
翌日朝7時
う…ん……
どおやら夕べはそのまま寝てしまった達人は背中に柔らかい2つの膨らみを感じて振り向こうとしたところ、膨らみを持った人物はそのまま達人を抱きしめて
「全て聞いているから…
大丈夫…
私が達人を支えるから…ね…?」
囁く様に言う真智子は今日一日は気分転換に当てようと提案してきたので仕方なく今日1日真智子とデートをすることになったのであった。
………
……
「レイの父親は濱田源次郎であって濱田源次郎ではない」
焔様の話を聞いている途中、一度焔様の話を遮った後で思い出した様に話し出す楓夏様にそれってどう言う事ですか?と突っ込む一同に以下のことを話し出す。
曰く
レイの母親である匠昌子は楓夏様の欠片を人化の法で作り出した人間としての楓夏様の分身であり、濱田源次郎はと言うと雲海様が一時的に濱田源次郎の身体を乗っ取って人間界を楽しみつつ昌子と共に人間としての恋愛を楽しんでいた。
その時に出来たのが達人であったとの事だ。
そう、達人は正真正銘、楓夏様と雲海様の子供と言う事になるのだ。
然し、珠代が雲海様にちょっかいを掛けてきた時点で面倒になり源次郎から離れて匠自動車の従業員として働く事となる。
時期が重なったのは偶然であったとの事だ。
因みに天野太陽は魔王 空
大嶽は超獄丸
雲海は山野俊樹と言う名で働いていたとの事で全員楓夏様と同じ手法で分身を人間として生活させていたとの事。
「何でそんな回りくどい事を」
楓夏様にコヨミが噛み付くがその理由は今は話すことが出来ないと言い放った後で焔様に続きを話すように促す。