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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第9章 レイの過去
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144話 過去へ6

「達人のヤツ上手くやってるかな」


壊されたジオラマの写真を撮りながらボソリと繁が呟くとマジギレしていたから大丈夫だろと正人が返答する。

実のところ、襲撃されるのは想定済みであった達人は事が起きた後の事を4人で相談して決めていたのだ。

プランBとは、出し物が破壊されてしまった場合、迷わず警察へ通報する。

然し、体面を気にする学園側は実力行使をしてでもそれを阻止するに違いない。

それにブチギレた演技をした達人が通報しない代わりに手を貸せ金を出せと譲歩する案を提示すると言うものである。


「上手くやるどころか素でブチギレしてんじゃね?」


真顔で尚人が言うと「それな」と繁と正人がハモらせた所に憮然とした表情で戻って来た3人は「ヤッパリな」と思ったが、それを口にする事は無かった。

何故なら、壊されたジオラマの片付けと代替え案で決まっていた物の製作をしなければならないからだ。

それまでは、パンフレットとジオラマを照らし合わせて学んで貰うと言った方式を取ろうとしていたのだが、それが出来なくなってしまったが為に校内新聞で使う様な大きな紙に書き起こす作業をする事にしたのだ。

幸い、パンフレットの存在までは知られていなかった為に無事だったのが不幸中の幸いと言えよう。

それでも、20件を超える話を書き起こさねばならなく、3人では当日まで間に合わない可能性が高い。

この作業には3名の教師が助っ人に入り製作に当たっていて、邪魔が入らねばギリギリ間に合う感じだが、問題は達人が担当する妖綺譚の方だ。

何せ販売用の本が全冊盗まれてとあって販売は断念せざる負えないと覚悟をしなければならない状況なのだ。

間に合うかどおか微妙だと前述しているが、飽くまでも業者の対応が早く、然も順調に行った場合だ。


印刷屋曰く

「製本が1冊でも残っていたら直ぐにでも対応出来るが、無ければ一週間は猶予が欲しい」


との事。

不幸にもこの街の印刷屋は一軒しか存在しないが為に暇ではなく、寧ろ24時間フル稼働状態なのだ。


製本はと言うと、は全部盗まれているが、実のところオカ研で保管する為に1冊だけ別の場所に保管されている。

それを持って教頭と2年B組担任が印刷屋へと向かったが、それでも当日間に合うかどおかと言うところだ。


「それじゃあ、朗読会をすると言うのはどお?

匠君は声も良いしなかなかイケると思うわよ」


そう言い出したのは美術教師で演劇部顧問の遠藤明日香だ。

この提案には流石に困った達人であったが


「本が間に合わなくても間に合ってもやる価値はあると思うの」


と、言われてしまい、更にその場に居た全員からの後押しもありしぶしぶながら了承し、明日香指導のもと、猛特訓が開始されたのであった。


・・・フン!

あれだけの事をヤラれたんだ。

間に合う訳がねぇ!


そんなオカ研を遠巻きに見ていた男は捨て台詞を吐き捨て様に言うとその場を立ち去る。


………

……


「今の台詞は五平が弥太郎の腕を持ってスットボケルシーンでしょ?もっとスットボケないとだめよ!?やり直し!」


明日香の指導は本格的で厳しく、特訓は深夜に及び、更に人手が足りないからと他の部活の者まで巻き込んで製作をしたが、すんなりとは終わる訳もなく作業は2日連続で深夜になるまで続いた。


学園祭当日午前3時


「おわったぁ〜〜〜!!」


バタッ!


2日連続の徹夜で会場設営まで完璧にやり終えた皆は達成感からその場で倒れ込むように寝てしまったのであった。



当日朝6時過ぎ


「おーい

生きてるかぁ…

起きねぇな…

こんな場所で寝ていたら風邪ひくよ……!!」


ギャア〜〜〜ツメテェ〜〜〜!


家庭持ちの為に最後まで付き合う事が出来なかった市原が5時過ぎに様子を見に来たが、全員寝ているのを見て何か閃いたのか、給湯室へ行き人数分のオシボリを濡らしてそのまま冷蔵庫の冷凍室へ放り込みカチカチに凍らせた状態のオシボリを寝ていた全員へ投下したのだ。

あまりの冷たさにビックリして起きる生徒の姿に笑いながらも


「朝飯用意してあるからシャワー室に行って眠気覚ましてから家庭科室へ来い」


と言って生徒を会場から追い出す。


まぁ、眠気覚ましがアンメルツやアンモニアでなかった事が救いであったと思いたい。


「シッカし…よくも此処まで調べ上げたもんだなぁ…大したもんだ」


出来上がった作品を一通り観た後で市原もまた家庭科室へと向かう。


10時過ぎ


学園祭は朝からお客さんが沢山押しかけて来て校内は大賑わいであった。

そんな中、視聴覚室に押し掛ける沢山の人達。目的は妖綺譚の朗読会に参加するためだ。

朗読会は午前10時半〜と午後2時〜の2部制となっており、参加者は整理券を貰って来場をする方式をとっているが、この時点で整理券は全て吐き出されており、貰えなかった人達から追加は無いのかと詰め寄られて困ってしまったとの事だ。


うっひゃ〜満員御礼じゃねぇかよ…(みず乃の社長に母と工場長と大嶽さんの顔が見える…真智子は…見えねぇな…)


控室から客席をチラ見してお客さんの顔ぶれを確認した達人は姿が見えない真智子は留守番をしているのだろうとしか思わなかったが、少し残念な気持ちになってしまったのと同時に大勢の人達を前に緊張でガチガチになってしまった。


その時…


「股間は縮こまっているくせに身体はガッチガチね…リラックスしよ…タ・ツ・ジ・ン・く・ん」


無防備の背後から抱き付き耳元で囁やき、剰え耳朶を甘噛する人物の行動に瞬間湯沸器の如く全身を真っ赤させる達人であったが、タツジンと言うあだ名が好きではない。


「だぁ〜かぁ〜らぁ〜タツジン言うな!

それから離れろ!

皆興奮してんじゃねぇかよ!

客席戻れよ!」


静かに激しく怒りを顕にする達人を意に介さない様な態度で「一週間もお預けだったから寂しいのよ」と、言いながら艶めかしいボディータッチで徴発したものだから控室はピンク色のオーラが立ち込めてしまう。まぁ、如何に幽霊オタクだと豪語していても、性欲だけは人並みには持ち合わせているから真智子が行った行為に男共が性獣と化しても誰が文句を言えようか。

然し、此処は学園内であり、今は学園祭真っ只中なのだ。

この状況を踏まえて流石にヤバイと思った時


「ハイハイ

妖怪エロノミーは大人しく魔界へ帰る!

帰らないのなら、恥ずかしい姿にして体育館で見世物にしようか?1人千円くらい料金を取ってさ」


そう言って割って入って来たのは明日香だ。

明日香が割って入った事により、ピンク色のオーラは消え不機嫌そうな表情で控室を出ていく真智子に小声で何やら言う明日香に対して射殺さんばかりの視線を送りつつも大人しく客席へと戻って行った。


「不謹慎な状況になったけど、力が抜けていい感じになったじゃない?」


明日香から皮肉たっぷりに言われて気が付いた達人は意を決して会場入りをする。


「本日はお忙しい中おあつまりいただきありがとうございます。

今からお話するのは我がオカルト研究会が長年翻訳をしてきた妖綺譚でございます。

是非とも最後までお付き合い頂ければ幸で御座います」


ついに始まった達人の朗読による妖綺譚の朗読会。

この時点では追加で注文した本は届いておらず、本の販売は絶望視されていたのだが


「と…取り敢えず50冊出来たから持って来た…

残りも今日の夕方には出来る筈だから大丈夫の筈だ」


達人の朗読が中盤に差し掛かった頃、台車に段ボールを積んだ教頭が飛び込んで来たので安堵したのと同時に正人達が販売準備にかかる。


チッ!

アイツ等間に合わせやがった!

クッソつまんね!


その様子を見て苦虫を噛み潰したような表情をした男は何処かへ行ってしまう。



………

……


真智子…この名は…

夢とも現実とも受け取れる場面で全てを思い出しつつあるレイは、強制的に続きを見せられる事となる。

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