138話 魔王城にて2
「コレはコレは
私から漏れ出てる気配でそこまで解るとは
大した御仁だ
然し、ちょっとだけハズレてますね
確かに私は楓夏の父ではあるが正確には雷神ではありません
私の名は天雷
魔王 空の側近であり
雷神代理ですよ」
そう、雷神であった豪雷は人間界での悪さが酷かったが為に遥か昔に仙人と呼ばれる者達に異国の地で討伐封印されてしまっていたのだ。
それ以来、雷神を継ぐ者が現れないが為に先代である天雷が代理を務めているとのことであった。
てか、神様って一種の職業なのか?
天雷様の話を訊いた俺はそんな事を思っていたのだが、家族の反応は意外なものだった。
「チャンスじゃん!」
とか
「アナタなら雷神になれる」
とか
「雷神様の家族になれるなんて」
とか…
脳内お花畑全開で俺を担ごうとする家族を楓夏様が
「あまりレイを困らすではない」
と、嗜める様に言うが爆笑したいのを必死で堪えているのはバレバレだ。そんな中畳み掛けるように真智子が
「有りだと思うけどな」
とボソリと呟く真智子にローラまでもがウンウンと頷いているではないか。
じ…冗談にしては連携凄すぎだし、魔界に来てからますます絆が強まった様な感じがする家族に辟易しながらも
「俺は人間の幽霊だぞ!?神なんかになれる筈がねぇ」
と言ったのだが、その一言に
「「「「「五平殿や千代殿に出来てレイに出来ないことはない!!」」」」」」
と、家族が声を揃えて言った後に
「だ…そうだ
観念せよ」
とドヤ顔で楓夏様が俺を煽りにかかる。
俺を見つめる家族の目が真剣だ…それどころか、レイならやるって言うよね?的なオーラ全開だし冗談半分面白半分で煽っていたんじゃねぇのかよ!?
「てか、何の「ドッキリではないからな レイならなれると思って言っている」
俺が言おうとした言葉を奪う様にドヤ顔で楓夏様が言う。
コイツ等…俺を神輿に担ごうとしてやがったな?然も一連のやり取りを黙って訊いていた天雷様が決まりだなと言い出すものだからヤル気に入ったのか更に煽る家族。
「では決まりだな」
家族全員+楓夏様の了承を得たと思った天雷様が俺を修行の場へと連れて行こうとしたその時
「ならぬ!」
部屋中に響き渡る重く重厚感のある声。
オペラとかで分類される男声でテノール・バリトン・バスとあるが、バスがピッタリと当て嵌まる様な声に魔王側の者達全員が一斉に平伏し、あまりの迫力に固まる家族そして真智子とローラは慌てて俺の中に入ってしまった。
その光景を見て漠然とであったが「あぁ…この声の主が魔王 空なんだろうな」と思ったが何故か恐怖も恐れも感じなかった。
寧ろやっと会えるとすら感じてしまった俺。
いや、憧れていたとか強い者と勝負したいとかの感情は一切なく、例えば小学校の頃に転校で居なくなった仲良しの友人に何十年ぶりに会えると言ったそんな感じに戸惑いすら感じていた。
程なく奥の間から現れたのは見た目男性アイドルグループに所属していると言われても違和感の無い顔をした20歳半ばの筋肉質の男性。
服装もアニメやゲームで見かける様な魔王の様な如何にも的な服装ではなく、何方かと言えばチャラ男的な服装なので見た目はエッ!?この人が本当に魔王なの?と疑いたくなる様な姿をしているが、そんなものは些細なことと言わんばかりの圧倒的な存在感を醸し出している。
周囲を睥睨するのも束の間、俺の背後に回り込み俺の首根っこを掴んで
「行くぞ!」
と一言聞こえたと思ったら唐突に視界が切り替わった。
連れてこられたのは一面灰色のだだっ広い空間。
その空間に料亭らしき立派な建物がポツンと存在しているのみ。
魔王はその料亭へと無言で俺を引きずる様に歩き出す。
………
……
レイを魔王が連れて消えた直後のこと
楓夏「さて…と…超獄丸!」
超獄丸「何でございますでしょうか」
楓夏「お主、何処まで知っておる!?」
超獄丸「はて…?」
楓夏「はて…?ではない!お主全て知っておるな!?」
超獄丸「ふ…ふふ…流石は風神様ですね…風が教えてくれましたか?」
楓夏「風なんぞ関係ないわ!魔王の態度が全てを物語ってるわ!指示していたのは魔王か!?」
超獄丸「違います」
?「その先はこの婆が話そう…」
超獄丸&楓夏「「焔様!?」」
天雷「何故先代が此処に…」
焔「空がアレを使うようなのでな…あの幽霊の生前の事とその家族の事全てをお主らは知らなければならぬのでな」
どおやら楓夏は魔王の態度で全てを察して超獄丸にカマをかけると、先代魔王である焔が乱入してきて事の全てを話す流れになる。
次回からレイの過去編に突入致します