第136話 そして魔王城へ
「・・・あの戦い方って・・・」
「ええ…間違いないかな」
「ン?戦い方が何だって?」
VS氷柱戦を観戦した感想をコヨミと話し合おうとしていたところにレッドが絡んでくる。
楓夏の本来の強さを知らないヒーロー達からした当然の反応なのだが見た感じでも大凡の強さは解かろうとも言うものだが、どおやら属性本位で考えている様子。
「理由はどおであれ、楓夏様は手を抜いていた」
「本気の楓夏様があんな弱い訳ないもの」
「ンな事言ってもあの森の中じゃあ、風属性は使えねぇから強い弱いは関係ねえだろ?」
確かにレッドの言い分は正解だし、俺達もそう思う。
然し、楓夏様は風属性以外に光属性そして炎属性まで使える。その事を知っているのは水面様雲海様そして俺達家族だけだ。
では、何故その事を隠しているかと言うと、単に風神を名乗っているからと言う事もあるのだが術的なレベルは然程強くはないとの理由で使わかないだけなのだ。
けど、風の力が炎の力を増幅させ、炎の力が光の力を増幅させ、最終的にはトンでもない強さを発揮するのを俺達家族は知っている。
その事を知ったのは水面様の世界での修行の時。
一度だけ水面様と楓夏様の模擬戦と言う名のガチバトルを見学させて貰った事があるのだが、神様同士の壮絶なバトルを目の当たりにして茫然自失状態に陥った事を覚えている。
その時の模擬戦は様々なシチュエーションを想定してコロコロとステージが変わって行った。
その中には当然ながら闇属性のステージもあったのだ。
その事を覚えていた俺はレッドにそれを説明しようとしたところに
「余計な事は言うでないぞ!」
と帰還したと同時に大音声で黙らせる楓夏様に対してヤッパリなと言った表情のリリス様ではあったが、天音と一太郎が用意した寿司三昧を前に2人揃って
「「美味そうじゃな!」」
と言って美味そうに寿司に舌鼓を打ったのであった。
………
……
「さて…トンだ邪魔が入ったが先程の続きと行こうではないか。カーバンクルよ出て来い!」
出されていた寿司を食べ終えた後、再びゼロに呼ばれて慌てて出て来るローラであったが、何を思ったのかローラの耳を掴んだと思ったら掻き消える様に消えた。
エッ・・・・・・??
ゼロの行動に驚いたものの、今迄の状況からしてあり得た事だし何か出来るものでもないだろう。
この状況からある程度の推理は出来るが、それは単なる妄想の範疇であると思う。現状で言える事はローラは虹の森に住むカーバンクルとは違う生物ではないのか?と言う事。
実際、虹の森のカーバンクルと触れ合わなければ判らなかったのだが、カーバンクルが保有している力とローラのそれは根本的に違うと言う事だ。
その事をローラに問い質そうとしても真智子や俺と接している時間が長い事と孵化する時に水面様と楓夏様の力を頂いたからだろうと返されてヨシだろう。
「レイはローラの事をどお考えているの?」
考え事をしている俺に真智子が不安気に問い掛ける。
ペット?仲間?相棒?
いや違う
ローラは俺の…いや…俺達の大切な…
家族だ!!
コヨミも真智子も天音もゆう子もローラも誰一人欠けては成り立たない大切な家族の一員だ!ローラが何者でも構わない!
真智子にその事を告げると「そうだよねレイならそう答えると思っていた」とニッコリ笑顔で返事をしてくる。その笑顔に若干の違和感を持ちながらも当たり前だと返したところにゼロとローラが戻って来るが、何を話したのかはゼロもローラも話したがらなかったので解らずじまいだったが、ゼロの表情を見ただけで楓夏様もリリス様も話し合いの結果を察した様子で心做しか蒼ざめた表情をしていたのは気の所為だと思いたい。
「一体何をしたんだよ」
何食わぬ顔で俺の中に戻って来たローラに対して軽く問い詰めようとした俺に「大した話はしていませんので気にしないで下さい」としか返してきたのみであったが、そう言われてしまうと気になるのが人ってもの。
なので、ローラを問い詰めようとしたのだが、真智子が全力で止めて来たので問い詰めるのを止めたよ。
「ハンター共の事についてはお礼を申し上げる。ついては幻獣界をゆっくり見学して行かんか?」
と、ゼロが提案をして来た。
この提案に食い付いたのはコヨミと天音だったので、仕方なく全員で幻獣界ツアーをする事にしたのであった。
………
……
幻獣界は7つのエリアに分かれている。
紹介すると
虹の森 主に風属性の幻獣が住むエリア
惑わしの森 妖精エリア
闇の森 闇属性の幻獣が住むエリア
火焰山 炎属性の幻獣が住むエリア
氷湖 水属性・氷属性の幻獣が住むエリア
灼熱砂漠 幻獣界最大の広さを誇り土属性・光属性の幻獣が住むエリア
ロックマウンテン 草木が生えない不毛の地であるが、無属性の幻獣が住むエリア
まぁ、こんな感じで各エリア属性ごとで棲み分けがキチンと出来ているが幻獣界に住む幻獣達皆仲が良いのは驚きだ。
俺達家族はヒーロー達の案内で幻獣界を回った。
ハンター共を追い払った事が知れ渡っていたおかげと天音と友人関係になっていた幻獣達のおかげでどのエリアでも好意的に受け入れて貰えた。
特に虹の森に行った時にはマルとチーが天音とゆう子に懐いて離れようとしなかったので、虹の森を纏める王と相談した結果、今後、天音にはマル ゆう子にはチーが同行する事になった。
新たなる家族の誕生だ。
因みにコヨミは火焰山に来訪した時に幻獣種 ファイヤーフォックス(火焰狐)に懐かれてしまい、世話をする事になったのだが、このファイヤーフォックスはコヨミが好きすぎるせいかは解らないが俺を恋のライバル的な目で見ている様子。
見た目は小狐まんまなので、コン太と名付けられた。
幻獣界のツアーを終えた俺達は改めて幻獣王と面談したのだが
「お前達家族は今から魔界に赴き魔王に会わねばならん」
俺達を見るなり開口一番そう言い出す幻獣王ゼロ。
どおやら俺達が魔界ツアーへと行っている間に魔王 空と話を付けた模様で俺達には拒否すると言った選択肢は無い。
「魔王城への直通ゲートだ!此処を通れば余計な邪魔をされることはなかろう」
半ば強引に決定され、魔王城へと行くことになった俺達であったが、楓夏様がいるとは言え何もない保証はないので、ヒーロー達からブルーとイエローが付き添う事になった。
何故ブルーとイエローかと言うと、他の三人はハンター共の後始末と幻獣達のケアをしないといけないらしく、後で合流するとの事。
てな訳で全員でゲートを潜った俺達。
そこで待ち受けていたものは…