第135話 2人は仲良し?
「一体何処へ行くつもりじゃ?モタモタしていたらバレてしまうではないか」
真っ暗闇の森の中をズンズンと進むリリスにいらつき口調で訊ねる楓夏にもう少しだから騒ぐでないと返してくる。
此処は幻獣界の南側のエリアに在る闇の森と呼ばれる幻獣界でも闇属性の幻獣達が住まう箇所。
どお言った原理でそうなるか解らないが、闇の森と呼ばれるだけあって昼間でも光は全く差さないし、夕方から夜になる直前くらいの明るいしかなく更に夜になると一寸先は闇がピタリと当て嵌まる様な全く前が見えない状態になる為に闇属性の幻獣や暗闇への耐性がない幻獣以外は近寄らない。
「ヤッパリな
下手な小細工をしよってからに」
闇の森中心部に聳える様に鎮座する巨大な氷柱。
氷柱が発する冷気と光が届かない森の中とあって周囲は氷点下の寒さだ。
「寒いの…」
ボソリと楓夏が呟くとお主まさかの冷え性なのかの?と馬鹿にした様な表情で返して来るものだからムッとした表情でお主には関係ないと返事をしたあと素早く印を結んで叫ぶ
「滅殺風陣!」
然し、陣は発動しなかった。
「バカが…此処は闇の森だと言うのを忘れたか
つまり…こう言う事じゃ!
ヘルフレア!」
闇の森は特殊なフィールドになっていて、炎と光の属性以外の術は通用しないと言うか森自体が吸収してしまう為に楓夏の術は発動しない。
代わりにリリスが放った術は光と炎の混合術ヘルフレア。
超高温の光が氷柱を溶かして行くが
「氷瀑!」
炎すら凍り付くカウンター系の闇氷属性の術の1つを発動させると氷柱の周囲は忽ち氷の壁が幾重にも出来てしまい、タダでさえも氷点下の寒さが更に寒くなる。
恐らくは−100℃は超えていると思われる寒さだ。
「ほぉ、自己防衛機能のみが働くと言うのはおかしな氷柱じゃの」
そんな寒さを意にも介さない2人であったが、僅かではあるが動きに支障が出ている様だ。
仕方がないのおと言った表情のまま顔を見合わせた2人は印を結ばないで叫ぶ
「「ギガフレイム・バースト!!」」
先程のヘルフレアの二段階上級の術だ。
この術はカナリの妖力を必要とし、尚且コントロールが難しく一人では発動出来ない。
リリスが術の発動源となり、楓夏が補助役になったので発動可能となったのである。
本来は此処から風の力をプラスして最上級のテラフレアに持って行きたかった所なのだが、風の力は掻き消されてしまう為にこの術がこの場での最大術なのだ。
先程とは比べ物にならない程の熱と光が周囲を照らし出す同時に氷瀑で出来た壁を一瞬で溶かし、更に氷柱をも溶かし中に居たモノを露出させてしまう。
「コレが本体♡」
氷柱の本体である核を自らの妖気で包み込み、ドヤ顔で楓夏を見るリリスにムッとしながらも何で気がついたと質問するとドヤ顔が更に輪がかかった様な顔で
「ヤツの核は2つ有るのじゃ」
と、言い切る。
妖怪の核は自らの命の危険に晒された時、再起を図るために核の一部を切り離して逃げる事はあっても基本的に一体に1つであり、核を2つ持つ妖怪は10万体に一体と言う程の確率だと言われている。
リリスの話によると、氷柱の核は2つ存在しており1つ(以下A)を自らの世界の最奥へ安置していて、もう一つ(以下B)は自由に行動しているのだが、主導権はAにあり自由に行動しているのでAの命令がない限り、Bは暴力的行為すら出来ないとの事だ。
今回の件は以前の事で楓夏を恨んでいた氷柱AがBを伴って幻獣界へと乗り込んで来て暴れたとの事だ。
で、何故Aが闇の森に潜伏していたかと言うと此処なら邪魔は無いだろうと思いBを操っていたと推測したリリスがBの相手を影分身に任せて捜索に来たのだと言う。
「で?此方を破壊して向こうを破壊したら良いのか?」
核が2つあると知って衝撃を受けた楓夏から当然の様に質問が来たのだが、楓夏より優位に立てたのが余程嬉しかったのか勿体ぶる様な素振りをするが、楓夏が思っていた様に単純では無さそうだ。
………
……
「・・・!!」
唐突に影分身が分身系最強のドッペルゲンガーへと進化したのだから観ていた俺達も氷柱も当然ながら驚いた。
「フン!だからなんだと言うのだ!
今度こそ完膚無きまで叩き潰してやるわ!」
だが、2人のそんな姿にも本体ではないのだからと臆する事なく数種類の攻撃術を展開させ襲う氷柱であったが…
二人の完璧な対応&連携に今度は防戦一方へと変わる氷柱であったが、その表情は心做しか余裕があるのが見て取れる。
「何か奥の手でも隠してやがるのか?」
俺は氷柱の表情に何か引っ掛かるものを感じながら戦況を見つめているとゼロが現状の解説をしてくれた。
「って、事はつまりこう言う事?」
俺は少し前に観たロボットアニメで観たビットを2つ程作り出して
「両方が本体でありながら主導権は片方で
もう片方は自由意志で動いていながらも主導権を持っている方の意思から逃れられないと?」
と、言うと
「まぁ、殆ど正解だと言えるが
何事にも例外ってものがあってだな
その自由意志が仇になる事があるのだ」
と、返して来る。
ゼロの話によると核が2つある場合、普段は主導権を持つ方の命令に持たない方は逆らう事は出来ないのだが、何らかの切っ掛けで持たない方が持つ方の力を大きく上回ってしまう事が有るのだそう。
そうなると、核同士のリンクが途切れてしまい、その反動で持たない方が暴走してしまうとのこと。
それが起こったのが例の事件であった。
「まぁ、主導権を持っている方が消されない限りその個体が消滅することはないから持っている方は新たに核を生み出す事に専念するようになるが、元の状態迄に戻すのに最低でも5千年は必要と言われておる」
レイ「じゃあ、暴走した方は見殺しって事ですか?」
ゼロ「そうだな
暴走した時点で討伐されるか暴れるだけ暴れて力の全てを使い切り自滅するかのどちらかだから「勝手に自滅してんじゃねーよバァーカ!」と言った感じなのだろう」
レイ「でも、見ている限りでは暴走している様には見えませんし、仮に持たない方より持っている方を先に壊された場合はどおなるのですか?」
ゼロ「人間界で原爆…とか言ったかな
アレと同じ…イヤ…アレの何倍もの威力で大爆発と大迷惑な被害を齎しながら消滅する
死なば諸共と言うヤツだ」
レイ「マジッスか…」
ゼロ「嘘を言っても仕方あるまいて」
レイ「じゃあ、どおやって倒すと言うのですか?」
ゼロ「まぁ、観ていれば解る」
言い終えると同時にサッと右手を挙げてそのまま振り下ろすと同時に画面の映像が2つに割れ、片方は戦闘中の三人そしてもう片方には闇の森から脱出した楓夏とリリスの姿が映し出されていた。
良いか コンマ1秒でもタイミングがズレたらそれまでじゃぞ
妖気を溜めながらリリスが楓夏に言うと妾を誰だと思うておると言いたげな表情でリリスを睨み付けながらも妖気を溜める事を怠らない楓夏。
「「エンドレス・コロナ!」」
氷柱AとBをコンマ1秒のズレもなく同時に結界へ閉じ込めると同時に発生する炎の嵐が氷柱を溶かして行く。
炎の嵐と書けばそれ程恐ろしくない術かと思われるかも知れないが、その炎の正体は恒星がから吹きでるあのコロナであり、それが結界内で永遠に続くのである。
「おのれ…おのれぇ〜〜〜〜〜〜!!」
何で核が2つも有るのに気が付いた
とか
この恨み忘れまいぞ
とか怨み節を垂れ流しては熱に対して必死に抵抗していたのだが、許容範囲を超えた熱量には抵抗出来る筈がなくAとB仲良く同時に消えてしまう。
そんな氷柱を見て「一昨日来やがれバァーカ」と2人仲良く中指をおっ立てて下品な笑い声をあげる姿を観ていた俺達は
「メッチャ仲良しジャン!」
と、画面越しであるが一斉にツッコミを入れる事になったのであった。
番外編 不倫の末路のタイトルがシックリきていなかったのと単なる思い付きでエロノミー症候群とタイトル変更とラストのレイと真智子の会話を少し追加致しました。