第132話 虹の森にて1
何が厄介だって言うと、俺達家族が向かった虹の森に侵入したハンターは爬虫類系の妖怪。
奴らはゲリラ戦を得意としていて、更にカメレオンかとツッコミを入れたくなる程に全員が体を保護色で覆い、周囲に溶け込んで行動出来るからだ。
因みに火焔山には水と氷属性で、氷湖には土属性のハンターが入り込んで狩りをしていた。
???
気配は有れど姿はなし。
けど、その気配すら微かなものでハンターの位置を確認するには至らない。
コレでは幾らアンテナを飛ばしても無理だろう。
「魔界に幽霊なんて場違いだな」
「捕まえて食っちまおうぜ」
「まてまて
アイツ等はA級賞金首だぞ!?」
「じゃあ、取っ捕まえて引き渡せば賞金貰えるって事か?」
「トータルバウンティ幾らよ」
「生け捕り限定でザッと2億だ」
「決まりだな!」
「生け捕りが条件だぞ!」
「とは言っても抵抗出来ない程度に痛め付けても良いよな!?」
「それは構わねぇよ」
【ヒャッハー!!!】
ハンター共のリーダーと思わしきヤツが俺達が魔界警察に賞金首として指名手配されていることに気付いて幻獣を狩るより俺達を狩った方が良いと判断した様子で仲間達と共に戦闘態勢へと移行した様で、微かに残っていた気配をも消し去ってしまい何処へ行ったかも解らなくなる。
大丈夫です。
僕が飛ばしたアンテナの映像を共有して下さい。
アンテナを飛ばした後で俺達に念を送るローラ。
おぉ!コイツは良い!
どんな姿をしているまでは解らないけど赤い人形の何かがあちこちで蠢いているのが解る。
これなら戦える!
親指を立て合い無言で頷き散開した俺達を追い掛けるハンター達をローラの指示で誘導する。
天音ちゃんとゆう子さんは東へ!
火喰い鳥の巣になっています。
ご主人様とコヨミさんは西へ!
僕の仲間達の集落が有ります。
解った!
ローラの指示で二手に分かれる俺達だけど、コレってハンター共に幻獣達の居場所を知らせる様なものじゃないのか?その事をツッコんだ俺に対して自信有りげに
大丈夫です!
と、言い切る。火喰い鳥と言えばマルとチーのコンビだけど、他の仲間達が協力してくれるか解らないし俺達の方も同じだ。
然し、そんな俺の不安を他所に
行けば分かります!
と、力強く言い放つものだから従う他なかったよ。
てな訳で俺達は二手に分かれて其々の場所に向かった。
火喰い鳥の巣にて
ハンター共に追われながら辿り着いたゆう子と天音は苦し紛れに分身体を飛ばしてハンター共の足止めを試みるも分身体では何の役にも立たずに消されてしまい、更に差を縮めて来る。
チュィン!
ハンターが銃から放たれた弾丸がゆう子の頬を掠め、血は出ないけどゆう子の頬に一筋の傷が出来る。
あぁ〜もう!あったまにきた!!
意味も解らずハンター共に追われ、更に顔に傷を付けられてブチギレ状態に発展したゆう子が影分身改を飛ばしながら印を結んで急速に霊気を高めるが、それ以上の事は出来なかった。
と、言うのも…
ヒラッ…
ゆう子の眼の前に舞い落ちる大量の漆黒の羽根がまるで結界が張られたかの如く二人を守る様に渦を巻き始めると同時に一グループ4羽で構成された火喰い鳥の集団がハンター目掛けて特攻するのが見えた。
「火喰い鳥か!?クソっ!見事に誘い込まれたって訳か!?」
ハンターが叫び声を上げる。
火喰い鳥は自らのテリトリーに侵入者が出た場合、3〜5羽のグループで侵入者を攻撃する習性がある。この場合、ハンター共は勿論、天音もゆう子も侵入者として扱われて攻撃の対象になる筈なのだが天音が火喰い鳥と親交があったのが幸いした様だ。
程なくアチラコチラで響き渡るハンター共の断末魔の声。
火喰い鳥は視力は然程良くはないが、その代わり赤外線で物を見る事が出来るのと気配や妖気を読むのに特化しているので如何にハンター共が気配を殺して保護色で周囲に溶け込もうがハッキリ認識されてしまい返り討ちにあってしまう可能性があり、最悪は彼等の餌になってしまうのでハンター共も手出しはしないのが暗黙の了解となっているのだが、天音とゆう子にはマルとチーが面識があるのと天音とは親友の様な関係を築いている。
パタタ…
ハンター共の断末魔をBGMに天音とゆう子の肩に舞い降り頬ずりをし、甘える仕草をする一対の火喰い鳥。
マルとチーだ。
「あの程度の奴等なら仲間達が一掃してくれるから大丈夫だよ」
天音の肩に乗るマルの頭を撫でると漸く話し出すマル。
マルの話によると、天音達が幻獣界に出現した時点で存在を確認出来ていたものの、その後をモネが追っていた事とモネが開けた大穴をハンター共が見逃さないだろうとの予想は簡単に出来ていた為に直ぐには会いに行かずに臨戦態勢を整えていたとの事だった。
「俺様1人残して全滅かよ…前から思っていたが、ホント使えん奴等だよな」
数羽の火喰い鳥を捕獲用特殊ネットの中に押し込み引き摺るように現れたハンターは、さて、どおしたものかと思案しだす。
うわっ!脳筋かよ!
てか、思いっきりナルシストなの?
ハンターの姿を見ての第一印象は、モロ体育会系のガチムチ野郎と言った感じで、今までの戦闘で負った傷の跡を隠しもせずに見せびらかす様な姿を見せびらかす様にポージングまでしているじゃないか。
「黙って俺様に捕まっとけや!」
ハンターは捕獲した火喰い鳥が入ったネットを木の枝に括り付け吊るした後、持っていたもう一つのネットをゆう子達に向かって道網のように投げ付けて来る。
気分は漁師?なのかな?
って、そんな事を考えている場合ではない。
ネットは目前に迫って居るのだ。
バサッ
マルとチーが巨大化しながら飛び立ち口から火を放つとネットがボワッと燃え上がり一瞬で燃え尽きてアチッ!と大げさに熱がり数メートル程飛び退くと今度は10cm程の玉を連続で投げ付けて来る。
玉は天音達の3m程手前で爆発したかと思ったらネットが飛び出て来る。
何処までも生け捕りに拘るみたいだけど、傷物にしてしまうと報酬に響くとの理由かららしい。
逃げて!
ネットを見た途端、マルが叫ぶ。どおやらそのネットは特殊な妖気がコーティングされていて一度捕まると抜け出せない仕様になっている模様。
マルの叫びを受けて土瑠壁を発生させ地中へと逃げた天音とゆう子は地中で更に印を結んで
竜巻
千本小刀
天音が作り出した竜巻とゆう子の忍術 千本小刀の合体術を発動させる。
ハンターを中心に発生させた竜巻に千本の小刀が加わり、然も竜巻の効果で内部の空気は急速に奪われて真空状態になりそのまま内部に居ても窒息。脱出しようとするなら千本の小刀が襲い掛かるといった凶悪な術だ。
〜♫
そんな術に捕らえられながらも何処か余裕の表情を浮かべ、まるで我が家に入るかの様に鼻歌混じりで竜巻の中に飛び込んで行く。
竜巻の中で襲い掛かるナイフも竜巻で出来た真空の刃をものともせず出てきたと思ったら気合一発筋肉で突き刺さっているナイフを押し出すと満面の笑みを浮かべて猛然と二人に襲い掛かる。
「アタシに任せて」
ゆう子を庇うようにズイッと前に出る天音を馬鹿にした様な表情で天音に対して肉弾戦を開始する。
交差する拳ぶつかり合う蹴りそして妖気と霊気。
1時間後
「しぶといな…」
「頑張り過ぎは身体に毒よ!?お・じ・い・さ・ん♡」
一度距離を取り肩で息をしながら一息つくハンターに対して余裕綽々の天音は畳み掛ける様におちょくる。
ブチッ!!!
ブチッと本当にブチッと言った音が周囲に木霊する。
天音のおちょくりにブチギレたハンターの姿がみるみる変化していく。
何なの?アレ…?
魚?なのかな?
筋肉隆々だった体は嘘のように萎み、その代わりに妖気が膨れ上がり、同時に身体の表面に鱗やら鰭が出来ている。
半魚人ですね。
二人の肩に乗り、口を揃えて言うマルとチー。
水陸両用の両生類の妖怪で、主に水中戦を得意としているが地上戦もカナリの腕前との事だったが如何せん相手が悪かった。
「ウン♡強くなったね♡」
半魚人を見て目をキラキラさせてやる気十分の天音が半魚人目掛けて突っ込んで行く。