第131話 どおしてこうなった3
「止めんか!二人共!!」
その後、楓夏とリリスの罵り合いは暫く続き、ヒートアップした二人がお互いの胸ぐらを掴み大喧嘩に発展してしまうかと思われたのだが、更に威厳のある声が周囲に木霊すると二人の動きがピタリと泊まる。
ぜ…ゼロ…
恐れ慄く様にリリスが震える声でその名を呟く。
どおやらゼロと呼ばれた人物はリリスを越える人物の様だと言う事は解る。
「全くお主達は
まぁ良い
リリスよその者達を余の下へ連れて参れ」
呆れた様に、然し、絶対的な口調でリリスに命令するゼロと呼ばれた声にちょっと待って下さいよ言いたげな表情のリリスであったが、逆らう事は出来ないのかブツブツと文句を言いつつ俺達を転送陣に捉えて行き
「モネよ。件の輩共は幻獣王ゼロがその身を預かったと山本殿に伝えい!」
と、言い残して陣を発動させる。
「まいったな…下手したら消滅ものだよ…俺…人間界へと行ってモノマネの修行でもするかな…」
一連の騒動を見ている事しか出来なかったモネは山本八郎座衛門に事の顛末を方向すべく幻獣界を去ったのであった。
………
……
「ピラミッドぉ!?」
アフリカ大陸と言えばエジプト
エジプトと言えば砂漠とピラミッド
ではないけど、転送された先に広がった光景は砂漠にピラミッドではなく、手入れの行き届いた西洋風の庭園の奥に巨大なピラミッドが聳えていたのだから驚いたのなんのって。
てか、西洋風の城なら解るけど、何故にピラミッド!?
とか考えていたら
「アレは幻獣王の趣味みたいなもんでなピラミッドは人間界のピラミッド…あの形が好きだからとの事だ。」
と、宣うレッド。
因みに、今解っているこのヒーロー(魔界秘密警察)のことを書くと
レッド 種族名 フェニックス 幻獣
属性 炎 別名 マッドフェニックス
ブルー 種族名 水龍 妖怪
属性 水別名 クレイジーウォーター
イエロー 種族名 黄龍 妖怪
属性 雷 別名 デンジャラスイエロー
ピンク 種族名 桃の花の妖精 幻獣
属性 自然 別名 ヘルピンク
ブラック 種族名 黒麒麟 幻獣
属性 闇 別名 ブラックシャドー
だそうだ。
秘密警察結成前はカナリの問題児だったらしく、それぞれ単体で超獄丸と渡り合える程の猛者で魔界戦争の時も大活躍したとの事だ。
まぁ、魔界では魔界秘密警察として活動しているようだが、人間界ではその名を使うのはどおかと考えていた所、たまたま目に入ったのが戦隊ヒーローもののTV番組だったそうで「コレいけんじゃね?」的なノリでレッドが強引かつ勝手に名付けてしまったとの事。
何て安易な考えなんだと思ったのだけど、コレがコイツらなんだよな。
「ホレ!ゼロを待たせては失礼になるだろうが!」
楓夏様が全員を促すとピラミッドの方から執事服を着た男とメイド服を着た女がやって来てピラミッドへと案内する。
ハァ〜…
ピラミッドの中は別空間となっており、西洋の宮殿を思わせる様な造りになっていて、表現は古いけど御上りさん状態の俺達家族を「はよ行けよ!」的な態度で促すレッドに追い立てられる様に奥へと歩いて行くと巨大な扉の前に到着する。
「入れ」
扉の前に立つと先程の偉そうな声が聞こえて来たかと思ったら音もなく扉が開き入って行くと、其処は玉座の間であり、部屋の奥に設置されている玉座に鎮座する人物。
その人物こそが幻獣王ゼロである。
レイ達の前では人の姿をしているが、その正体は麒麟なのだそう。
幻獣全ては自らの意志で人間の姿と本来の姿を変える事が出来るとの事だ。
「挨拶は要らぬ
そこの幽霊の中に居るカーバンクルよ
出て来い!」
有無を言わせない鋭い声が室内に響き渡る。
は…はい〜
幻獣界へ来てから常に萎縮しまくっていたローラはこの声に跳ねる様にビクッと体を震わせ、慌てた様に俺の中から出て来て幻獣王に対して平伏した
までは良かった
「た…大変です幻獣王様!」
幻獣王が何やらローラに質問しようとしたその時、血相を変え転びかけながら駆け込んで来た一人の若者が風雲急を告げる。
若者は各エリアの情報を集める情報官のトップをやっている者らしく、曰く虹の森・火焔山・氷湖の三箇所に総計100名を超えるハンターの部隊が乱入してきて一斉に幻獣狩りを始めたとの事であった。
「緊急事態だ!当然だがお主らも手伝って貰うぞ!」
先程も書いたけど幻獣界への侵入は容易ではない。では、どおしてこんな事になったかと言うと、犯人はモネだ。
モネが強引に結界を破って入って来たがためにその部分が弱まり、待ってましたと言わんばかりにハンター共が押し寄せて来たのだ。
アイツめ…!!
と、思わない訳でもないが始まったものは仕方がない。
虹の森と訊いてローラがソワソワしているのが解る。
「気になるかい?」
今まで見たことがない程の優しい表情でレッドがローラに話し掛けるとコクンと無言で頷き決意の籠もった目で僕独りでも行きますと言った。
誰が独りで行かせるものかよ!
家族も俺と同じ気持ちだったのか、行こうよと言いたげな目を向けてくるが楓夏様だけはリリス様を睨み付け
「虹の森はレイ達に任せて妾は氷湖に赴こうと思うのじゃがソナタはどおする?リリスよ」
と、言い放ったのだ。
その言葉を訊いたリリス様はチッ!と、舌打ちした後
「お主が行くのなら暴走せぬ様に監視せねばなるまいよ」
と吐き捨てる様に言い放つ。
こうなれば残るは火焔山へ行くメンバーは…
ジー…
皆の視線が必然的にヒーローに集まり
「で…では火焔山には我等が行きましょう」
慌てた様に返事をするレッド。
かくしてハンター共を鎮圧・撃退するべく其々の場所へと赴く事になった一同はゼロが作り出した転送陣にて現場へと直行することになったのであった。
ンでもって冒頭のエピソードへと繋がるのだけど、結論から言うとハンター共は今まで出会ったどの妖怪よりも厄介極まりない存在だった。