第129話 どおしてこうなった1
見付けた!
あぁ〜クソっ!
逃げても無駄なんだよ!大人しく捕まりやがれ!
御主人様…此処は僕に…
あぁ…頼む…
ゆう子!
承知!
此処は魔界の中でも特别保護区と呼ばれている幻獣界。
その幻獣界で俺達家族はヒーローと共に悪妖怪相手に大捕物をしている最中だ。
幻獣界は人間界で言うアフリカ大陸に相当する場所に在り、特殊な結界で幾重にも隔離されており普通なら侵入どころか入国も出来ない区域なのだが、ごく稀に結界を破り侵入しては幻獣を狩って行く不届きな妖怪がいる。
まぁ、人間界で言う密猟者だ。
普通は少人数で侵入して来て事に当たるのだが、何故か今回は大人数で侵入して来て幻獣狩りを始めたのだ。
ンでもって俺達家族はヒーロー達と共同戦線を張り密猟者と戦っている最中だって言うのが現状。
何故こんな事になったかと言うと…
………
……
「アレッ!?コヨミさんは何しているの?」
「ン?あぁ…只今絶賛発病中」
「どおやらアレは不治の病だったようですね」
「一度発病したら暫くは誰の言うことも聞かないからな」
「今頃は涎垂らして萌えるわぁ♡とか言って絶頂してるかな?」
「それ…言うのはコヨミが居ない所だけにしとけよ?」
「解ってますよ」
魂喰との戦いの後、数日経ったある日の昼下り
今日も幽霊屋敷は賑わいを見せていて俺達も大忙しである。
屋上で独りお客を見ていた俺に話し掛けるゆう子に男が二人で入って行ったからと説明したのが今。
「よう!突然だが俺等にも幽霊屋敷を手伝わせてくれよ。報酬は3食付けてくれるだけで良いからよ」
声はするが気配はない。
ホントに貴男は神出鬼没の…♪
レッド!
と…思ったら超獄丸ぅ!?
「態々レッドの声色使って話し掛けてくるなんて性格悪いなぁ…吃驚したぞ!」
何もない空間から姿を表し、まるで羽が舞うかの如くフワリと俺達の前に着地した超獄丸に人…いや…妖怪が悪いと言ってやったけど、何か様子が変だ。
「まぁ、警戒されても厄介ですからね。ドッキリを仕掛けさせて頂きました」
と、悪びれる素振りもなくシレッと言ってのける超獄丸の気配を察知した楓夏様が出現して睨みを効かせたのだが
「貴方方には幻獣の密猟の疑いが掛かっており、魔界警察から逮捕状が出ております
言い分は魔界にてお聴きしますので、大人しく出頭して頂きたのです。」
と、俺達に逮捕状を突き付け言って来た。
ハァァァ〜〜〜〜〜〜!?!?!?
突然の出来事に混乱する俺達を庇う様にそれを貴様が行使する権利は無いと言い張り逮捕を断固拒否したのだが、原因であるローラが俺の中に居る以上こうなっても仕方がないってところか?肝心のローラは超獄丸を怖がって奥の奥へと引っ込んで出て来ないし…ナンテコッタイ…マッタクよぉ…
「お前は誰だ!?」
そこに現れたのはブルーとイエロー。その背後にはレッドとピンクに捕まっているコヨミと天音。
ブルーの声には明らかに怒気が混じっている。
何だぁ?ブルーは何を言っているのだ?
混乱する俺達を無視して再び問い掛けるブルーに何を言っているのか解らない様子の超獄丸に、これまた突如として出現したブラックに真っ二つされてしまう。
「あれしきの攻撃を躱せないヤツが超獄丸な筈がねぇだろ!なぁ…妖怪モノマネ師モネさんよ!」
ブラックに真っ二つにされた超獄丸にブルーがその正体について叫ぶが、大したダメージにならなかったのか斬られた身体を貼り合わせ傷口を再生させながら
「・・・バレバレでしたか…然し、逮捕状は紛れもなく本物ですよ?此処は大人しく身柄を引き渡した方が身のためかと思いますが?」
と言うと、指をパチンと鳴らすと途端にレイ達を取り囲む様に妖怪達が現れる。
「なるほど・・・山本八郎座右衛門の手の者か」
妖怪達を見渡しレッドが呟いた途端に景色が揺らぎ意識も刈り取られる。
「・・・逃げられましたか…然し…」
追え!
レイ達が消えた空間の残滓を睨み付け部下である妖怪達に指示をするモネもまた、魔界へと帰還するのであった。
………
……
此処は…?
どれだけの時間が経過したのか解らないが気が付くと鬱蒼とした森の中に居た。
「あ…アレッ!?」
眼前に広がる光景に困惑するヒーロー達。
どおやら予定していた場所とは別の場所に出た様子。
「此処って惑わしの森なのか?」
何で?と言いたげなイエローに周囲を見渡しながら俺にも理由は解らんと宣うレッド。
此処は幻獣界でも厄介な場所「惑わしの森」妖精達の住処だ。
妖精と言っても可愛らしい妖精だけではなく、木の妖精から花の妖精までと様々な姿をした妖精が其処此処に居るのだが、この森に住む妖精は悪戯好きで侵入者には強力な幻覚の術をかけて惑わし底なし沼や砂漠へ放り出したりとやりたい放題して来るのだ。
幻獣であるレッドとブラックはこの森の恐ろしさを知っているが、ブルーとイエローと俺達は知らない。
知らないからこそ俺はレッドにこんな所に連れて来て何してくれてんだよ!と詰め寄ったのだが、逆に「後で必ず説明するから今は騒ぐんじゃねぇ」と凄まれてしまう。
急展開に置いてけぼり感ハンパないのですが?それでも黙っていろとはこれ如何にとは思ったのだけど、それ以上なにも言えなくなってしまった。
言えなかったとしか言い様がない。
俺達に向けられた強烈な殺気が辺りに充満していたのだ。
ヒーローや楓夏様もいるとは言え、いやぁ〜な予感が背中を駆け抜ける。
出来るだけ戦闘は避けたいぞと思っていた所、地の底から湧き出るような声で「見付けた」とか「捕まえろ」とか聴こえて来たと同時にワラワラて感じで殺気立った妖精達に逃げ場を塞がれてしまった。
「ようこそ迷いの森へ…犯罪者共!」
リーダーと見られる女性型の妖精が丁寧な口調だが怒りの籠もった口調で叫ぶ。
犯罪者?
はぁ?
この妖精は確かに俺達の事を犯罪者と呼んだよな?俺はもとより俺達家族も更にヒーロー達に至っては犯罪者になりようがない。なので俺の返答は
「罪状もなにも言わず初対面のヤツに向かって犯罪者とはこれ如何に!説明を求む!もし説明無き場合はそれ相応の対処させて頂くが宜しいか!?」
と言ってやったら右手を真上に上げ「白々しい…逮捕せよ!」と言って振り下ろそうとする。
「ヤメイ!!!」
リーダーの右手が斜め45度まで振り下ろされた時、森全体に威厳のある声が響き渡る。