第121話 秀一と優香と幽霊屋敷3
「だ・か・ら・やり過ぎない様にって言ったじゃないですか!!」
万が一を考慮して監視カメラで監視していた月光と新月が慌てて出てきて俺達に文句を言いながらも、二人をスタッフルームへと運んで行く。
俺達も悪ノリしたのは確かだけど、あれで気絶するとは思いもよらなかったんだよ。
ほんのチョッピリ反省をしてスタッフルームへと移動した。
なにはともあれコイツ等が最後で良かったよ。
「で?何でこんな「あぁ…この二人は俺と真智子の知り合いだよ。後は俺達に任せてくれないかな?」
困惑した表情で文句を言いかける月光の台詞を奪う様に事の説明をした後で、スタッフを部屋から追い出して二人が目を覚ます迄の間、皆と軽く打ち合わせをした。
………此処は……??
やはりと言うか何と言うか、先に目を覚ましたのは優香の方だ。
既に二人にはゆう子の欠片を仕込んで有るので俺達の姿は見えている筈。なので、普通に話し掛けたのだが…
「だ…誰?もしかして誘拐ですか?」
目を覚まして先に見えたのがコヨミだったせいか犯罪者と間違えられちまったよ…
震える声で問い質そうとする優香に
「チゲぇ〜よブァ〜カ」
と、態と耳元で言ってやると優香のヤツ、ビックリした表情で固まってしまったよ。
今度は気絶しなかった様だな。えらいえらい等と考えていたらコヨミから
「アンタいい加減にしなよ!?」
怒られてモータ…トホホ…
俺に向かってまったくアンタって人は…なんて文句を言うコヨミを制して優香が
「貴方がレイさんですか?」
と、言って来るもんだから思わず”そうだよ”と返事をするといきなり秀一の事で謝罪とお礼の言葉を述べて来たよ。
悪い気はしないけど、改めてそんな事をされるのはこっ恥ずかしい事この上ないのな?俺は俺のやりたい事をやっただけなんだからよ。
何せ、こんな事は馴れてないんだよな。
なので、生きてる事が何よりの恩返しだからヤメてくれと言ってやったよ。
そんなやり取りをした後でコヨミとゆう子と天音を紹介すると、言い辛そうにレイちゃんって方はいらっしゃらないのですか?と、言ってくる。
どおやら、秀一をフォローしていたレイちゃんとやらが気になって仕方がない様子。
そのやり取りを俺の中で見ていた真智子がヤバッて顔をしているよ。
そんな真智子にサッサと出んかい!と蹴飛ばしてやると漸く出て来たよ。
悪い事をしていないのに何でそんなにバツの悪そうな表情をしているんだ?てか、何であの時名前を偽ったんだ?
真智子に違和感を感じつつも、ネタバラシをした後で優香の反応を待つ事にする。
「その節はありがとうございました。2〜3程質問なのですが宜しいでしょうか?」
真剣な面持ちで真智子に質問をぶつける優香。
内容は、言わずもがな秀一の事。
バレては仕方がないと思ったのか、優香の質問に知っている限りの事を答えて行く真智子であったが、最後の質問には返答に困った様子で本当の事を言おうかどおか迷っている様子。
「誓って言うけど、あの子に対して私は何もしていないし、どおしてあんな事になったのか解らないと言うのが本音だから、推測でしか話せないけど良い?」
あの一件の時に真智子が秀一の中に欠片を残していたのは解っている。
恐らくは、ファーストコンタクトの時に入れたのだろう。
目的は、守護霊だけでは心許ないと判断しからこそ、欠片を残した。
それだけだと思っていたし、何かやったとも思えないのだが…
「先程あの子を視たときに解ったのだけど、あの子の中に入れた筈の私の欠片は跡形もなく消えていたの…何故そんな事になったのかは原因が解らない」
そう言えば、秀一の中に真智子の欠片は無かったな。俺は加害者側のお仕置きが終わったから回収したものと判断していたのだが、実の所そうではなかった様だ。
まぁ、ヤられていた事がアレなので男の部分がぶっ壊れたなのかもな。
左之助を見ると、拙者は何もして居らぬと言わんばかりに首を横に振るのみなので、別の要因が働いたとしか思えない。
此処からは楓夏様の推測になるのだが、真智子と秀一の魂の波動がかなり似ているために秀一の魂が真智子の欠片を取り込んでしまった。それ故に元々女性の色が強かった秀一は魂レベルで女性化してしまったのだろうとの事だ。
まぁ、推測なので、何とも言えないが母親に祓われたって可能性が残って居るのだがそれはないと断言する真智子。
祓われそうになったら解るし、祓い屋の仕事であっちこっち飛び回っているせいで、秀一の世話は優香に任せていたとの事。
まぁ、そんな状態じゃあ、祓うところではないよな…じゃあ、本当に…?
恐らくは虐めと霊的な攻撃に遭い秀一の魂の男の部分が欠損したのだろう。それを補う様に真智子の欠片を吸収した…と…?
そんな事が有り得るのかと疑問に感じたのだが、秀一の魂が完全に女になっているので完全に女性化したのだろうな。
そう考えざる負えんな
それが俺達が達した結論であったが、問題は優香の方。
数種類のパーツが絡み合って1つの形態を成す魂には、当然ながら男女のパーツや性格のパーツが組み込まれていて、どの部分が表に出るかで普段の自分が形成されている。
当然ながら、優香の魂は女性のパーツが強く男性のパーツはどのパーツよりも小さくて弱い。
そんな状態で秀一の為だけに男を演じようなんて無理があるのは自明の理であり、下手をしたら精神的に壊れてしまいかねない。
その事を説明して今からでも遅くはないから優香として秀一と付き合ったらどおかと説得を試みたのだが、本人の意志はダイヤより硬く、それを拒否。
「これは秀一への贖罪と私なりの誠意でもあるし、何にしても女同士は私のプライドが許さないから!」
・・・だとさ・・・
まぁ、今ではこう言ったカップルも少なからず存在しているのだろうし、何かあったら真子さんに助けて貰えば良いのかなと考えて諦めることにしたのであった。
でも、贖罪と誠意とか言っているけど、本当にそれだけなのか?疑問に思った俺は更に突っ込んでみるとこんな事を言い出した。
「香菜には夢があるから、俺はソレを応援したい」
で?その夢とやらは何ぞや?と尋ねてみたら、漫画の原作者になることだってよ。
それを聞いて、顔を見合わせる俺達。
そんな俺達の反応を見てなんか文句でもあるのですか!?と食って掛かる優香にコヨミが
「秀一君…もとい、香菜ちゃんの原作って幾つかあるの?」
と訊いたら本人が見せたがらないから解らないけど、幾つか書いているみたいですよとの事だったので、コヨミと真智子が文身体を飛ばして見に行ったよ。
何もそこまでしなくても俊也の奴に会わせりゃ良いだけの話じゃね?と思うのだが、二人共俊也の絵のファンになっているみたいだな。
てか、人の物を盗み見るなんて悪趣味も程があんぞ!と思うのだが?
「それよかよ…」
その時、何気に閃いた事を皆に話して意見を聞いたら全員乗り気。そこまでしなくてもと困惑する優を説き伏せて準備に取り掛かることにした。
………
……
「あ…あの…本当にやるのですか?」
困惑を通り越してパニック状態に陥っている優に楓夏様が
「もしヤらなければこの者は永遠に目覚めないぞよ?」
と、真顔で言うものだから怯えながらやりますとの返事。
てか、楓夏様よぉ…いくらなんでもやり過ぎじゃねぇか?そう思っていたら、俺の思考を読んだのか言い出しっぺが何を今更的な表情で睨んで来たよ。
ヤッパこぇ〜〜…
この状況下で1番乗り気だったのは…コヨミしかいないわなぁ…
異性装には…とか言っていたけどノリノリだってのはバレバレだっての。
まあ、秀一に対面するのは俺ではなく真智子の方が良いと思うので、真智子と入れ替わる事にした。
こうして準備を整えた俺達は秀一もとい香菜を起こす事にしたのであった。
………
……
う…ん…此処は………?
気が付くとアタシは見知らぬ部屋の中に設置されているソファーの上で目が覚めた。
周囲を見渡すと、8畳程の広さの部屋にメイク道具が並んだドレッサーや様々な衣装やマスクとかが所狭しと並んでいるが誰も居ない。
どおやら此処はスタッフルームと判断出来るけど何でこんな場所で寝ていたのか解らないので、何があったかを思い出してみる。
・・・(思い出し中)
確か幽霊に囲まれて気が遠くなって…それで此処に運び込まれたのかな。
でも、何で独りなんだろう。
取り敢えず、ソファーに座り直してポーチからスマホを取り出そうとしているとガチャリとドアが開きセーラー服・メイド服・巫女さんの衣装を着込んだ3人の女性じゃなく女性形の人形が入って来た。
やっぱりどこからどお見ても人形よね?最近の人形は自動で動くの?スムーズに動くし良く出来てるよね。てか、サイボーグとかじゃあないよね?
みたいなことを考えていたら大きな箱を押しながら執事服を着た男性形の人形が入って来た。
大きな箱はプレゼントボックスみたいな形をしていてアタシより少し大きめの高さが有る。
執事服さんが台車から離れると、セーラー服ちゃんとメイド服ちゃんがアタシの腕を抱えてプレゼントボックスの前に連れて行くと、アタシの腕を抱えていた2人がプレゼントボックスに付いているストッパーを外して正面の板を外す。
そこから出てきたのは。
エッ!?ま…優?
そこから出て来たのは白のタキシードを着込んだ優が入っていた。
元が良いせいもあるのかだけど、イケメンだし、何にしてもステキとしか言い様がない姿に驚いていると、箱の中から出て来た優が
「ぼ…僕のお嫁さんになって欲しい…改めて結婚を前提に付き合って下さい!!」
と言って身体を90度に折り曲げ右手を差し出して来たものだから戸惑ってしまいました。
アタシがこんなになってしまったから責任を感じたから男になるって言い出したと思っていたし、飽きたら女性に戻ると思っていたのよ。
今、優がやっているのは今後一切女性に戻らないと宣言しているのと同然。
然も、緊張のあまりか俺ではなくて僕になってるし…
でも、何でこのタイミングなの?それにこの動く人形は何?
何か混乱して来た…
然し、目の前で起きている言は紛れもない現実なのよね。
この時アタシは優の申込みに対してどおリアクションして良いのか解らずパニックを起こしてしまいました。