第 115話 広がる行動範囲
「儂と結婚すると言う事は儂の力を継ぐと言う事!悪い話じゃぁないんじゃもん!」
楓夏様の空間に戻って来て土地神様の第一声がコレ
この言葉にコヨミを除くその場にいた全員の目が点になった。まぁ、コヨミは「ストーカー爬虫類の力なんて要らないわよ!」と、ブチギレしていた。
くれるって言っているのて貰っておけば良いのにと思ったのは俺と真智子二人だけのヒミツだ。
緑発様は土地神様の力をコヨミに託して隠居でもしようってのか?
もしそうだとしても、同族に力を託すってなら解るけど相手は人間の幽霊だぞ?
てかコイツ…本気でコヨミに惚れてんな…
射殺さんばかりに睨み付ける俺に気が付いた緑発様は
「オイ!そこの馬の骨!サッサとこの子と別れるんじゃもん!この子を幸せに出来るのは儂だけなんじゃもん!!」
と、一気に捲し立てる
然も、俺の事を馬の骨扱いしやがって…クッソムカつくんですけど!?
って、何処のクソガキ理論だよ!
俺の中で土地神様でもなく緑発様でもなく単なるエロ爺と言う呼び名が定着する。
一応、このエロ爺…もとい土地神 緑発の事を書いておく。
名前 緑発
種族 龍神族
クラス GOD級LV30(雨音の土地神)
年齢 自称 20歳(実は5000歳を越えてる)
属性 土
主な術 隕石
流星雨
緑化
範囲固定
口癖 〜じゃもん
一人称 儂
コヨミが子供の頃に訪れた風龍神社の祭りで見かけて一目惚れをし、以来、ストーカーになるが本人曰く「悪い虫が付かない様に見張っていた」との事。
それと、見た目の年齢は任意で変化出来る様だ
このエロ爺!言うに事欠いて俺を馬の骨だぁ?更にコヨミと別れろだぁ?テメェ!それでも神様かよ!唐突の事で固まってしまっている天音とゆう子。
そして物凄い形相で睨み付ける楓夏様。
こんな中、意外な人物がエロ爺を叱りつける。
「緑発殿いい加減にしなされ!!
略奪婚を企て況してやその夫に罵詈雑言!神界から追放処分されてしまうのが解らないのですか!」
空間内に響く凛とした男性の声。
なんと、言葉を発したのは五平殿だ。
「フン!大昔に体験済みじゃもん!そんなん怖がって何もしないのは進歩ってもんがない!
況してや儂のポリシーが許さないじゃもん!」
仙人スタイルから青年スタイルへと変化しながら反論する緑発様。
てか、緑発様ってもしかしてメッチャ人たらしなんじゃないのか?
神様ってのは、その強大な力を持つが故に例え何があっても人間に力を貸したりしない。
そう、神様とは、見守るだけの存在であり基本的に人間に対しては無慈悲な存在なのだ。
然し、全員がそうではなく楓夏様や雲海様と言った積極的ではないが条件次第で人間に力を貸す者達も少なからずいる。
緑発様もその一柱なのだろう。
そう思い込むにしても、人間に恋をし、剰え俺の嫁を堂々と略奪宣言する神様なんて有り得んと思うのだが?
そういい終えた後、今更ながら五平様と千代様が居る事に気が付いた緑発様は不機嫌そうに「何故お主達がここに居る」と言い出す始末。
二人が居る理由を楓夏様が説明すると全てを察した様な表情をして
「そう言う事なら今後は此処の護りは儂が受け持つから二人は修行に戻るが良い」
と高らかに宣言して五平様と千代様を修行の場へと追い返してしまう。
まぁ、二人が居ては隠していたい事まで暴露されてしまうと思ったのであろう。
マッタク…楓夏様と良い緑発と良い、この地に住み着いた神様はアクが強すぎるぜ…
ホント…
「ところで…土地神様に1つ質問が有るのですが宜しいですか?」
しょ〜もない事で言い争ったり余計な事を考えていても仕方がない。緑発様に対し、どおしても確認したい事があるので丁寧な口調で質問しようと思ったら
「この子を儂の嫁にくれるなら質問に答えてやっても良い」
とか、言ってくるもんだから断ると言ってやろうと思ったのだが
「ほぉ?どの面下げて妾の従者に手を出そうと言うのじゃ?
のう!?地龍 緑発よ!
どおしてもと言うのならば、妾が相手をするがどおするのじゃ?」
と…怒りを通り越して全ての感情を無くした表情の楓夏様が口を挟んで来る。
従者になった覚えはないのだが、この神様には一生頭が上がらないと思える程の迫力と冷徹さを纏わせた一言に流石の緑発様も引き下がるしか手は無かったのであった。
てか、今の言い回しなら俺達は楓夏様の眷属って事になるのだが?何時の間に?
とか考えていたら「緑発様と楓夏様って過去に何かあったのかしらね」と、真智子が不思議そうな表示で問い掛けて来る。
そう言われてもなぁ…妖綺譚にはそんな記述は一切残っていないし…その事を知ってそうな人物は既に修行の場へと戻って行ってしまったからなぁ…
なので、俺はただ一言「解らない」と言った後、黙り込んでしまった。
因みに、この事の真相は誰も口を割らなかったが、意外なルートから知ることになったのだが、それは別の話。
まぁ、緑発様はトンでもないヤツだったとだけ追記しておく。
それはそうと、楓夏様に睨まれてスッカリ大人しくなった緑発様にどおしても訊いておかなければならないことがある。
それは、俺達が雨音から出られなくなってしまっていると言う事だ。
この件に関しては、範囲固定が働いているからとの事。
どおやら、妖怪及び幽霊が雨音から抜け出て他の地で悪さをしない様にしている為だとの事だ。
然し、何時までも雨音に縛られていたら何も出来ない。そう思った俺は思い切って俺達に掛かっている範囲固定を解除して欲しいと頼んでみたのだが、案の定
「コヨミを儂にくれるのなら考えてやる」
と言いやがった!
この…エロ爺………………!!
諦めてねぇのかよ!!
いい加減にブチギレそうになった俺は
「そんなにコヨミが欲しいのなら、全てが終わったらその時に正々堂々勝負をしてやる!それで俺が負けたら好きにしたら良い!」
と、返事をしたのだが、コレには流石にコヨミが
「アタシはゲームの景品か!?」
と猛反発していたのだが、勝負の二文字に気を良くしたのか俺達に掛けられている範囲固定の術を解除してくれたが、行動範囲は雨音から半径100里(392.727km)迄で、それを超えたら即座に消滅してしまうとの事だ。
まあ、何にしても漸く行動範囲が広がった訳だし関東や山海寺へも自由に行ける様になったよ。
胸くそ悪いのは確かだけど、今はコレでヨシとしないといけないかな。
コレでこの洞窟内でやる事は終わったと言えるかなと思った俺達は祠を護る役目になった緑発様を残して久しぶりに外へと出たのであった。