第11話 真智子の怒り1
ひったくり事件のその後のお話です
話に出て来る政府の話は小説だけの設定で、現実とは何の関わりもございません
4時30分
「えーっと…68歳男性が軽トラで高速道路を逆走しトラックや乗用車6台巻き込む事故を起こす…軽トラを運転していた男性は即死であった…」
と…
「進学校で有名なK市立R商業高校に通う2年の女子生徒が電車に飛び込み死亡。遺書が発見された事から自殺と断定。イジメが理由か?」
と
「人気アイドルユニット7ガールズのコンサートが関東ドームで開催され、5万人のファンが彼女達の歌とダンスに酔いしれた」
「政府与党が公約に掲げていた減税を撤回
一転して大増税へ。怒れる国民感情を無視して断行するのか?」
特に目を惹く記事はこんなもんかな?
壁抜けをマスターした俺はコヨミの部屋から雨降山に移動する前に読読新聞の配達店にやって来ると、日課になっているのだろう昨日と同じ場所で店長が朝刊を読んでいたので、再び背後から記事を読ませて貰った。
店長の背後から覗く朝刊。なっちゃいけないのだろうけど、癖になりそうだなコレ…
まぁ、それぞれの記事にそれぞれの感想をもったのだけど、長くなりそうなので止めておく。
てか、イジメの記事に真智子が過剰に反応していたけど、生前何かあったのかな?そう言う場面には遭遇したくないと思ったのは真智子にも秘密である。
後、生前の真智子(和樹)は7ガールズのファンだったらしくメッチャ悔しがっていたが、DVDも出るとの事なので適当な理由を付けてコヨミにレンタル屋で借りさせて観れば良いだろう。
今の与党は悪政民族 災厄人であり、トップに関しては伝説になるであろうスーパー災厄人だと俺は認識しているから、この話は普通にあるだろうな。
果たして救世主は出現するのだろうか
なんて、イチ幽霊がこの国の未来を憂いても仕方がないか
えっ?
災厄人とは何ぞや?だって?
文字通り、災厄を齎すことしか出来ない人のことだよ
興味はないけど、トンでもない者が取り憑いているのではないかな
何れにしても、これ以上国民を虐める様なことをすると最悪な末路を辿るのではないかな
真智子曰く、2度も野に下っているのに何も学んでないのね
だってさ
6時00分
新聞屋を出て空を飛んで雨降山に向かったのだけど、空を飛んで約1時間程掛かったよ。
雨降山から雨土山迄の距離は約15里。キロメートルに直すと約58.9km(1里=3.927km)で新聞屋から雨降山迄の距離は約25km程の距離が有る。
まぁ、慣れたらもう少し早くなるかな?これからの移動は空を飛んだ方が良いだろうな。
それに、歩いているとNG級が目について鬱陶しいってのが最大の理由なのだ。
頂上の要石に座る前に真智子に残りエネルギーの残量を訊いてみたが約50%程との事。
「このままだとノー充電で48時間は余裕で動けるかな?」
との返事だったのだが、色々力を使いまくったらコレよりも早くなる事になるだろうし低活動状態と併用させるとプラス24時間は行けるかもな。
安心安全状態を維持するには最低でも30時間以内に来た方が良いだろうとの結論に達するが、果たしてそう上手く行くかどうか解らんな。
11時
「充電完了っと。この感じだと空状態からフル充電したら約8時間程掛かりそうね。」
真智子の充電に約4時間程費やした俺は山を降りて図書館に向かう事にした。
当面の活動拠点は雨降山になりそうだな。
後は楽しめる場と云うか、好奇心を満たせる場所が在ると良いのだが…まぁ、それは追々探すとするか。
山から離れた俺は図書館に向かおうとしたのだが、住宅街にも拘わらず長蛇の列を発見した俺はつい、寄り道をしてしまった。
「確か、此処には築ン十年の廃墟が在った筈なんだけど…」
真智子が生前の記憶を頼りに俺に伝えて来るが、目の前に在る建物は「ガチ鳥」と云う看板を掲げたラーメン屋。入り口には有名ラーメン店から贈られた花輪が飾られている。
どおやらこの土地の持ち主が廃墟を解体してラーメン屋を建てた模様。
「鳥白湯ラーメンがメインの店?寄って寄って!」
新装開店のラーメン屋と知り真智子が寄りたがっているので、ラーメン大好きなのか?と質問すると、生前は食べ歩きした程にラーメン大好きだったとの事。
ハイハイwww
俺の返事に嬉しそうにはしゃぐ真智子を見ていると昨日まで男をやっていたとは思えんのだが?まぁ、俺が女扱いするって宣言したからトコトン付き合ってくれているのかも知れないけど。
「はやくはやく♥️」
語尾にハートマークを着けて急かす真智子に背中を押される形でラーメン屋に入った俺は思わずスープの香りを胸一杯に吸い込んでしまったよ。
「中々の味と見た」
初めて体験する鳥白湯スープの香りとラーメンを飾るトッピングに満足感で満たされる俺。
然し、先程のテンションとは違い何処か不満げな真智子は直ぐに出ようと言い出して再び俺の背中を押す様に店を出たのであった。
「どおしたんだよ!?」
何やら考え込んでいる真智子を問い詰めようとする俺に
「後で話す」
と言ったきり黙り込んでしまう。
ラーメン屋を出た後、図書館にやって来た俺は先ずこの土地の事について書かれた郷土史を探した。
「あそこの一角が歴史書コーナーみたいね」
機嫌が治った真智子が奥の方に置かれているガラスケースを指差すので指示されるがママに行って見ると数冊の郷土史と妖綺譚と書かれた本が納められていた。
コレじゃあ視れねぇなぁ…
等と考えていると
「何言ってんの!このくらい、壁抜けの応用で何とでもなるわよ」
と真智子が言って来る。
壁抜け?応用?
・・・Σ(-∀-;)
そう、底の部分が板と言うことはソコから侵入出来ると云うこと。
そして幽霊に体型は有って無いようなものだからケースの中に入り込んで郷土史を閲覧可能なんだなコレ…
「せ~かい。」
ヤレヤレ世話のやけると言いたげな真智子にありがとうなとお礼を言って早速ケースの中に入り込む事にする。
「入ったは良いけど、そんな昔の文字を読めるの?」
中に入って本に触る俺に鋭いツッコミを入れながらも人が寄り付かない様に特殊な結界を張る真智子。言っちゃ悪いけど専門家ならいざ知らず、こんな達筆過ぎる昔の文字なんか普通読める訳が無い。
「ウーン 何とかなると思うんだよね」
不思議そうに俺を見る真智子に適当な返事をしてページを捲り本の中身を視た途端に達筆過ぎる難解な文字が俺の中で読める文字へと変換されるのが解る。
解る事が楽しくて次々とページを捲り瞬く間に一冊読破してしまったよ。
「何て書いてるの?」
本を読む速さに驚いたのも有るのだろうが、文字を読めてる事に驚いた真智子が呆れ半分、興味半分で訊ねてくる。
「どおやらこの街の元になった村は奈良時代の終わり頃に落武者が作った村みたいだな。で、当時は雨音ではなく雨無村と呼ばれていて、雨降山も雨無山と呼ばれていたらしい。」
「よく読めるねこんな難しい字」
「生前の俺はこう云うのに精通していたのかもな…」
郷土史に書かれていた記述で特に目を惹いたのは約1200年前迄はこの地に出来た村は雨無村、あの山は雨無山と呼ばれていて或時に突如として雨降村と雨降山と呼ばれる様になり、明治の時代に雨音に変わったと云う事と戦国時代にこの地を収めていた武将が居たが家臣の裏切りにより無念の最後を遂げ、この直後に食料事情の改善に繋がるからと虎視眈々と狙っていた有名になった武将に亡ぼされたと云う事くらいかな。
見落としている記述も有ると思うからまた覗きに来るとしよう。
「妖綺譚?」
昔話・おとぎ話の様な創作的要素が強いのだろうから参考にならないと思って期待しなかったが、妖綺譚を序でに読んでみる。
・・・!!
然し、この話がかなり面白かった。後で話す機会も有ると思うから今は話さないが、郷土史とセットで展示されている理由が解ったよ。
然しこの本の紙は以外に新しいみたいだな?ひょっとして原本の写しなのか?
「そろそろ外へ出ようよ」
等と考えていると真智子が今日は此処までにしようよと言って来る。
どおやら結界を張り続ける事は思ったよりエネルギー消費が激しいらしく、コレ以上は入れ替わり不可能な状態になるとの事。
勲とも約束が有るからあまり無理させられないよな?
「ん~?解ったよ」
真智子に促され後ろ髪を引かれる思いで図書館を出た頃には既に夕焼けの時間になっていたので此処から本体の主導権を真智子に譲り、俺は奥に引っ込む。
先に書いて置くけど、レイから主導権が私、真智子に移ったので、此処から少しの間の一人称は私になりますので悪しからず。
「アッ、来た来た」
レイから主導権を貰った私は日没直前にFZの屋上に来ていた。
この5階建てのビルにはゲームセンターとカラオケが一緒に入っていてビルの屋上は関係者以外立ち入り禁止となっているのだが、管理体制が甘く時折不良達の溜まり場になっている。
屋上に到着して間もなく駅の方向から勲が飛んで来るのが見える。
「お待たせしました。」
昨日とは違い礼儀正しく挨拶する勲に二人組の事を訊いてみたのだけど、昨日、パチンコで大勝してその金で豪遊したらしい。
「いや~…姐さんの言った通りになりました。言われた通りに操作しだけであんなに出る台になるなんて思ってもみなかったですよ」
二人組がパチンコ屋に入るのが解って以前から良くない噂を訊いていた私は勲にちょっとした入れ知恵をしてやらせたのだけど、本当に出るとは思ってもみなかったわ。
まぁ、噂は本当だったって事の証明なんだけど、これ以上は生きてる人のやってる事だから手出し無用って事だね。(本当はあの禿げ・チビ・デブの金の亡者を成敗したいのだけどね)
戦績は投資金額が5千円で戻りが123600円。短時間で118600円の大勝だったらしい。
勲の話だと、勝った金で風俗で遊んだ後、朝まで飲んでいたらしい。
その話を訊いてレイが怒り狂っているけど今は無視。
てか、コレから二人をお仕置きするのだから最後に良い思いをさせても罰は当たらないでしょう?
「で?二人は今は何処に?」
と訊いてみると昼過ぎまで部屋で寝ていた二人は鴨リストと呼んでるノートを頼りにあちら此方に電話を掛けまくっていたらしく、現在も部屋に居るとの事なので、勲の案内で早速二人の部屋に移動する事にする。
移動中、捨てられたカードの事を訊いてみたら
「ちょっと勇気は要りましたが、ホームレスに憑依してあの場所から捨てられたカードを回収して警察に持って行きました。最初はホームレスの事を疑っていましたがね、カードの名義に被害届けが出ている名前が有ったので回収した場所を聴かれた後で無罪放免ですわ。」
との事だった。
「へぇ~…そのホームレスってどんな人だったの?」
フと何故ホームレスを選んだのかが気になってそれとなく訊いてみたのだけど、罰の悪そうな表情を浮かべて以下の様な話をしてくれたわ。
その…ホームレスなんですがね、元々宝くじで1等の一億を当てたヤツでしてね。その金を俺達が狙ってスッテンテンにさせちまったんですよ。
ホームレスの名前は松野源治。年齢は51歳
某有名メーカーの下請けに勤める係長で2人の子供を育てる子煩悩なパパさんだったらしい。
そんな松野が偶々購入した20枚の宝くじが一等一億の大当たりをした。
家族と相談した所、家を購入して残りのお金は老後の為に貯金すると決まったらしい。
然し、その噂を聴いた勲達はそのお金を狙って女を使い松野に不倫させタイミングを見計らって結婚を楯に離婚を迫り会社と家族を巻き込み大騒ぎさせて社会的地位及び会社での立場を失墜させる事に成功する。
「計画がポンポンと上手く行ったので俺達は大喜びですよ。」
3人が松野から巻き上げたお金は女に貢がせたお金と合わせて5千万円で、残りのお金と今まで貯めた貯金を家族に全て渡して離婚し、問題を起こした事により会社も解雇されホームレスへと堕ちたらしい。
コイツ・・・
この話を訊いてコイツを強制成仏させたい気持ちになったのだけど、せめてもの罪滅ぼしの為に松野を使って通報したとの事だし何しろアイツ等をやっつけないといけないので勲の処分は後回しにする事にしたわ。
けど、犯した罪は償って貰わないとね!