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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第6章 風神 楓夏
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第114話 土地神 緑発

ン〜…スカウトねぇ…困ったねぇ〜


トンでも状況に皆の「どおするの?」的な視線が俺に突き刺さる。


まぁ、彼奴等と俺達を冷静に天秤に掛けた結果と言えなくもないが都合良すぎるよな。てか、幽霊を配下に加えようなんて何考えているんだよ!と心の中でツッコミを入れていたのだが…

なので、俺の返事は当然


誰が何と言っても答えは


NO!!!!!


だ!!


俺に断られたヤツは予定外だったみたいだったいで


「残念です…

貴方は既に魔王とその配下の妖怪に目を付けられた

その前に某が救ってあげようと思ったのですがね

非常に残念です」


とか何とか…未練タラタラに言い残して消えて行った。

てっきり「言う事を聞かない奴は抹殺する」的な事を言って襲い掛かって来るかと思ったのだが、ヤケにアッサリと消えやがったよ。

楓夏様がもの凄い形相で睨んでいたからかも知れないが…まぁ、どぉでも良いか。


「さて、最後の仕上げじゃ!」


高らかに楓夏様が宣言した後、俺達全員で妖怪門に移動したのであった。

(てか、俺達まで行く必要はあるのか?謎だ)


………

……


アレが八岐の大蛇…


妖怪門が在る空間は楓夏様の祠の真下百メートル程に存在している岩盤の中に広がっているだだっ広い空間の中。その空間の中央に存在しいている。


一瞬目眩に似た感覚を覚えたと思ったら目の前に龍の姿をした8本の竜巻がまるで意思のある生き物の様に妖怪門を守る様に蠢いていた。

こんなもんが巻き付いていたら如何なる妖怪でも手は出せないよな。


「デケェ!!」


楓夏様を認識したのか、8本の竜巻は次々と楓夏様に頭を寄せると労いの言葉を掛けられた後、消えて行く。

八岐の大蛇が消えた後に出現した巨大な門に驚愕する俺達。


姿を表した門は見た目は石造りの頑丈な門に見え

高さ10m

横幅5m

厚さ5m

のサイズで、更に扉には禍々しい程の装飾が施され、その中心には楓夏様が施したであろう御札が貼り付けてあった。


「見事に育ったもんじゃのう」


「あんなデカい門をどおやって消滅させるんだ?」


「まあ、見ておれ」


女達が圧倒されている中、レイが問い質すと意味深な笑みを浮かべて何時も持ち歩いている扇子を広げてひと仰ぎした事により発生した風を受けて御札がボロボロに朽ちて行く。


ギィィィィィ…


不快和音100と言うのか思わず耳を塞ぎたくなる様なものすごぉ〜く嫌な音と共に聴くだけで狂い死にしそうな怨嗟の声が漏れ聞こえる。てか、生者なら間違いなく狂い死にしているだろうな。

門からしたら、1200年分の鬱憤と怨みを込めたのだろうから当然と言えば当然だろう。


「「「イヤァァァァァ!!!」」」


「ちょっ…ちょっとあなた達…」


コヨミとゆう子が錯乱しながら俺の中に飛び込んで来て目を閉じ耳を塞ぎしゃがみ込むもんだから慌てふためく真智子。天音に至っては楓夏様の中に隠れて奥へと引っ込んでしまった程だ。

エッ?何で俺は耐えられるのかって?

実は俺は真智子との修行の成果の1つとして、五感を断つ方法を修得している。

この場合は、当然ながら聴覚を断っているので何も聞こえないのだ。


ゆっくりと扉が開いて行く中、空間内にシャン!と澄んだ音色が鳴り響く。

はぁ?聴覚を遮断しているのに何で聴こえるんだ?


音が聴こえる方向を見ると、扇子を変化させた鈴を持ち優雅に舞っている楓夏様の姿。

その美しさに思わず見惚れてしまう俺達。


美しい…


最早この言葉しか出て来ない。

然し、この舞は見た目の美しさとは裏腹にトンでもなく恐ろしい術の準備でしかなかったのである。


妖怪門の上下に程なく出現する魔法陣が門から発生していた音と怨嗟の声を完全にシャットアウトする。

そこで漸く俺の中から出て来たコヨミとゆう子は、「レイの中って以外に居心地良い」とか「何?あの陣」とか勝手な事を言っているけど、ちょっとは黙って居てくれないかな?

激しく優しくそして優雅に舞うその姿を良く見たら楓夏様の全身から神気が膨れ上がっているのが解る。


「あの陣の中の風速ってどれ位になっているのかしらね」


様子を窺っている真智子が興味津々に呟く。目には見えないが、内と外では気圧が違うと言うか恐ろしい程の勢いで風が渦巻き、更に真空の刃となって門にぶつかっている様子。

それが証拠に門の至る所が傷だらけになって来ているのだ。


「消えよ!

滅殺風陣!!」


舞が終了したのと同時に楓夏様が叫ぶ。

滅殺風陣は敵を絶対防御壁で閉じ込め、中の空気を利用し竜巻を発生させ、そこから絶対切断の能力を纏わせた真空の刃を作り出して敵を襲い殲滅させると言った楓夏様最大の技の1つ。

いやぁ〜門がスッパスッパ斬られていくもんだから 材質が石ではなくチーズかと思った程だ。

あんなの喰らったら一溜まりもないよな。


”微塵切り”


この言葉がピッタリと当て嵌まる程に切り崩して行く刃。そして切り崩された破片は腐食の風で即座に腐食し崩れて消えて行く。

瞬く間に根元を残して全て破壊されてしまった。

楓夏様がサッと両手を大きく広げて真上に持っていくと、それまで縦横無尽に暴れ回っていた刃が門の真上に集まって行く。


「仕上げじゃ!」


楓夏様の両手が勢い良く振り降ろされると、それが合図になったのか門の根元に刃が降り注ぐ。


・・・終わったな・・・


全てが終わった事を示す様に陣が消えて門が在った事を示す形跡が無い事を確認した俺達は戻ろうとしたのだが真智子が「何か忘れていない?」と言い出すものだから、立ち止まりその何かを思い出そうとした時


「こりゃぁ!儂を殺す気かぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」


帰ろうとした俺達を引き止める様な怒号が洞窟内に響き渡る。

思わず振り向いた俺達が見たその人物は


「マッタク…乱暴にも程があるぞい」


白い衣に木製の杖を持ち、口元には白く長い髭を蓄えシワシワの顔に見事なツルッパゲ。

絵に描いた様な仙人と言った様な姿をしたその人物を視認した楓夏様が信じられないと言った表情で


「その…まさかとは思いますが…貴方は緑発殿ですか?」


緑発…そうだ!この風龍神社に祀られているもう一人の神様でこの土地を護る土地神様でもある御方。

然し、この仙人の様なお年寄りが土地神様なのか?

疑いたくはないが、想像していた姿とあまりにもかけ離れていたが為に訝しんでしまった俺を無視し、ツカツカとコヨミの前に歩み寄り


「好きです♡

そこの幽霊と別れて儂と結婚して下さい♥」


と、真っ赤な顔をし、そしてどこから出したのか、これまた顔と同じ位の真っ赤な薔薇の花束を差し出してプロポーズしやがった!


ブスッ!!✕3


ヘッ!?


コヨミのヤツ、不動明王の剣をひったくって薔薇の花束越しに土地神様を突き刺しやがった!

怒りに駆られて禁断の神殺しを殺っちまったよ。

と、思ったら土地神様はヘーゼンとしているよ。

よく見ると刺された箇所は穴が開いているものの、血の一滴も出ていないし不自然に再生している所を見ると岩を依り代に作られた岩分身ってやつの様だな。


「何が結婚してください♥よ!!

アンタがアタシの事をストーカーしていたのは知ってんだからね!!!」


ハァ!?

コヨミさん今、何と言いました?

土地神様がストーカー?

訳が分からずボー然としていたら立て続けにこんな事を言い出した。


「最初は子供の頃だったわよね!?

アオダイショウに化けてアタシを噛んだ!

それから度々見ていたわよね?

然も、アタシの身体を舐める様に!!」


そう言えば、生前にアオダイショウに噛まれてから爬虫類が嫌いになったとか言っていたっけ。

その原因が土地神様だったってのか?

てか、拐われて無理やり眷属化させられなくて良かったけど神様のやる事じゃぁない。

とか考えていたら土地神様のヤツ


「儂だって神である前に一人の男じゃもん!

恋愛感情の1つくらい持っても罰は当たらないじゃもん!」


とか言い出したもんだからコヨミったら土地神様を脳天から一刀両断にしやがった!

そんな事をしても一体が二体になるだけだって解らんのかねぇ。

とか考えいたら斬られた所から再生を始めて二体になりやがった!


「いきなり酷いんじゃもん!

お詫びとして儂と結婚するんじゃもん!」


はぁ〜…懲りないねぇ…


二人のやり取りを敢えて静観していた俺に心配したゆう子が「黙って見ていて良いの?」と訊いて来たけど、手は出す気はねぇよ。

ゆう子は知らないだろうから言うけど、こう言う時のコヨミは見境がなくなるから、どんなトバッチリが飛んで来るか解らんのだぞ?

なので、俺はゆう子に「好きなだけやらせておけば?」と呆れ気味に言ったのだけど、何を思ったのか楓夏様が鬼も裸足で逃げる様な怒り顔で土地神様を叱りつけたのだ。

いやぁ…元が美人なだけにコェェ〜

ンでもって、当然ながら怒りの矛先は当然の如く俺にも向きやがった。

でもそれは、コヨミの事を知らないから言える事であって知っていたらそんな事は言わないだろうな。

とは言え、話が拗れて乱闘になろうもんなら割って入れる様に臨戦態勢を整えていたよ?

何にしてもこの空間から移動したいから取り敢えず上へ行こうじゃないか。

そうこうしている間に残存エネルギーを利用して門が再生し始めているじゃないか。

サッサとこの空間を封印して後顧の憂いを断たねばならないからさ。

そう思った俺は皆を促してこの空間を後にしたのであった。


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