第111話 天音VS大佐2
アレッ?天音が使えるのって風属性だけなのか?
逃げる天音
それを追う大佐
まるで鬼ごっこを見ているかの様な感覚に襲われた俺は1つの疑問にぶつかる。
前にも話したと思うが、幽霊の基本属性は冷。
つまり、氷であり元々風属性は備わっていない。
楓夏様との修行で身に付いた又は楓夏様が力を貸していると思われる。
とすると、風と氷の合体術なんてものが使えると思われるのだが、俺とのガチバトルの時でも1度も使った事がない。
まさか、風属性だけで冷属性の技や術なんかは使えないとかか?
そんな俺の疑問を知らない天音は逃げながら風の技を使うものだから大佐の炎は更に燃え上がる一方だ。
「そろそろ良いかな?」
逃げながら溜めていた霊気の量を確認した天音は分身体にそれを任せて安全な位置に移動して印を結ぶ
「おいで
マル君チーちゃん!」
目の前に浮かび上がる陣から迫り上がる様に出て来たのは…
カラス?
・・・いや・・・カラスじゃないな・・・何だあの鳥は?
陣から現れたのは2羽の漆黒の鳥。
見た目は完全にカラス。
然し、サイズが通常のカラスより5倍は有ろうかと思われる程の大きさがあり、更に妖気が全身を包んでいる。
火喰い鳥と言う幻獣種の幼体だそうで、どおやら教育期間中に仲良くなっていたみたいだ。
「大好きな炎がいっぱいだよ
好きなだけ食べて良いよ」
トコトコと近寄る鳥の頭を優しく撫でながら天音が炎を撒き散らし暴れ回る大佐を指差して叫ぶ。
「GO!!」
天音の指示で大佐めがけて勢い良く飛び立つ2羽の鳥は美味しそうに炎を喰いまくる。
それどころか、もっとクレと言わんばかりに大佐を嘴で突いたり爪で掴もうとしたりとやりたい放題だ。
い…いい加減にしろ!!!
怒り大爆発の大佐が何本もの針を突出させ鳥を攻撃する。見てくれはムラサキウニを想像して貰えれば良いだろう。
その針を器用に避けながら攻撃を試みるが針の密度が濃すぎて攻撃が出来ないでいる。
「後はあの子達に任せるからもう良いよ
物足りないだろうけど、ゴメンね」
天音の言葉に逆らう事が出来ないのか、もっと遊びたかった的な表情のまま自分達の世界へと帰還して行く火喰い鳥と入れ替わるように別の個体が出てくる。
な・・・!!
次に出て来たのは、ウニ最大の天敵の星型のアイツだ。
何でそうなるんだよ!?
本物のウニでもないのにヒトデは無いだろうよと思ったら中央の口に当たる部分から液体を勢い良く飛ばして大佐にブッかけている。
ジュオッ!!
液体が掛かった所が物凄い勢いで溶けて行くのが解る。
って事は、あの液体は強酸性の液体だと言う事で間違い無さそうだな。
「早く何とかしないと骨まで溶けちゃうよ」
ケラケラとバカにした様に天音が言うとマジでブチギレたらしいが、頭を冷やせと言わんばかりに闇丸が水遁を発動させて大量の水を大佐にぶっかける。
「短気は損気でゴザルよ?」
大佐を宥める様に言う闇丸を余計な事をしやがって的な目で見る天音。
「面目ない…闇丸殿が居てくれて助かりましたよ」
闇丸に対し、丁寧に御礼の言葉を述べる大佐であったが、何か様子が変だ。
何がと言われても説明が出来ないのだけど、雰囲気と言うか何と言うか兎に角先程の大佐とは何かが違う。
と、その時
痛っ!!
「急所を狙った筈ですが
本当に厄介なお子様ですね
では、これならどおです!?」
突然、右肩を抑えて蹲る天音に追い打ちをかける様に襲い掛かる銃弾の雨霰。
天音の背後に出現した大佐が持っていた短銃が火を吹いたのだ。
それだけではなく、短銃はサブマシンガンへと進化して容赦なく天音に銃弾を吐き出し続けているが、驚くことに全ての銃弾が何故か天音の手前で止まったり明後日の方向へと飛んで行ったりしているではないか。
「エア・バリアと言えば良いのかな?あの子の周囲には恐ろしい程の圧力が掛かった空気の層が出来ている筈よ」
真智子に言われて気が付いたのだけど、天音の周囲の空気の密度が違うせいで、天音の姿が揺らいで見える。
まぁ、一発喰らって慌てて発動させたと言った所だろう。
恐らくは最初の一発は急所を狙ったのだろうが楓夏様に気付かれて阻止されたと言っても良いだろう。
楓夏様は至近距離であったとは言え、被弾してしまった事に大いにプライドを傷付けられたみたいだぜ。
それでも全てを天音に任せる腹積もりなのだろうか、黙りを決め込む楓夏様。
オイオイ…オレにはアレだけ突っかかって来る癖に天音には随分と甘い様で。
ちょっとイラッとした事は誰にもナイショである。
でも、アレって…
コヨミが何かに気が付いたのか、天音を見て首を傾げている。
てか、コヨミ…アレがどう言う状態か解らねぇか?
既にアレは抜け殻だぞ?
真智子も俺と同意見だったらしくウンウンと頷いている。
俺達がそんな事を言い合っている間、大佐は懲りもせず弾を変えては天音目掛けて撃ちまくっている。
何でそんな無駄な事をするのかと思っていたら、遂に一発の銃弾がバリアを貫通したのだ。
チュイン!
貫通した弾が天音の頬を掠める。
それを皮切りに全ての銃弾がバリアを突破し天音に襲い掛かり、数発の銃弾を浴びてしまう事になった。
何があったの?
まさかの事態に騒然となるコヨミと真智子。
大佐が行っていたのはワンホールショットと言う撃ち方で、寸分違わぬ軌道で銃弾を発射すると言う神業と言われる技術だそうだ。
それを短銃ではなくサブマシンガンでやってのけるのだから、流石と言わざる負えないだろう。
「どおやら、私の勝ちの様ですね」
被弾して倒れてしまった天音に迫る大佐。
バリアを破った弾は、呪術系の弾だそうで、一発一発に貫通の能力と呪いの力が備わっている特別製の様だ。
天音の負けか?
中の楓夏様と一緒に持っていかれると困るので、助けに入ろうと構えた次の瞬間
ゲハッ!!
なんと負けたのは大佐の方であった。
何が起こったのかと言うと、地面から勢い良く飛び出した天音のダイビングヘッドが大佐の股間に炸裂したのとほぼ同時に背後に現れた楓夏様が背中越しから大佐の核を刀で貫いたのだ。
「ふぅ~…こうでもしなかったら隙きなんて見せてくれなかっただろうからね
危ない所だったよ
てか、股間が急所なんて人間と変わらないのね」
勝ち誇るわけでもなく、敬意を払う様な口調で天音が言うと
「私の負けですか
闇丸殿…後は頼みます」
散々煮え湯を飲まされて来た楓夏に対して勝てはしなかたものの一矢報いる事が出来たと言った表情を残して消えかける大佐に妖気玉と呼ばれる黒い珠を投げ付ける闇丸。
どおやら大佐の残滓を吸い取って自らの力にする様だ。
「限・界・超・越じゃぁ〜オラァ!!」
大佐の力を吸収した妖気玉を回収した闇丸の力どころか体格や顔付き、更には性格まで見る見るうちに変わって行くのが解る。
じ…GR級だとぉ!?
俺の印象では、大佐と闇丸はほぼ同格でLR級の中位クラスで、そこから限界突破したとしても、精々LR級最上位迄で止まると思っていたのだが、認識自体が甘かったと言わざる負えんなぁ〜コレは…
敢えて称号を付けるのなら、ニンジャマスターと言った所だろうか。
なぁ、ゆう子よぉ…幾らピンクの加護が有ると言っても今まで見たことの無い力の持ち主だぞ!?
お前本当に大丈夫なのか?
心配する俺に対してグッと親指を立て「任せて」と言い放つゆう子。
「さぁ〜て始めましょうか♥」
「誰かと思ったら貴女でしたか
貴女を倒して魔界忍者最強の称号を不動のものとするでゴザルよ」
「ゴタクは良いからサッサとかかって来な!」
ゆう子の挑発に眉を1ミリも動かさずに印を結ぶ闇丸。
闇丸VSゆう子&ピンク
最強忍者の称号を掛けた戦いが今始まる。