第109話 VS妖怪軍団
「やっぱりダメでしたか…私の料理を食べて貰えたら或いは…と思ったのですが…」
「そう言うそなたも思い出せないのであろう?」
「ハイ…然しながら、レイさんは確実に私の料理を食べた事がある…それも1度だけではなく何度も!コレだけは断言致します。」
「そうか…まぁ…仕方あるまいて…ご足労掛けて済まなかったの」
「では、私はこれにて…」
「うむ…」
何故社長がレイ達の為に料理を作ったかと言うと、楓夏の本体が別の分身体を通じて社長に依頼したからに過ぎないが、みず乃の料理を食べて記憶が蘇らないかと云った目論見もあったのである。
ガクリと項垂れて帰って行く社長の後ろ姿を見送るしか無かった楓夏。
と…なればやはり…然しそれでは…
夢中になって和食御膳を食べるレイを横目に見ながら決断に迷う楓夏は本体を通じて雲海と話し合う事にしたのであった。
その頃…
少し前に到着した闇丸は大佐のステルス・アイを共有してレイ達を視ていた。
「アレが…討伐対象の幽霊か…
う〜〜む…我等でも勝てるかどおか…」
天音が参戦した直後からレイを視ていた闇丸は旋律を通り越して恐怖すら感じたのであったが、此処で逃げ出す訳にも行かない。
「大佐殿」
「何でしょう」
「風神とその従者とペットは助っ人に入ると思いますか?」
「そうですね…ペットは有るかと思いますが風神と従者は無いかと」
「フム…」
「大佐殿の補充された戦力と私の戦力と合わせると戦力差は152対4プラス3って所ですか…」
「ハイ…」
「皆の限界超越は終わってますね?」
「勿論でございます
全員、一段階は上がっており皆、気合十分でございます。
足手まといになる者は誰一人として居りませぬ」
「・・・宜しい・・・
では、これから作戦会議を始めようではないか」
「作戦会議…ですか?」
「そうだ!見た感じでも解ったが、徒党を組んでも奴等には良くて引き分け悪ければ全滅も有り得るからな」
「そんな…」
「あの4体の幽霊は既に人間のそれを大きく超えておる。私の見立てでは最低でも互角だと見ている。更にペットが加わるとなれば戦力差は無いと考えた方が良かろう。
それを勝利の二文字に持って行く為の作戦会議だ。全員を集めよ!」
こうして始まった妖怪達の幽霊対策が始まったのであった。
………
……
18時
・・・!!
来たか!
決戦に向けて霊気の流れを整える為に座禅していたレイが結界の外に目を向ける。
「お〜ぉ…総力戦だなこりゃぁ…」
大佐とアーミー妖怪軍団と闇丸と愉快な忍者軍団。合わせて152名の軍団が「風神 楓夏の力を我等の手に」を合言葉に陣形を組む。
「鶴翼の陣ってヤツか?」
大佐と闇丸を司令塔に30名の集団が横に5組並び両端から一歩二歩と進み出てV字形の陣形が完成する。
布陣を見てシッカリと訓練されている精鋭が揃っていると看破したレイは3体に別れた天丸の内の1体の背にゆう子を乗せ、自らは単騎で結界の外へと躍り出る。
天丸は三位一体の時は光属性になるのだが、3体に別れた時はそれぞれ属性が違う。
では、どおなっているかと言うと、火・風・無の三属性となっており、戦闘力は然程変わらない。
その内の無属性の天丸に跨ったゆう子を見てコヨミが火属性に天音が風属性を伴ってレイに追従する。
「殺れ!!」
大佐の一言が洞窟内に響き渡ると同時に左右の集団がレイ達を挟み込む様に突撃して来る。
「蹴散らすぞ!」
レイが中央の集団を受け持ち、コヨミが左の集団を受け持ち、天音が右の集団を受け持つ。
そしてゆう子は遊軍となり、妖怪軍団を迎え撃つ。
ガオン!!
先制攻撃と言わんばかりに3頭の天丸がそれぞれの属性を込めたブレスを発射して敵の撹乱を狙うも、無駄だと言わんばかりに巨大な盾を装備した数名の敵が受け止める。
ブレスを放ったが為に天丸の動きが止まってしまっている所に地中を移動した数名の敵の刀が天丸の足元を斬り裂こうとするも、それを読んでいたゆう子が瞬時に対応する。
「その手は通用しないわよ
お・に・い・さ・ん・が・た♥」
ちょっぴりセクシーなポーズをとりながら挑発するゆう子にやり過ぎよとツッコミを入れるコヨミ。
う〜〜む・・・その手の挑発と良い霊気の使い方と良い、ゆう子の師匠は間違いなくアイツだな…
マッタク余計な知恵を付けてくれたもんだぜ…
とは言え、ゆう子に挑発された一団が怒り狂いながらゆう子目掛けて突撃をかけているぞ。
どおすんだ?と思っていたら、突然突撃してきた妖怪の足元に黒い穴がパックリと開き纏めて消してしまった。
「ヘヘン!忍法落とし穴の術ってね」
ハッ!
何が忍法落とし穴の術だよ!
俺達がよく使うゴミ箱じゃねぇかよ!
等とツッコミを入れようとしたのだけど、俺の目の前に無数の弾丸が迫っている。
マシンガンを持った妖怪がぶっ放したのだ。
当たる!
と、思った刹那。
霊気を練って臨戦態勢状態にあった真智子が霊気を開放させて壁を創り出して弾丸を阻止。弾丸は落ちる事なく、巻き戻る様に跳ね返って行き、数名の妖怪にぶち当たり消滅したかと思ったら、そんなの効きません的な表情でへーぜんとしているではないか。
まさか、防弾チョッキまで装備している妖怪までいるとはね…いやぁ…参ったよ…
俺達の…いや…俺の動きを読んでいた様な準備と行動…彼奴等…俺達の様子を逐一観察してやがったな?
此処までの戦闘での被害は妖怪側がたったの20名だけってのが気に食わない。
気に食わないけど、これが現実なのだから受け入れなければならない。
「このクソガキ!」
屈強なアーミー妖怪が天音1人に翻弄されているのが見える。
股間を抑えて悶絶している者、刀で手足を斬られてのたうち回る者、様々だが忍者妖怪を除いて阿鼻叫喚の様相を醸し出している。
そんな中、やっと動き出した忍者妖怪が天音目掛けてクナイや手裏剣を飛ばして来たが周囲を風のバリアで防ぎつつ地中に潜り1体また1体と側頭部に重い蹴りを見舞って行くが、敵も去るもの、変わり身の術で難を逃れて火遁・水遁と言った攻撃を加えて来る。
「わぁ〜忍者さん達カッコいい♥️」
目をキラキラさせて忍者妖怪が繰り出す技や術を躱しながら称賛する天音であったが、そんな天音の戦闘に苛ついたのか楓夏が強制的に代わり瞬殺しようとする。
「あっ!楓夏先生!反則だよ!」
強制的に入れ替わった事で視ている立場になってしまった天音がホッペを河豚のように膨らませて抗議しているが、ガン無視した楓夏がレイに向かって吠える。
「レイ!このクソバカヤロウが!何時まで遊んでやがんだ!サッサと雑魚どもを片付けんかい!!」
喧しい!このク●●●ア!
とは口が裂けても言えんよなぁ…ハイハイ…解りましたよ…
では、お望み通り・・・俺はコヨミと目配せをして同時に印を結ぶ。
ゴォ!!
俺と真智子の力で増幅した不動明王の炎が爆炎の壁となり妖怪軍団を取り囲む。
不動明王の炎で焼かれろ!
爆炎障壁!
炎の障壁が結界の役割をしていて妖怪の逃げ道を塞ぐ。それこそ地中まで炎の障壁が通っているおかげで地面が溶けて溶岩と化し、更にその溶岩が龍になり妖怪軍団にトドメを刺す。
トンでもない術にあ然とする天音とゆう子がいつの間にそんな術をとか呟いているけど、冷静に術を分析する楓夏様。
まぁ…及第点と云った所かの…この術の弱点は…
そう、この術には弱点はある。
水!
然も、大量の水!
然し、それをやってしまったら水蒸気爆発が起こり、どれだけの被害が出るか解らないから手は出せない筈だ。
筈なのだが…
絶対障壁!
水遁 大瀑布!
大佐が爆炎障壁をどんな衝撃をも防ぐ絶対障壁で包み、その中に闇丸の水遁が降り注ぎ、見事に鎮火させてしまった。
「はぁ〜…此方側の兵隊は全滅ですか…貴方方と殺り合う前に余計な消耗は避けたかったのですがねぇ…」
疲れたと云った表情を浮かべつつも鋭い目で俺達を睨み付ける大佐と闇丸。
VS妖怪軍団は此処からが本番だ。