第108話 洞窟内にて 6
明けましておめでとうございますm(__)m
今年も宜しくお願いします。
楓夏様が専用空間へと引っ込んでから10時間が経とうしている。
あれから俺は右近を相手にガチバトルを繰り返していた。
「どおしました?もお終わりですか?
そんな攻撃では蚊だって殺せませんよ…ッ!?」
ウオッ!!
右近の妖気弾を躱した所に右近の分身体が3方向から俺を襲う。
それを二身合一で対処した迄は良かったのだが…
「ニ身合一ですか…そのモードに頼り過ぎない方が宜しいかと思いますよ…っと!!」
神速で移動した右近が持っていた刀が俺を斬り裂こうと頭上に迫る。
その刀を真剣白刃取りで受け止め、空いている手で反撃を試みたのだが、持っていた刀をアッサリと放棄し、俺の反撃を身をよじる事で躱し頭部に蹴りを見舞ってくる。
かぁ〜…腕が痺れる…
その蹴りを受け止めた腕に走る痺れ。
幽霊になってから体験することの無かった感覚に戸惑いながらも一旦距離を取り、乱れている霊気の流れを整える。
この右近って半妖…見た目こそ優男だけど、半端なくツェェ…恐らくは左近より強いのではないか?
てか、そっち方面ではメッチャ恵まれているのは有り難い事だよな。
「ふぅ…ちょっと休憩にしましょう…根を詰め過ぎても良くありませんからね」
右近が休憩を宣言すると、左近がお茶の準備を始めると辺にコーヒーの良い匂いが立ち込める。
この香り…良い豆使ってんじゃね?
「本日のお茶はブルーマウンテンをベースにしたオリジナルブレンドです。
お茶菓子は甘味堂の肉球プリンにしてみました」
美味い!只管に美味い!プリンの方は表面にチョコパウダーを肉球の形に振ってあり、味も去ることながら見た目でも楽しませてくれる逸品だ。
コヨミとゆう子は目をキラキラさせて食べるのが勿体無い程カワイイとか言った後、一口食べてまるで昇天したかの様な表情をして感激しているよ。
まぁ、幽霊になってからこんなに美味しいお茶とお茶菓子を頂いたなんて事がなかったから当然か。
さぁ、エネルギー補給も出来た事だし再開しますか
再び右近と対峙した俺は、時間の許す限りガチバトルを繰り広げる事になったのである。
………
…
「・・・なる程な・・・ではお主は・・・」
「この話はおばあちゃんの胸の中だけに留めて欲しいの
成長すると共に記憶も薄れて行くものだし、今の二人…特にママには関係のない事だから」
「だから…おばあちゃんと呼ぶではない!」
「だって…天音からしたら楓夏様はおばあちゃんだもん」
「解った解った・・・マッタク・・・然し、妾をおばあちゃんと呼ぶのは妾と天音の二人しか居ない時にしか使わない事!良いな!」
「えぇ〜何で?」
「何でもじゃ!変に突っ込まれても困るだけであろう?」
「そうだね・・・解った・・・」
「良い子じゃ…では、早速勉強を始めようとするかの…
今から妾は天音の先生じゃ!コレからは妾の事を先生と呼ぶのじゃ!」
「えぇ〜めんどくさい…」
「言うこと聞かない子はお仕置きするがそれでも良いのかの?」
「解りました…楓夏先生…」
「宜しい…では、読み書きから始めようとするかの」
パチンと指を鳴らすと空間が机や椅子や黒板と言ったよく見る学校の教室と変わる。
それどころか体育館やグランドと云った施設まであり、あまつさえ生徒まで存在している。
どおやら学校丸ごと創り出した様だ。
生徒は幻覚でも楓夏の分身体でもなく霊界から呼び寄せた子供の幽霊や子供の妖怪や幻獣種の幼体まで居て、本体を通じて霊界や魔界に呼びかけると直ぐに集まり、全員ノリノリで協力してくれている。
「はぁ〜い…」(幽霊なのに学力って必要なのかな?)
専用空間に到着したと同時に何故あのタイミングで天音が依代に飛び込んで来たのか?
その理由を問い質す楓夏に対し、包み隠さずに話した天音。
語られた真実に驚愕したのと同時に、時が来るまで口外する事が出来ない事と判断した楓夏は天音に対して硬く口止めをした。
最初こそ、戦闘技術のみを仕込んで戦闘特化型の幽霊に仕立て上げようと考えていたのだが、天音が飛び込んで来た理由を知った事により、人間の子供と同じ様に育てようと決意する。
然し、面倒な事になったものだの…雲海が居たら大口を開けてバカ笑いされているところじゃ…
雲海のバカ笑いを思い出しながら天音を教育して行く楓夏は困惑と楽しみと責任がゴチャ混ぜになった想いを感じながらも天音を教育するのであった。
そして…
「おぉ…右近相手にニ身合一も出さずに善戦しているとはの…大したヤツじゃ…」
天音に修行と言う名のスパルタ教育を施し帰還した楓夏の目に飛び込んで来たのはレイと右近のガチバトルであった。
ほぅほぅ…霊気の制御も出来ているではないか…
コヨミもゆう子もなかなか…
あれが…パパとママとお姉ちゃん…
帰還早々、楓夏の中に居る天音が3人の様子を見て興奮している様子。
それに気が付いた楓夏が天音をけしかけようとするも、何故か拒否してしまう。
理由はと言うと、格の違いとやらを見せ付けられたからであろう。
(あんなの反則じゃない!?もっともっと強くならなければパパ達の役にも立てないよ)
(そんな事はあるまい?妾の見立てでは今のレイと天音の強さはほぼ互角と見ておるがのぅ…気になるのなら乱入するが良かろうて)
(良いの?)
(良い良い!役に立ちたいのてあろう?それに、何かあっても妾が助力する故、思い切り暴れるが良いぞ)
そんな天音を励ますのではなく、逆に煽る楓夏の言葉に迷う事なく突っ込んで行く天音。
「ウォッ!?…っぶねぇ…いきなり酷いよ!ふう…か…様………?
って…お前…天音か!?」
「ヘッヘ〜
当たりだよ
楓夏様相手に沢山修行した成果を見せてあげる!」
「私も忘れてはいけません…よっ!」
「うおっと…!!」
天音に気を取られて油断した所に右近の蹴りがボディめがけて飛んで来るのを紙一重で躱して一度距離を取る俺。
いやぁ…トンだハンデマッチになったもんだぜ。
タイマンガチバトルの筈が、いつの間にか2対1のガチバトルへと変化したおかげで混乱して防戦一方になってしまうレイであったが、それも束の間の事で直ぐに対応してしまう。
「それまでじゃ!予告の時間迄あと少し!それまでは休憩するが良かろう」
「あ〜ん…パパに勝てなかったよぉ…」
「てか、本気で勝つつもりでいたのかよ…おかげでクタクタだぜ…シンドイ…」
いやぁ〜まいったよ…
何がまいったかと言うと、2対1のガチバトルの筈が強化分身体まで出しやがっていつの間にか最大20対1の超ハンデマッチになってしまったから相手するのが大変だったぜ…
あぁ…負けはしなかったけど、倒し切れなかったよ。
てか、途中から天音ではなく楓夏様が出て来て右近とタッグなんてマジで勘弁してくれよ。
右近だけでもシンドイ相手だったってのによ…
「まぁ…その…アレだ…お主達があまりにも楽しそうだったのでな…つい…」
って…神様が言い訳してんじゃねぇ〜よ!
言葉には出さなかったけど、心の中では絶叫していた俺であった…
「皆様…お食事の用意が出来ています」
絶妙のタイミングで左近が声を掛けてくる。
ン?お茶でなく食事?左近ってお菓子職人かと思っていたけど、食事も作れるんだ?と、思っていたけど、この食事って…
「コレって…みず乃の和食御膳!?」
「当たりです」
驚いた!
出された食事がみず乃の和食御膳って、完コピしたのか?
…と、思っていたのだけど、左近の後ろに社長の姿が見えるって事は態々俺達の為に作りに来た?
コヨミなんかは2度と食べれないと思ってみたいだから感激の極みに達しているよ。
「では…頂きます」
楓夏様と左近と社長に感謝しつつ料理を食べたのだけど…
レイ?
料理を一口食べた俺の反応に驚くコヨミ。
そりゃぁ驚くよ…何故なら、俺の目から一筋の涙が流れていたのだから…
和食御膳自体はみず乃で見ているし匂いを嗅ぐだけでもその美味さは解っていたけど、こうして食べる事が出来るのが嬉しかった。それはあったのだけど、それだけでなみだなんて出る訳がない。
では、何故、涙が出たかと言うと
美味い…それに…メッチャ懐かしい味がした…
それだけに…
何も思い出せないのが悔しかった…
食う楽しみ感じる楽しみその他諸々生きる事全ての楽しみを奪った奴…ゼッテー許さねぇ!
改めて俺を殺した奴を探し出して落とし前を着けちゃる!
そう、改めて心に誓うのであった。