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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第6章 風神 楓夏
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第105話 洞窟内にて 3

「では、貴方方では、あの八岐の大蛇を消す事も風神も手に入れる事も出来ないと言う事ですね?」


「はい…遺憾ながら…

それに、数日前に妙な幽霊が我等の邪魔をしまして…」


「ほぉ…たかが幽霊如きに遅れを取るとは…要は貴方方が無能だったって事ですね?」


「なっ…では、貴殿がやるが良いでしょう?山本八郎座右衛門殿」


「ほぉ?どの口が言っていますか?消しますよ!?」


「お言葉ですが、我等は貴方の眷属ではありませんし、無能扱いされる言われも御座いません」


「貴方方の主である提督は村岡と名乗る幽霊と村岡の内に宿った悪魔に消されました」


「だからなんだと言うのです?」


「提督は強欲の眷属であり、その強欲は私の部下ですよ?ならば貴方方は私の兵隊同然だと申しております」


「理屈はそうだとしても、貴殿の命令には従えませんな」


「フンッ…まぁ良いでしょう…闇丸君と愉快な忍者集団50名を援軍に寄越しましょう。門を開放出来る事を願っていますよ」



大佐とその配下の妖怪は結界や封印を解除する事に特化している妖怪であり、戦闘向けではない。

魔界全土を見渡しても大佐以上の能力の持ち主は居ないとなれば、自らの一存で処分する訳には行かない。

となれば、援軍を送り込み邪魔者を消して仕事をさせた方が得策と考えた山本八郎座右衛門はその事を伝えて魔界へと帰還する。


魔界との行き来は出来てもコイツを何とか出来ない癖に…まぁ良い…あの幽霊を取り込む事が出来れば…


提督亡き今、ほんの少しの野望とレイと言う好敵手に勝利すると言う願望を叶える為に手に入れた力を使い熟す為、大佐は動き出す。


………

……


「ムズい…」


「注文が多いせいで大変だわ…ホント…」


「文句を言うでない!ホレ!もう一度じゃ!」


レイとコヨミは楓夏の依代を生み出す為に悪戦苦闘をしていた。

最初はただ単に分身体を掛け合わせるだけの作業かと思った2人であったのだが、楓夏が自由に動き回れる適切な強さの依代を作り出さないとダメとの事で、更に、自我が宿らない完璧なる器を創り出さないとならないのだ。

普段から自由に分身体を創り出している2人ではあるが、分身体を掛け合わせて依代を創り出す等という事をやるのは、これが初めてである。

更に2人が悪戦苦闘をしているのは分身体の精度の問題だ。

何せ小数点以下5桁迄完璧に同一のパーセンテージに合わせなければ、何方か強い方が弱い方を食ってしまう。

作業を始めて半日が過ぎたが、精密作業が続いているが為にさしもの2人も集中力が限界に来ていた。


「どおやら30%以上は無理が有るみたいね」


「25%で掛け合わせるのが1番良いみたいだな

てか、少し休憩しようぜ?幾ら何でも活動限界近いぞ…」


「そうじゃの…少し休憩としようかの

左近!お茶の準備をせい!」


「お…お茶…ですか?」


「ン?何じゃ?妾のお茶が飲めぬと言うのではあるまいな?」


「幽霊は基本的に飲食は…」


「何じゃ?お主達程の力が有れば実体化も可能であろう?」


「実体化…?」


「そうじゃ実体化したら軽い食事くらいは出来るぞよ?」


「実体化したら…?コヨミは知っていたか?」


「知らないわよ…それに、お腹も空かないし喉も乾かないから食べたり飲んだりしたいとも思わないわよ…」


「あたいも知らなかったです」


「まさか実体化出来ぬと言わないであろうな!?」


「そんな事はありませんよ」


「ならば良い…真智子も出てきてお茶をいただくが良いぞ」


「最高級の玉露を用意致しました

お茶菓子は草薙庵のリンゴ大福でございます」


「おぉ…これは美味そうじゃの…ホレ…お主達も頂かんか」


「「「「頂きます」」」」


こ…これは…


今まで、匂いだけで食べたり飲んだ気になっていたので気付かなかったけど、実体化するだけで飲食可能だったんだ…然も、ちゃんと味まで感じる事が出来るなんて…実に損した気分だぜ。

真智子に至っては、あの二人組みの1件以来、味が

感じられないからとの理由で食べるのは諦めていた様だし。


それに、食べた物は霊力に還元される様だな。みるみるうちに回復して行くのが実感出来る。

いやぁ…72時間ぶっ通しで楓夏様と組み手をしたと思ったら依代制作でヘトヘトだったから助かったぜ。

本当はこの空間が自然に出来た物なのか人の手で造られたものなのかとか調べてみたいのだけど、それは無理…だよなぁ…祭壇と祠は所々雑な部分が有れど当時の雨無村の村長が中心になって造られたものって判断出来るけどね。


「楓夏様…1つ質問があるのですが」


「ン?何じゃ?」


「この洞窟内には通路みたいな物が存在していないみたいですが、あの妖怪達は何処から来るですか?」


「あぁ…それはじゃな…」


俺が質問しようと思っていた事をコヨミに盗られちまったよ。

楓夏様の話では、妖怪しか通れない通路が在ってその通路を通ってやって来るとの事で、通路の先に妖怪門が存在しているとの事だ。

妖怪門は此処と雨土山に存在していて、其々管理している妖怪が居るとの事だ。

然し、最近になって此処を管理していた妖怪が何者かに消されてしまい、雨土山の妖怪門を管理している妖怪が此処の門を開放しようと画策しているとの事だ。


「因みに、此処の門を管理していた妖怪は凱旋坊と言う妖怪でな…またの名を…前川勘兵衛守定近と言う」


!!!


村岡ノートで散々考察されていた前川勘兵衛守定近

この名前を楓夏様から訊けるとは思わなかった俺はその話に思わず耳を傾ける。



戦国の世に突入する少し前、この地は濱田家と前川家の2つの勢力がこの地の覇権を争っていた。

その争いに勝利したのは前川家

その筆頭である前川善兵衛はこの地を争いの無い地にしようと奔走していたのだが、この地で収穫される豊かな農作物を狙った山賊や野盗共の襲撃が絶える事がなかった。

それならまだしも、この地に出現する妖怪達を捕獲して見世物にしようとする不心得者まで現れた。

強い妖怪なら捕まる事は無いが、弱い妖怪は為す術もなく捕まってしまう可能性が高い。

幸いこの地を塒にしている妖怪はこの地から出る事が出来ない為に捕まってもこの地から連れ出そうとしてもいつの間にか消えていると言った感じで悪用されていないが、今度はそのカラクリを調べようとあの手この手でチョッカイを出す輩が出始めた。

困り果てた善兵衛は、この地で一番強くて切れ者と言われている超獄丸と名乗る妖怪と対応策を話し合った。


超獄丸の話によると、妖怪門は雨降山と雨土山の2箇所に存在しており、その内の雨土山の門が稼働しているとの事。

雨降山の妖怪門は楓夏様が封じてしまったが為に悪用される事は無いだろうが、問題は雨土山の妖怪門だ。

然も、門を守る妖怪は固定ではなく定期的に交代しているとの事で、超獄丸も時期に魔界へと帰還しなければならないとの事だ。

今までは良い妖怪ばかりであったが為に、人間界への被害が抑えられていたが悪意が有る妖怪が門を守りに来た場合、人間界への進行が開始されてしまうとの事だ。

勿論、魔界側もそう言った場合は全力で阻止に動くが、後手に回ってしまう以上、どれだけの被害が出るか解らない。


「提案ですが、前川氏の方から誰か1人門番を出して頂けませんか?いや…無理なら良いですけど」


「なんと…」


「人間では妖怪門の門番をするのは無理があるとは解っていますし、先ずは妖怪へと転生させなければなりません。然し、魔界へも人間界へも睨みを効かせられるとあれば…」


う〜〜む…………………


この提案には善兵衛も驚いたのか、暫し熟考してまう。


その時…


「申し訳ござらぬが話は聞かせて頂きました…その役目…是非とも拙者に…!」


突如として乱入して来た若者。

この若者の名は定岡近元さだおかちかもとと言う名で前川家の馬番をしている者だ。

以前から妖怪について強い興味を示していた近元はこの話は千載一遇の好機と言えた。

この機会を逃せば二度と妖怪に関わる事は無いだろう。そんな気持ちが近元を突き動かし、無礼と知りつつ気が付いたら自ら名乗り出ていたのだ。


「殿!」


善兵衛にとってもこの申し入れは願ってもない事ではあるのだが、この者に過酷な運命を押し付けて良いのかと云う迷いも有る。

そんな善兵衛の迷いも知らずに近元は躙り寄る様に是非とも拙者にと決断を迫って来る。


「・・・あい解った!そなたを妖怪門の門番へと任命する!

今後は前川勘兵衛守定近と名乗るが良い」


「ハハッ!有難き幸せ!」


「暫し待たれよ…前川勘兵衛守定近とは如何様な意味が有るのですか?」


「フム…至極真っ当な疑問…勘兵衛とは閂を守る者…つまり、門を守る前川家の者…定岡近元…略して定近とでも言っておこう」


「・・・なる程・・・では、定近殿行きましょう」


「この御恩一生忘れはしません」


これで良かったのか…


超獄丸が作り出した結界に包まれて魔界へと連れて行かれる定近を見送る善兵衛は有能な部下を失った喪失感とコレで良かったのかと云った罪悪に苛まれる事になるが、全てはこの地の民の為と自分に言い聞かせるのであった。

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