第104話 洞窟内にて2
ほぉ?あの小娘は忍術らしき術を使っておるな…然も霊気の使い方が妖怪のそれと似ておる。
どこぞのお節介な妖怪に手解きを受けたか?
むぅ…っ!あっちの娘は明王の加護を受けておるか…海野三条と言うよりは神野命の系統か?
それにしてもあの男…
あれ程の者を宿して置きながらあの程度のヤツに苦戦しおってからに…なっとらん!
あの戦い方では負けるぞ!
其々の戦い方を観察していた楓夏であったが、レイの戦いを見てイライラが止まらなかった。
楓夏から見たら両者の力量を考えてもレイの方が圧倒的に上であり、瞬殺とまでは行かないものの、早々に決着させる事が出来ると考えていたからだ。
一方、レイはと言うと、楽勝出来るとは確信しているものの相手は妖怪。然も、どんな技や術を使うのか?またそれらをどぉ言ったタイミングで使ってくるのかとかを興味と好奇心を持って対峙していたのであって、別に苦戦している訳ではない。
対象者の力量を見抜けてもその戦闘スタイルまでは見抜けないのは仕方がない事だが、本来武闘派でもある楓夏にとってはレイの戦い方はイライラを募らせるものであったのは間違いない。
「な…なかなかやりますね…」
倒せそうで倒せない…
連打で追い詰め必殺の一撃を食らわせようとするのだが、紙一重で躱されてカウンターを貰ってしまう。
既に何発貰ったか解らない程に腫れ上がる少佐の顔。
本来なら幽霊の攻撃は妖怪には通用しない筈なのだが、何故かダメージが入ってしまう為に信じられないと言った感情に支配されていた。
ほら見ろ言わんこっちゃない
その感情を素直に受け止め気持ち切り替えた少佐は妖気を爆発的に高めレイを倒す為の力を欲す。
爆発的に高められた妖気は少佐の身体性能を押し上げワンランクどころかツーランク程押し上げ、それに併せて見た目も変化する。
「へぇ…そんな事が出来るんだ…驚いたな」
「二階級特進ってところでしょうか
これで貴方に勝ち目は無くなりました
貴方を倒し、風神殿を頂く事としましょう」
「それは…どおかな…っ!!」
右手に日本刀
左手には拳銃を作り出した少佐改め大佐はレイ目掛けて銃弾を2発発射し、間髪入れずに斬り込んてくる。
霊気刀で銃弾を斬った刹那、頭上数cm迄迫った刀がレイを斬り裂こうと迫る。
それを間一髪霊気刀で受け、そのまま鍔迫り合いになる。
「とったぁ!!」
その体制になったのをチャンスと見た大佐が持っていた銃をレイの腹部に当てて撃とうとしたのだが…
な…ん…だ…と…!?
先程から戦いたくて仕方がない様子の真智子が強引に出て来ようとしたのだが、楓夏が見ている手前それはダメだと拒否していたレイ。
然し、尚も強引に出て来ようとした真智子を抑えきれなくなり、結果…
「「ハァッ!?!?」」
真智子が不完全な姿で出てしまい、阿修羅の出来損ないとでも評価したら良いか二面四臂の姿に変化し、大佐を殴り飛ばして1度距離を取るも何でこうなったと困惑するレイと真智子。
「「「「2人で1人!?!?」」」」
これに驚いた全員が見事なハーモニーで驚きの声を発する。
それは大佐も同じで、レイを仕留め損なった事よりもどれだけ強くなるんだよコイツと言った気持ちになってしまい、つい
「戦力を整えて7日後に再び来るとしましょう
それまでに更に強くなっている事を願っていますよ」
と言って消えてしまう。
消えたか…
犯人を取り逃がした気分だぜ…てか、真智子!何時まで合体しているつもりなんだよ!?取り敢えず終わったのだから解除して……って……………出来ねぇ…………
てか、どおやってこの姿になったのか解らねぇ。
解らねぇから解除の仕方が解らねぇと来たもんだ!
「レイと言ったか?ちょっと来い!!」
何とかならないかと思案していた所に鬼の形相で俺を呼ぶ楓夏様。
基が美形なだけに怒り顔が怖く、逆らう事を一切許さないだけの迫力がある。
「言いたい事は多々あるのじゃが…何とかならんのかその姿は!?」
そう言われても、自力で解除出来るなら何とかしてるよ…ゆう子は俺の姿を興味津々で観察しているし…
「じゃあ、コレでどお!?」
バチコーン!!
何を思ったかコヨミがハリセンで俺の頭を思い切りぶっ叩くと真智子が奥に引っ込んで行った。
「先ずはその妙な姿を自在に操れる様にならないとならぬの…その前に…!」
マッタク困ったヤツじゃのと言った表情をしながらも先程の戦闘について楓夏様の説教が始まったのであった。
何か俺…怒られてばっかだよ…勘弁してくれよ…
………
……
それから3日後…
だから足元がお留守だと言っておろうが!
ドワッ!!
各々が各々の役割をシッカリ熟せるようにならぬとあの妖怪には勝てぬぞ!?
わ…解ってらい!!
俺と真智子はあのモードを自由に使い熟せるようになる為に楓夏様相手に不休でガチの戦闘を繰り返していた。
勿論、ゆう子とコヨミも遊んでいる訳ではなくコヨミは左近と、ゆう子に至っては天丸相手に戦闘訓練をしている。
コミュニケーションをとれるコヨミと左近は問題なく訓練出来るが、問題はゆう子の方だ。
何せ天丸は人語は理解出来るものの、話す事が出来ない。
じゃあ、どおしているかと言うと、テレパシーとでも言えば良いのだろうか…意思を疎通させる事で会話が成立している様だ。(てか、ゆう子が天丸の言葉を理解したか?)
あれから大佐や大佐の手下からの攻撃は一度も無い。どおやら、奇襲を仕掛けてくるとか考えてはいない様だな。
まぁ、奇襲を仕掛けて来た所で俺達は楓夏様の完全隔離結界の中でやっている訳だから手出しは出来ないがな。
「ふぅ…暫し休憩中じゃ…幾らこの場に居る限り無尽蔵に活動出来るとは言え、何せ分身体の身では限界があるからの…そうじゃ!レイとコヨミ!お主達の分身体を掛け合わせて妾の依代を造ってはくれぬか?」
ブッ!!
何ですと?!俺とコヨミの分身体を掛け合わせて依代を作れだぁ?
それって俺達の子供同然じゃねえかよ!
まったく無茶苦茶言い出すのは勘弁してくれよ…とは言え、一度言い出したら引く事を知らない楓夏様のリクエストに応えなきゃならないのは自明の理なんだがね。
コヨミは良いとしても、俺の分身体に真智子の欠片の少しでも入らない様にしないとならないから緻密な作業を要求されるんだぜ?
どおなっても知りませんよ?
期待する目で俺達を見る楓夏様に予め断った上で作業を開始したのであった。
………
……
その頃…
やはり我等の力では、あの八岐の大蛇は消滅させられませんか…
大佐とその仲間は楓夏が施した八岐の大蛇を何とか排除出来ないかと奮闘していたのだが楓夏の力を超える事すらできないとあって無駄な努力を繰り返すのみであった。
幾ら神と言えど、元を辿れば1妖怪でしかなかった楓夏は人間界で言うならヤンキー娘で手の付けられない存在であった。
そんな楓夏の素行の悪さに業を煮やした兄の天雷が精神修行と称して水神 水面の下に送り、そこで修行させた。
その結果、神としての力に目覚め風神としての地位を不動のものとしたのだ。
例え神であってもその力を上回れば八岐の大蛇を排除出来ると考えた大佐は配下の者たちを総動員して排除を試みていたのだが、その全てが徒労に終わってしまう。
何故、彼等がこんな事をやっているかと言うと、この地に設置されている妖怪門を開放出来ると魔界の行き来が容易になるからであり、そうなると、妖怪軍団を呼び寄せ一気に人間界を征服する事も可能になると考えたからだ。
「何時までやっているのですか!」
何としても楓夏の力を手に入れないとならないと覚悟を決めた時、突如として響く老人の声。
「これはこれは山本殿…何故この場所に」
声の主は山本八郎座右衛門と言う魔王配下の中でも一二を争う程の強者である。
ニ面四臂って…なんすかそれ…