番外編 漫画王決定戦〜予選を突破せよ!
同時多発事件の時、ミキの襲撃に失敗した生徒達の腹いせにより極めて卑猥な文言と共にミキの個人情報がネット上に晒されてしまっていた。
書き込み自体は直ぐに消されたものの、消される前に視た者に書き込みを切り取られ拡散されてしまい、その書き込みを信じ込んだ変態男達が禁断の快楽を求めマンション付近を徘徊する様になってしまう。
男共の徘徊理由を知ったミキは事の経緯と浦川屋に書き込まれていたスレッドとネット上に個人情報を晒された事を森田警部に通報した後、理事長に訴え学園を去る事を伝える。
勿論、良い人材を手放したくはない理事長は引き止めはしたものの、ミキの決断は固く受け入れざるおえなかった。
学園を退職したミキは知り合いの勧めにより俊哉の仕事場に近い場所に在る塾の講師として新たなスタートをしたのは良いが、相変わらず変態男共の徘徊は収まらなかった為に引っ越しを余儀なくされる事となったのである。
「悪いけど、暫くの間はこの部屋に寝泊まりさせて貰うけど良いよね?」
「ハァ?」
「ハァ?じゃないわよ
アタシが変態男共に自主規制がかかる事をされても良いの?」
「そりゃダメだ!」(それが出来るのは俺だけだ!他の男になんか渡さねぇ!)
「じゃぁ、良いわよね?」
「解ったよ…但し、自分の事は自分でやる事が条件だ」
「何よ!?せっかくお礼に手料理を振る舞ってあげようと思ったのに!」
「距離が近過ぎたらレイ達にどんな弄られ方をするか解らないぞ?」
「・・・納得・・・」
「だろ?」(妖怪でも嫌がる様な地獄の料理なんか食えるかっての!)
職場に近いからと言う理由から一方的に俊哉の仕事部屋に居候する様子で、既に必要最低限の物は元の部屋から運び入れている。
本音はレイ達の監視とイザという時は俊哉に守って貰えると言った理由からであり、今の所恋愛感情から来ているとは言えない。
一方、俊哉の方はと言えば、元カノとは言え現在は付き合ってもいないし何にしても壊滅的な味の料理しか作れないミキの手料理を食べさせられる訳には行かないと言った心理が働き、自分の事は自分でやる事を徹底する事としたのであった。
「まぁ〜たくだらない漫画を描いてる」
「今、1番勢いがあって面白い漫画を描くのは誰だ!」と言うコンセプトの下に2年に1度開催される漫画王決定戦(通称 画王決定戦)に出品する作品を制作中なのであるが、画力は高いもののその他は壊滅的な俊哉は一度は挫折したものの、レイと出会ってからと言うもの、レイを題材にした漫画を描きたいと言った気持ちに取り憑かれた俊哉はレイを口説き落として漫画を描く事を承諾させる。
其処までは良かったのだが、俊哉が描く漫画はどの出版社にも相手にされていない為に画王決定戦に応募しようと決意したのであった。
そんな事とは知らないミキは俊哉の考えを知らずに揶揄したのである。
「画王決定戦ねぇ…懐かしいわぁ…コレを出すの?どれどれ…?
何コレ…50点!」
何時の間に来たのか、俊哉の説明を訊いていたコヨミが先程まで描いていた原稿を取り上げ読み始めてしまうも直ぐにダメ出しをしてしまう。
コヨミの判定は出版社で言われた事と同じで絵は良くてもその他は全然ダメとの事だ。
この作品で予選を突破を狙っていた俊哉にとってこの判定は痛すぎる。痛すぎて落ち込んでしまった程だ。
落ち込んだ俊哉の姿を見て流石に言い過ぎたかなとは思ったが、そのレベルで出品しても予選突破は夢のまた夢だと言う事くらいは解る。
と言うのは、コヨミもまた1度だけ画王決定戦に挑戦した事があり、予選突破は出来たものの本戦で最下位に終わったと言う苦い経験をしているからだ。二人のやり取りを訊いていたレイが
「オイオイ大丈夫か?俺を題材にして漫画を描くんじゃなかったのかよ」
と口を挟んで来るが、現状ではどおしようもない。
「〆切は何時?」
「10日後です」
「ギリギリ間に合うか…」
「あの…貴女は…一体…」
「あぁ…何も知らないのは仕方がないわよね…あたしは朝田桃子って名前で…」
「えぇっ!あの朝田先生が貴女だったのですか?」
「・・・だけど・・・何?」
「実は私…朝田先生のファンでした」
「ありがとう…でも、飽くまでも過去の事だからね!仕方ないわね…あたし達が協力してあげる!」
「あたし達…って…俺や真智子やゆう子も手伝うって事か?」
「当たり前でしょ?何か文句ある!?」
「な…無いです…」
「じゃあ、レイとゆう子はキャラのイメージを掴む為のモデルをして貰うからそのつもりで。真智子は俊哉君のアシスタントをして!」
「あの…」
「私も何か手伝いたいのだけど…」
「ミキさんは…食料の買いだしをお願い!あぁ…調理が必要性のない物が良いわね…描きながらパクつける物ね!」
「では早速行ってきます」
「さぁ!コレから館詰めで仕上げるわよ!?」
「で…題材の件ですが…」
この言葉に引っかかりを覚えたレイが反論しようとしたのだが、全員で協力した方が早い!と強く主張するものだからレイと真智子そしてゆう子までもが予選突破する為の作品の作成に協力する事となったのである。
「その考えは1番オーソドックスで描きやすいけど、それでは内容がベタになり易いって解らない?」
主催者側から提出されたお題は、有名少年誌に連載中のAのエピソードを利用して50ページ以内で読み切りを描けと言うもの。そのAの中から罠に嵌められ衆人監視の中、処刑されそうになった主人公が自らの力で切り抜けると言ったエピソードから読み切りを描こうとした俊哉。コヨミから言わせれば、話を作り易いエピソードだし内容もベタになり易いとの事だ。
「では、何処から作れば…」
「そうね…此処なんか良さそうじゃない?先祖代々から継承されて来た宝を盗賊に奪われそうになった時、主人公御一行に助けられた少年が仲間を集めて冒険の旅に出る。コレ…考えようによってはバリエーション広いと思うけどな」
かくして始まった予選突破への作品描きを始めた俊哉達は〆切当日の朝に出来上がり、提出する事となったのである。
果たして結果は如何に・・・
続きは後で書きます。