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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第5章 ワンダーランドの落日と妖綺譚
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第99話 妖綺譚 8

弥太郎を食った者(者と言うより獣と言った方が良い)であるが故に血の気が失せる勘太郎ではあったが、直ぐに安堵の表情になる。


「こ…こら…地丸!いつもいつも…止めるだよ」


地丸と同じ姿形をし、同じ反応をしたら幾らオラでもそれが別の個体だと解る筈が無い。

だからこの者を地丸と呼んだのだが、どおやらこの者もオラの身体に地丸の匂いが染み付いていたのを嗅ぎ付けてジャレついた模様。


「・・・お主・・・地丸ではねぇのケ?」


地丸の名前を聞いた途端にジャレつくのを止めて不思議そうな表情でオラを見詰める犬っころ…そうか…この犬っころが山神様の言っていた天丸か…見れば見るほどそっくりだなや…とすれば…勘太郎の前にいる子供の姿をしている方が風神 楓夏様だか?

山神様の話では絶世の美女だと訊いていただが…


「ほぉ?天丸がジャレついたとなれば、お主は雲海と面識が有るな?」


話し方はドオでも良いだが、その内容からすれば間違いなくこの方が楓夏様となるだな。それが証拠に何時もは騒々しい程に巫山戯る騒児が萎縮して畏まっている。

なので、オラはこれ迄の経緯を楓夏様に話しただよ。


「では、雲海のヤツは無事なのだな?」


「はい…此処に控える者が何よりの証拠ですだ…」


「おぉ…闇小僧ではないか!息災で何よりじゃ」


「僕は大丈夫なんだけど、雲海様は回復しきらない様子で楓夏様が持つ宝珠”神気玉“をご所望されています。

その為にこの五平に霊薬を託されたのです。」


騒児は名前が無いと言っていたけんど、闇小僧って立派な名前が有る?山神様はそこまで教えてくれなんだから何が何だか解らねぇだ。

まぁ、今はそっただ事を言っている場合じゃねぇだよな?オラは山神様に教えて貰った通り、勘太郎を元に戻して下さいと楓夏様に頼み込む。


「やっぱりこの子は雲海の…良かろう…」


勘太郎の額に両手を翳して何やら呪文らしきものを呟く楓夏様。その手から神々しい程の光が勘太郎を照らしだしている。


喝!!


やがて気合いと共に男の子から女の子の姿に戻って行く千代。

今迄、男の子だったから解らなかっただが、母親に似て美人に育っていただ…こう言っては何だがオラに似なくて本当に良かったと思う程に…


等と考えている場合ではないだよ!今はこの辺一体の日照りを解決するのが先決だべ!なので、村の現状を話して雨を降らせて貰えないかと相談すると


「それについては妾も申し訳ないと思っている…この傷から立ち昇る瘴気が日照りを呼ぶのじゃ。

雨乞いの儀式と称して村人が持ってくる薬で症状は和らげる事は出来てもそれは応急処置にしかならぬ。

雲海が持っている霊薬が無いと完全に治らんのじゃ」


そう言って、背中に深く刻まれた傷を見せる楓夏様。良く見なくても黒く爛れたその傷から禍々しいオーラが立ち昇っているのが解る。

その傷は悪妖怪である氷柱と戦った時に付けられた呪いの傷であり、今も尚、楓夏様の身体を侵食しているとの事。

楓夏様は何代か前の村長と遭遇した時、事情を話しして雨土山に居るであろう雲海様から薬を貰って来て欲しいとお願いしたまでは良かったが、村人があの迷いの結界を通り抜ける事が出来なかった為に代わりに応急処置程度ではあるが薬を造らせて持って来る様に依頼。

そして、日照りが続くとそれが合図に雨乞いの儀式を執り行い、年頃の娘が治療薬を持って楓夏様の治療を行いに来るのだそう。

日照り神と言うのは、楓夏様の存在を知られたくなかった当時の村長が事実を捻じ曲げて伝えた嘘だと言う事だな。

まぁ、そうでも言わないと邪な考えを持って接近する村人が出ないとも限らねぇからな。

そんな事を考えながらも山神様から頂いた霊薬を千代に渡して楓夏様の背中の傷に塗らせる。


「凄い勢いで傷が治って行くだよ…」


驚きのあまり目を丸くして驚く千代。まぁ、山神様の神通力がタップリ入っている薬だで、効果の程は言うまでもないだろうな。


「フム…漸く身体が軽くなった…五平と千代と言ったな…礼を言う。」


楓夏が二人に対して礼を述べると「山神様との約束を果たしただけだべ…大した事をやった訳じゃねぇべ」と謙遜する五平に対して僅かであるがムッとする楓夏。そんな楓夏に対して


「申し訳ねぇですが、村人や村長も千代を男の子と扱ってくれただが、弥太郎の…此処まで千代を運んで来たあの男だけには見破られていただよ

楓夏様は何か解らないだか?」


「うーむ…妾は後ろ姿をチラリと見ただけなので何とも言えぬのう…」


と疑問に思っていたことを楓夏に問う五平。この問い対して答えを持たない楓夏は返答に困ってしまう。


と…そこに…


その問いに対しては私が答えましょうと男が脇から出て来る。


(お…オラ…こっただ美形に出会ったのは初めてだ…)


先程は黒いフードを被っていたのと暗がりであった為にその顔まで解らなかったが、女性と勘違いされてもおかしくはない程の美形の男がそこに居た。勿論、村人にもかなりの美形の男は存在しているが、比較対象にもならない。


「右近よ

あの男は何者か?」


舞謙草の効果は楓夏も知っている。その効果があの男には効かなかったのはそれなりの理由が有るに違いない。

楓夏もまた興味津々で男の返答を待つ。


「あの男の腕を持って解ったのですが、あの男は間違いなく半妖です。」


「ナント…半妖とな…」


「はい…その正体までは解らなかったのですが、かなりの悪党か強者と考えて良いかと思われます」


「半妖…と言う事は…」


「…あの男の親の何方かに人間に化けた妖怪がいたのでしょう。

舞謙草は人間には効果がありますが妖怪には殆ど効果は無いですからね…

恐らくはあの男の中に流れていた妖怪の血が舞謙草の効果を打ち消していたでしょう」


「なんと…混血であっただか…で…その弥太郎は何処に?」


バウッ…


弥太郎についての話をしている時、タイミング良く何かを咥えた天丸が五平の前にそれをボトリと落とす。事の顛末を知っている千代が見たくないと言わんばかりに目を背けると気持ちは解ると言いたげな表情で右近が


「それがあの男の成れの果てです」


と説明すると


「弥太郎のヤツ…オラに殴られたくなくて詫び代わりに腕一本置いて逃げやがったか」


と的外れな事を言い出す。

天丸にジャレ付かれた時、天丸から血の匂いがしていのに気が付いていたし、恐らくは弥太郎だと想像もついていた。

五平は天丸が食ったのは弥太郎だと確信したかったが為に態と訊ねたのだ。

この五平の言葉に

イヤイヤ…ソレは絶対ないから

と天丸を除いた全員が心の中でツッコミを入れるも誰一人として声には出さなかったのであった。


「あの…ご歓談中申し訳ありませんが…」


4人の話に完全に置いてけぼりと言うより存在自体を忘れ去れていた様子の騒児が申し訳なさそうに神気玉をと急かそうとすると、慌てた様に楓夏が取り繕った表情のまま、本来の姿に戻り祭壇に置かれている直径30cmはあろうかと思われる透き通った珠を手に取り舞い始める。


う…美しい…


優雅に力強くそして優しく激しく舞い踊る楓夏の姿は誰の目に見ても美しいとしか表現出来なかった。

そして、楓夏が舞えば舞う程、その輝きを増す珠。

珠の輝きがまるで太陽かと思える程に輝いた時、楓夏の舞も最高潮に達する。


「コレが宝珠 神気玉じゃ…コレを持って行くが良い…おっと…闇小僧…悪いがソナタにはこの珠を触らせる訳には行かぬ

この珠に意思が有り、妾と雲海以外の者を嫌うのでの…

他の妖怪が触ると瞬時にその力が失われ、その後人間界での時間に直すと1000年は使い物にならぬのじゃ…」


「では…五平に渡すのもダメだと言う事になりませんか?」


「ウム…そうなのじゃが…コヤツは雲海の加護をしかと受けている故、問題は無かろう

その為に舞謙草や霊薬を与えたりしたのだろう?」


「な…なる程…」


「そう言う訳じゃから、五平よ申し訳ないが雲海の所へ行ってはくれぬかのう」


何だかハメられた気持ちになりながらも自分にしか出来ない役目だと受け止めた五平であったが、雨無山から雨土山迄の距離は15里もある。

その距離を行き来するのは1日では到底無理がある。

その事を話すと、突如として天丸が3体に分かれその内の一頭が五平の横に伏せる。


「その天丸は空を駆ける事が出来る

そヤツの背に乗って行くが良い」


うすうすは気付いていただが、天丸も地丸と同じで人語を理解出来るだな。まぁ、会話は出来ないみたいだが…

此処まで来たら拒否は出来ないだよ…オラは天丸の頭を撫でながら宜しく頼むだよと言うと、任せろと言わんばかりにバウッと返事をする。



………

……


コヨミ「ねぇ」


レイ「ん?」


コヨミ「途中、五平の言葉でなくて説明口調になっているのは何でなの?」


レイ「あぁ…それはだな…その辺の記述が本編の方は殆ど会話だけなんだよ

だから、翻訳したヤツが会話の内容から推理して書き加えたって事じゃね?」


コヨミ「そうなんだ…」


真智子「しっかし…弥太郎が半妖だったなんてね…当時の雨無村には弥太郎みたいな半妖が何人も居たのかな?」


レイ「あまりネタバレはしたくはないんだけど…半妖は弥太郎だけだったみたいだぞ?

後は、3代以上前に居たみたいで妖怪の血はかなり薄かったみたいだけど、何れも病弱だったり短命だった様だな」


真智子「そうなんだ…だとすると…美代も?」


レイ「さぁな…全ては偶然かも知れないし仕組まれていたかも知れない…今となっては確かめる術はないよ」


コヨミ「でも、妖怪は山を超えられなかったって話しだから流石にそれは無いんじゃないかな?」


真智子「でも、あの戦い以前から妖怪はこの地を出入口にして行き来していた訳だから、有り得ない話ではないよね?」


コヨミ「うーん…タイムマシンが欲しいわね…」


レイ「確かにな…てか、漸く最後が見えて来たぞ」


コヨミ「次、行ってみよー」


真智子「それ…誰のモノマネ?怒られても知らないよ?」

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