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第9話 兄弟たちは本音を話す。

毎日更新できてなくてすみません。所用で海外にいるためラグがあります。



そっくりな顔が私を見つめている。

どうやらある程度私のことを調べ上げたらしい。

そのために問い詰めているのだろう。


「私が言わないって選択肢はあるのかしら。」

私は意地悪に答える。


「そうだな。正直おれらも普通の人助けに近いものと思ってあんたを救ったがどうやらそうでもないらしい。

そして仮にも今はおれたちに攫われている。味方がいない状況でおれたちの協力を拒むメリットはないな。」

アレンは続ける。


「はっきり言おう。よく正体が分からない人物を背に行動することは、おれは信頼できない。そして、それはゲルダも同じことを考えているとは思っている。」

確かにその通りだ。

私はこの2人をまだ信頼していない。

あの領主よりかは良さそうな人だけど、比べる要素が大きく違う。


「そこで、折角ならその能力を見せて証明して欲しい。もしかしたらおれらの戦力になりうるかもしれないし、ゲルダの個性を知ることにもなる。一挙両得になる。」

なるほど。

これは譲歩されてるのか。でも私だってそれだけじゃ譲れない。


「いいわ。でも、それならあなたたちも一般の人には無い能力があるんでしょ?それを話してよ。」

これでお互いの素性、というか武器を明かすことになる。

未知だったものがやっとクリアになるのは安心感を覚える。

アレンはそれを聞いてやや驚きの表情をしている。

「驚いた。すんなり従うかと思ったけど、そうもいかないか。ふふ、面白いな、いいだろう。話してやる。」


アレンは買ってきたリンゴを紙袋から取り出す。

そしてヘイマンに渡す。

「絞りたてのジュースにしてくれ」

「はいよ。全くお兄ちゃん使いが荒いんだから。」


そう言って文句を垂れながらもリンゴを片手で握りながらジュースにしていく。

リンゴを割るのですらとてつもない力が必要なのは知っているが、今更リンゴくらいでヘイマンの力は驚かない。


「兄貴の能力はもう見てのご存知、強力なパワーにある。そして酷く潔癖だから気をつけるように。」

潔癖なのか。

だからずっと手袋をしていたのか。

今はリンゴを絞るために外している。


「それとおれにも能力があるって話しだったか。お察しの通り、おれは相手の感情の流れをある程度把握できる。つまり気持ちが視える。」

やっぱりか。

じゃないとあそこまで人の気持ちに切り込むのは容易ではない。


「さぁ。タネは明かした。お得意の神託とやらをご覧になりたいね。」

アレンがにやりと笑う。

これが皮肉に聞こえるから嫌なところ。


「…分かった。でも今日はあんまり調子が良くないから、大したことないわ。」

私は息を整える。そして唱える。


「今生の世を見据えた我が神。どうかお力添えをお願いします。」

私はひたすら一心に頭を集中させる。


「此の先の運命をお導きください。」

この宿に入ってすぐはなにもなかったのに、頭にぼんやりと景色が思い浮かぶ。

景色に出てくるのは、多くの兵士に囲まれた、私?掠れてノイズが入る。

予知はそこで終わってしまった。

「…視終わったわ。多くの兵士に私が囲まれていた。」

「兵士?」

ヘイマンが口にする。


「僕が今朝制圧したんだけどな。なんでまた。」

「兄貴、もしかして生き残りが居たんじゃないか?しっかり確認したか?」

アレンが口を挟む。


「いや、吹っ飛ばして伸びてたからそこまでは、4人だったよ。」

「もしかしたらまだ1人くらい居たかもしれない。尾けられていたかもな。」


「うわぁ。マジか。そうは言っても今日はゆっくり休みたい。」

ヘイマンがベットに倒れこむ。

「もし敵に追いつかれていたとして、夜襲か夜明けに叩き込まれる。どっちが可能性ありそう?」


倒れたままヘイマンはアレンに尋ねる。

「そうだな。人員を集めたりすることを考えると…夜までに、よりも朝に集めた方が数は揃えられる。夜襲の確率は20%くらいとみた。」

アレンは難しい顔をしている。


「よっしゃ。アレンが言うならきっと朝だよ。もう寝よ寝よ。」

ヘイマンは布団を被ってもうなにもしたくないポーズをとっている。

大の字になっている。

もう寝る流れだと悟り、私は寝る前にトイレへ行くために部屋を後にする。



~~~~~~~~~~~



「ゲルダは行った?」

ゲルダが退室して、少し待ってからヘイマンはアレンに尋ねる。


「あぁ。居ないぞ。」

アレンはヘイマンの布団を叩いてヘイマンが起き上がる。


「さっきは突っ込まずにはいられなかったよ。笑いそうになった。」

「ん?なにがだ?」

「もう演技しなくていいよ。さっきの能力の話し、ハッタリかましすぎ。」

ヘイマンは呆れて言った。


「あぁ。それか。だって仕方ないだろう。手の内は明かせない。」

アレンが愚痴る。

「本当にエグい懐柔の仕方だわぁ。ゲルダ信じちゃってるよ、アレンが特殊能力あることを。」


アレンは悪い笑みを浮かべる。

「ある意味特殊能力さ。おれはシンプルに人の感情を逆撫でることも操ることもできる。特殊能力が無くても、おれの観察眼は誤魔化せられない。」

「全く。頭が回る奴は怖いっていうのは、あなたのことだよ。アレン」


そう。

アレンはヘイマンのように特殊能力なんて無かった。

力に恵まれた兄のヘイマンと、何の才能にも恵まれなかった弟のアレン。


そんなアレンがヘイマンに信頼されるまでに至ったのは兄弟愛なんて温いものでは無かった。


そして街には朝が来る。


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