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第46話 兄は抜け出す

久しぶりの更新です。

お待たせした皆様お楽しみください。




「スーが帰ってこない。」

私たちが宿へ帰り訳を話す前に、腕を組んで渋い顔をしているアレンが居た。


よっぽど心配していたんだ、流石兄弟だなと思っていたら表情だけは心配して体はベッドに深々と鎮座していた。

どっちなんだ。


「入れ違いだったのかな?にしても最後まで姿を見せないなんてことあったっけ?」

ヘイマンがアレンに確認を取るように聞く。



「おれたちとスーは前からずっと一緒にいたわけじゃない。おれと兄貴で今の仕事をした頃に置いてきたんだ。だからおれたちの予期しない行動力があってもおかしくはない。」

しかし返ってきた返事は浮かないものだった。


「…最悪連れ去られたとか。」

私がボソッと呟く。

「あるかもな。」

間髪を入れずにアレンが答える。


「そうなるとマズいよね?スーは子供だから抗えないよ。」

ヘイマンの心配を聞いて「おや?」と感じた。

私の記憶が正しければ、つい最近スヴィンに出会い頭拘束されたんですけど…。

「いや流石にスーでも自衛の心得みたいなのはあるかと思うが、まぁそれでもどうにもならなかったのかもしれない。」

アレンは立ち上がり部屋をうろつく。

そして私の傍までやって来て耳元で耳打ちする。

「兄貴はスーに関して多少のお痛や悪さは目に入ってないんだ。スーが大好きだったから。」


すまんという手でアレンがヘイマンに代わって謝る。

通りで変な食い違いがあると思った。

結構私派手に拉致っぽくされたけど、ヘイマンはどういう風に見えてたのか率直に気になった。

分かったとアレンにだけ聞こえる声量で答える。


「探しに行く?」

当然心配しているヘイマンから提案がくる。


それを聞いてアレンは即答せず、少し悩んでから答える。

「いや。冷静に考えて今日は遅いしおれたちも疲れている。

スーには悪いが明日以降に探してみよう。その代わり明日は早起きだぞ。」

アレンは冷静に判断した。


確かに私達も実感していないけど予想以上に疲労は溜まっている。朝までスヴィンを探すよりも一度睡眠をとって疲労を取ることが優先なのかもしれない。

けどここで探さないってことはアレンは最悪の想定の上で考えているのかもしれない。

さぁ寝るぞ寝るぞとアレンは言い終わらない内に私達に背を向けて横になる。


私はアレンがそう言うなら他にする手立てもないのでベッドに座る。


「そうだね…。それが1番良い選択だもんね。」

ヘイマンはどこか悔しそうに呟く。

私に言われた訳ではないけどどこか私にも胸に痛い言葉だった。


「ヘイマン…大丈夫?」

私はスヴィンのことを濁すようにヘイマンのことを気遣うように聞く。


「…ゲルダは優しいね。大丈夫だよ、ありがとう。」

ヘイマンは笑顔で私の言葉を返す。


けど私はいつもの表情ではないと咄嗟に気づいてしまった。

いうほど長くヘイマンと一緒にいるわけではないけれど、私たちみんな揃っていた時の表情よりもどことなく渇いた笑みを溢した。



普段と違う様子を私は直接ヘイマンに言えなくて、私は逃げるようにベッドへ潜りこんだ。

何か他に励まそうかと逡巡したがどうにもならないことでは仕方ない。


私が目線に困りアレンの方を向くとこちらをそっと見ていた。

何も言わなかったけど、多分”早く寝れば良かっただろう”みたいなことを目で言っていたと思う。


言いたいことは分かるけど、私はヘイマンが辛いときに寄り添ってあげたい気持ちを優先したかった。


けど他の人を憂う気持ちはその人以外には伝わらないし伝われない。私がどんなに心を痛めてもヘイマンへは一向に変わらない。それを分かっているけどヘイマンの気持ちが少しは晴れればいいと思った。けどまだそのタイミングには早かったのかもしれない。


また明日タイミングを見て言ってみよう。


私は目を閉じ疲れていたからか暗闇の中微睡んだ。



しばらく静寂な部屋の中、微かな音と共にベットから1人這い出た。



彼は起こさないようにこっそりと扉を開けて外へでる。


その様子を耳立てて動かずにいる弟は天井を見つめながら


「結局こうなるのかぁ。」

とひとりごちた。




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