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第45話 兄は末っ子を待つ。

また時間は空きましたが更新です。毎日若干の人がアクセスしているの嬉しいです。待たせてしまってすいません。45話です。




私たちが食堂で食事を済ましても一向にスーたちは現れない。

食べ終わってやることもないので周りの人に視線を向けていた。 

食堂にいるのは若い人が多い印象でやや騒がしい人が目立ち、活気づいていた。


食堂とは言っていたけどお酒も出すようで半分酒屋と変わりなさそうな雰囲気だった。

ヘイマンと一緒に大人しく時間を過ごしているとそのうちの1人が私たちに気づいて寄ってきた。


「おいおいあんたら飲まないのか?時化た空気だが明るくやらないか?」

分かりやすく酔っぱらいが絡んできた。

こういう絡みをしてくるのはおじさんかと思ったが、その酔っぱらいは顔が少し老けているだけで私たちと年齢はそう変わりなさそうだ。

私はこういうのに慣れていないのでびっくりして狼狽える。 

ヘイマンに助けてと視線を向ける。


「僕たちは僕たちでゆっくりしているんだ。同じテンションじゃなくて申し訳ないけど他をあたってくれ。」

ヘイマンがやんわりと断る。


「なんだ、あんたら付き合いたてなのか。そりゃ悪いことしたな。」

老け顔の青年が勘違いして戻っていく。

いや勘違いも嫌だけど、この人とはもう会わないと思うから弁明しなくてもいいかな。


青年は素直に去るかと思ったけど立ち止まりジョッキを片手に私たちへ振り返る。

「その手袋…あんたもしかしてヘイマンか?」


思わぬところで身元がバレた。

まさかこんな所でヘイマンのことが知られてるなんて。

もしかしてこれはまた賞金を掛けられて捕まりそうになるのでは…と私は危惧した。


"至るところにおれたちの顔が張られてたから悪い扱いを受けることになるかもしれない"とアレンが話していたのを今思い出した。

「ヘイマン…どうする?」

私はヘイマンにそっと耳打ちする。

ちょっと様子を見よう、とヘイマンがアイコンタクトを送る。

「そうだけど、どうかした?」

ヘイマンはなんなく青年の返答に答える。

私なら堂々とそんな自己紹介はできない。


「お前、忘れたのか俺のこと。」

青年がヘイマンに詰め寄る。

一触即発の雰囲気漂う中、青年がヘイマンへと手を伸ばす。

「お前忘れたのかよぉ〜俺だよラリーだよ!」

青年が嬉しそうにヘイマンへと話す。

先ほどと違ってより楽しそうに唾を吐いて喋る。 


(なんだ知り合いだったんだ。)

私は胸を撫でおろした。

ヘイマンの人の良さが人脈の広さなのかなと納得した。


しかし当のヘイマンも驚きを隠せないでいる。

「え、ラリーって…最後に会ったのなんて何年前…?」

「ガキの頃だから知らねぇよ!元気してたみたいでなによりよ!!」

ヘイマンの肩を叩きガハハと笑っている。


「相変わらずの潔癖症は変わらねえみたいだな!お前らしいぜ。」

舞い散る唾。

「ラリーこそ相変わらず治安悪いノリと唾の飛沫は変わらないみたいだね。」

"くさ"と言いながら物凄い勢いで顔を拭くヘイマン。

「お前うるせぇぞ。一言多いのも変わってねぇや。」

唇をぶるぶるとわざとらしく唾を飛ばすラリー。


「そんなこと言って欲してるんだろ?あといい加減汚い。」

ヘイマンが軽快に話す。

ここまで砕けて話すのはアレン以外にないんじゃないだろうか。


「今は何をしているんだヘイマン?仕事とかやってんのか?」

ジョッキのビールを飲みながらラリーが他愛もなくそんなことを聞く。

誰にでも無難な質問なだけにヘイマンには特別困る質問だった。

昔がどうなのかは知らないけど今は窃盗団と変わりないからだ。



一度ヘイマンも動揺したようで目が見開く。


どう切り返すんだろうと思っているとヘイマンは笑顔で、

「旅をしながら用心棒として雇って貰ったりしてるよ。」と言った。

「ほぉ。それとあれか、この街のお偉いさんの所で働いてたりするのか。」

「警護みたいなところだけどね。」

ハハハと屈託なく笑って誤魔化す。


ヘイマンもアレンと似たように息をするように嘘をつくなぁ、と私は関心と複雑な気持ちになった。

ヘイマンはアレンよりも素直に生きてほしい。



「すげえな。お前は小さい頃からのスキルを今に活かしているわけなんだな。俺は全く活かせなかった。」

ラリーが何気なくヘイマンの過去のいったんに触れる。

「ラリーは今はどんな仕事をしているの?」


「俺は商売をしているのさ。まぁあまり儲けはないけどな。」

酒には惜しまないけどなと付け加えるラリー。


「お前がそんな良い職についているとは思わなんだ。いやお前の才能は昔から凄かったからこれは世辞じゃないぞ。お前が職に困ってたら一緒に働いたりしても楽しそうだったんだがな。」


「そんな儲けのない仕事をして僕は普通に過ごせるのかい?」 

冗談ぽくヘイマンが答えるが皮肉ってるようにも聞こえる。

「いやなに、前はあれだが最近軌道に乗ったんだ。用心棒としてしばらくこの街にいて困ることがあったら言ってくれよ。」

そういうとラリーは小さな紙を置いて


「2番街を進んだ家に住んでるからな。」と言って去った。

私にも手で会釈をして元の席に戻って行った。

私がヘイマンの顔を見ると

「いやぁ、思わぬ再会だったね。」

ヘイマンが一息つくように話す。

「なんかぼんやり聞いてたけど、ヘイマンが小さい頃からの友達なのね。」


私が聞くとヘイマンはそうそうと相槌をいれる。

「僕は子供の時に身体を強くするために道場に入ったんだ。その時の友達だよ。」

ヘイマンが細かく補足を入れてくれる。


こういう私の考えを汲み取ってくれるところはアレンと比べ物にならないくらい紳士だと思う。見習ってほしい。


すると食堂の中央から騒がしいベルが鳴った。

「今日は終いだよ。さぁ帰った帰った。」

どうやらもうここの営業は終わりみたいだ。


「本当にスヴィンとここで集合にしたの?」

私はヘイマンに確認する。

「そのつもりだったけど勘違いしていたのかな。いやでもここはお気に入りのお店だったから忘れてないとは思うんだけど…。とにかく一度宿に戻ろうか。」


私たちは来たときよりもこころなしか静かな帰路へついた。




まだまだこれから盛り上がってまいります!

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