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第42話 弟は起死回生を謀る。






してやられた。

おれらが優位に立ったと思ったおれの攻撃はまんまと相手に利用された。


兄貴は重傷を負って倒れて、おれも腹から出血をして倒れた。

床に倒れていると声が聞こえる。

「…なんとかなったわ。」

「上手く合わせられて良かった。君の能力が型にハマったね。」

ヨハンとマィア2人の会話。


「さっさと弟を回収するわよ。」

「そうだね。けどこの女はどうしようか。」


どうやら2人でこの先のことを話している。


「アレン…ヘイマン…そんな…。」

ゲルダからの声は震えていた。

おれが動かないままなのでもう死んでしまったと思っているかもしれない。

蚊のような消え入りそうな命で同じようなことかもしれない。


「命令では女は特に何も言われてないわ。殺して放って居ても良いんじゃないかしら。」


「そうだね。1人2人殺したところで変わらないね。」


マィアは能力を解除したのか壁に張り付いていたゲルダが床に落とされる

「すぐ終わるから楽にして欲しい。動くと切れ方がズレるから痛いよ。」

ヨハンの空気が変わる。

今からゲルダを処刑する気だ。


おれは激痛に激痛を耐えて胸にしまっていた薬の錠剤を飲む。

これはスーから本当に危ない時にだけ服用が許された薬。

開発したのはスーだが、身体に極度の負担がかかるという。今まで飲んだことはなかったが、この時飲むものだと指が勝手に動いていた。

おれは身体を起こす。

そして走った。

無我夢中で走ったからヨハンやゲルダにも気づいているだろう。

ヨハンはおれが傷だらけで捨て身の勢いでゲルダを助けに来たと思っているだろう。

しかし違う。

おれは走りながら身体能力が向上していることを実感する。ゲルダたちと距離があったがもう眼前まで迫って来ている。


ヨハンはおれへと迎え撃つ為に剣を構える。先からこの剣に痛いくらいやられた。もう同じ技は喰らってやるつもりはない。

おれは腹から出た液体に顔を一瞬強張らせる。

その動作を見ていたヨハンはおれの腹へと一撃を屠った。怪我をしていたおれなら痛みもあって派手に動けなくなってそのままやられていただろう。


しかしおれはゲルダから予知を聞いていた。

“これ”が絶対的なシーンを覆す切り札となった。


おれの腹は傷なんて負っていない。

こうなることを予期してスーから輸血パックの胴着を貰い受けた。

こうすることで万が一やられても出血しているように偽造できた。お陰で致命傷を喰らったらこの作戦はおじゃんだったので、お膳立てするのに時間がかかってしまった。


ゲルダの予知は完璧だった。前の予知もそうだったが1つ仮説を持った。

それは、予知はあくまでゲルダが見ている主観でしか予知が分からないことだ。


つまり予知をした状況を覆せないならその状況を意図的に作り上げないといけない。ゲルダの勘違いを誘発させることで、”本来の予知”よりも”違う未来”になるのではないかと考えた。


これを整えるまでにリスクも負ったし怪我も負った。だがおれは自分への立場を優勢にした。


おれのフェイクの表情にヨハンはベストな攻撃をする。しかしおれはそれを滑り込むように躱す。そして今にもぶつかりそうなマィアの脚に向かって銃弾を撃ち込む。


ヨハンに全幅の信頼を持っていたのか、マィアは咄嗟の事に反応出来ず弾丸を貰い受ける。

「痛っっったぁぁぁぁ!!!!」

地下へと響く声。そのままマィアを人質に取る。

ヨハンはおれへと立て直しを図ろうとするがおれは勧告する。


「やめておけ。お前の能力はもう見切った。」


「…!!何を…!」

おれの言葉に動揺を隠せないでいる。

黙って動けないでいるところをみておれは更に喋る。


「何故先ほどのように迫ってこない?それが出来ないからだろう。違うか?」

ヨハンのベストな行動はそのままおれに斬りつけること。しかしあることを考えて直ぐに動けなかった。


おれは問いかけるが、返答は無いので続ける。


「お前は一見完璧な立ち回りと攻撃の瞬間的な詰め方で無敵に演出していた。しかし何度か剣を交えてある疑問を憶えた。」


おれは一呼吸置く。

マィアを確認するとおれに腕を羽交い締めされて抵抗もしていない。脚の痛みが相当応えてるな。

おれは続ける。


「能力は長い時間続けることが出来ないんだろう。おれの攻撃を全て能力を使って逃げて来るのかと思った。しかし躱せられるものは極力自分の技量で防いだ。これだけでも凄い事だがおれは不自然に感じた。」


そう。ヨハンはタイミングと立ち回りは中々良かった。しかし能力者という点は揺るがないが何故能力をふんだんに使ってこないのかと考えた。


「ヨハンの能力を使った後ずっとカウントしたが、大体3分は超えた。どの攻撃も大体それくらいの時間を掛けて能力を使ってきた。つまり、お前の弱点は攻撃後のクールタイムだ。能力を使った後は直ぐに攻撃出来ないから形勢は良くならない。本当は早くに決着をつけたかったろうが、時間をかけすぎたな。」


ヨハンは苦しそうな表情を浮かべる。図星だな。そして大体は正解だったみたいだ。


おれはマィアに囁く。

「悪いがそういうことだ。あんたらと戦って命まで貰うつもりはなかったが、今の兄貴を見て気が変わった。残念だったな。」

おれはそう告げるとマィアは恐怖に身体を震わせる。そして足元が濡れていることに気づく。

失禁したようだ。


形勢は逆転。3分前くらいは絶望的だったが状況は圧倒している。

しかしおれは人質を取ることがベストな行動ではない。なぜならおれは彼らを圧倒するような戦闘力を持ち合わせていないからだ。腐っても能力者。凡人では太刀打ち出来ない。


ゲルダの様子を見ると、おれの方を見て固まっていた。…この反応だとどういう事なのか分かっていなさそうだ。


「アレンが…死んでない…?」

「予知を覆したんだ。ありがとうゲルダ。」


そう言われてもゲルダはまだいまいち分かっていなさそうだった。


さて、ここからどうしたものか…。

逡巡して悩んでいると、後方の地下室の扉が勢いよく開かれる。



おれたちは一斉に振り向いた。


予知のギミックを解き明かしたアレン、カッコいい、、、(自分で言うな)

無能力者のアレンと能力をふんだんに使うヘイマン。どちらも書いていて楽しいです。アレンの時はものくそ集中して書いてます。

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