第41話 兄弟は敗北する。
2ヶ月ぶりの更新です。皆さまお元気でしょうか。
この小説を書き続けて1年が過ぎました。時が経つのは早いですね。
かける時はたくさんかけるのに筆が進まない時のブランクを割と感じる後半でした。
来年はもう少し更新多めにしていくのが抱負です。
ブックマーク少しずつですが伸びました。日によりけりですが見てくれる人いつもありがとうございます。励みになります。
マィアはゲルダに能力をかけ直す。
ゲルダの拘束が解けたと思ったがどうやら腕と脚を氷で壁にくっつけた。
ゲルダも抵抗して抜こうと動いているが抜ける気配は無い。
これは2人で僕らと戦うという意志の表れだろう。
ゲルダの様子を見ると表情は先ほどより覇気が無くなっている。冷たい氷にずっと浸かっているのは見た目よりダメージがありそうだ。状況は時間をかけていると良くない。
先に動いたのはヨハンだった。一瞬にして姿を消して僕らの目前まで迫る。
来ると感じていたがさっきよりもコンマ数秒の速さで姿を現わす。
僕とアレンの間を割って入って薙ぎ払いをする。
僕は下に屈んで、アレンは後ろに後退して回避する。すると手前にいた僕へと追撃がかかる。
先程派手にやられた分、積もっている思いがあるのかもしれない。
彼の攻撃を避けながら、さっきまでは表情に差がなかったけど、今は瞳に感情を感じる。
アレンと一緒に行動することが多くなってアレンのような考察を持ってしまう。だけど油断できない。
ヨハンも同じ能力者だ。
ヨハンの迫る追撃が初撃よりも速く、僕は屈んだままだと避けきれないことを悟る。
「あ、マズい…!」
もう後少しで僕の身体は真っ二つになるというところで僕は考えに考えて手が出る。
身体の上体を片手に集約させて思いっきりバネを効かせて避ける。
急なことだったけど上手く躱せて足から着地する。前も似たようなことをしたけど前回よりも辛い。
腹筋が熱くなってるから筋が切れたのかもしれない。
僕は態勢を立て直していると横から発砲音が聞こえる。
アレンはマィアと交戦中だった。
アレンは柔軟な戦い方が出来るが能力者だと手数に分が出る。
マィアもアレン相手に一歩詰められていない様子だ。
この状況はどちらか一方がやられた方が形勢は逆転する。
しかし粘る時間は持ち合わせていない。
早くこの闘いを終わらせないと。
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いきなりヨハンが斬りつけてきた。
兄貴の方に狙いが定まってくれたおかげでおれは難を逃れたがうるさい女は見逃さないようだった。
マィアの頭上から細く長い槍が氷柱の様におれへと投げてくる。先程油断していたあの恐ろしい技。
おれはすぐ距離をとって走り回り標準を合わせることを難しくする。
その見え透いた態度にイラついたのかマィアの表情が怒り歪み槍が降る。
しかしおれは考えを改めさせられる。
おれが走った後に綺麗に槍が突き刺さる。
逃げ回るスピードもかなり出していたのによく狙いを定めてきてる。
しかし体感的には先程の初撃の槍よりもスピードはなかった。
あれは対処出来ない。
「冷や汗が出る。」
おれは感嘆の声を漏らす。
「凍らせてあげるわ。」
おれの声を拾ってそう返すマィア。
マィアは両手に地面を置く。
おれはその様子に違和感を覚える。
経験則が警鐘を鳴らす。
『妙な事をしているときは最大限に警戒しろ。』と。
するとマィアからおれへの距離と地面から氷の放物線が放たれる。初撃と比べ物にならないくらいの質量を伴っておれへと穿つ。
おれは銃で応戦しようと一瞬よぎったが直ぐに太刀打ち出来ないと悟り腰に取り付けていたグレネードを投げる。
通常のものと違い、スーから貰ったお手製で裂傷に優れた火力が高い投擲物だ。
轟音が鳴る。
地下なので反響が強い。正直、地下で爆発物を投げるのは正しい判断ではないが、自分の身を守るための最善の手段だった。
氷の放物線は波のように襲ってきたが、爆発によってもがれていた。
しかし全部は破壊しきれないことをみると相当な質量のあるものだと理解する。
おれの状況は悪化している。このグレネードは危険なこともあって1つしか持ち合わせていない。
火力がある武器が1つ無くなったのは手痛い。
おれは兄貴を横目で見てみるとヨハンの攻撃を大胆に躱している。
おれは自分がマィアに対して決定的な攻撃を仕掛けられない点から兄貴に若干の加勢をしようと先程から試みていた。ヨハンの攻撃は大振りで隙が出る。
スピードでカバーしているがその能力に制限があるのではないかという仮説を、おれは持っている。
兄貴がヨハンの攻撃を避けて体勢を整えているその間にヨハンは距離を詰める。
おれはこの機会を待っていた。
下げていた自分の銃口をヨハンへと分かりやすく向ける。
そして発砲。
この一連の動作に初めに驚いたのはマィアだった。
何故なら彼女はおれと戦って戦力を分散させようとしていたヨハンの考えを汲んでおれと戦っていたのだから。
すかさずマィアはおれへと能力を掛ける。
しかしもう間に合わない。能力を掛けられる前にヨハンに弾丸が届く。
ヨハンに穿った弾丸はヨハンの射程に入り大振りで弾かれる。その絶好のタイミングを兄貴が逃す筈は無い。
兄貴はすかさずヨハンへと殴りかかる。
その様子を確認してマィアを見てみるがおれへと槍や放物線は放たれない。
「…待て…どういうこと…。」
おれが呟いたその途中でその変化は始まっていた。
マィアはおれからヨハンを守るための攻撃ではなく、止めるための攻撃を仕掛けていた。おれの足元に冷たい感覚が過ぎる。
視線をすぐさま下ろすと靴に氷の膜が張ってある。
これはおれだけでは無く兄貴も同様でヨハンへと仕掛ける攻撃のスピードが殺されていた。
マィアの能力は危ないと思っていたが能力の適用範囲がここまで広いことに考えが及ばなかった。
おれら兄弟2人の窮地は唐突に訪れた。
ヨハンはおれへの迎撃のまま兄貴へと剣を振るう。
おれは兄貴の姿を見張る。
目の前で起きている信じたくない光景はおれの思考を停止させた。
そしてヨハンは兄貴の前から姿を眩ましおれの頭上に剣が振りかかる。
おれはそれに反応出来るはずも無く腹に衝撃が走る。
液体が身体から溢れていくのを感じながら足から崩れ落ち床に倒れる。
そこで気がつく。
ゲルダの予知は確実だったのだと。




