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第40話 弟は正体を悟られる。

引き続き更新です。徐々に兄弟たちのことが分かってきます。



僕たちがゲルダの元に歩みを進めると、ゲルダを拘束している女が思わず喋り出す。


「あんたたち一体何者なの?!」

その女は僕たちが近づいて表情をより強張らせた。

どちらかというと事態を飲み込めていない困惑している顔をしている。


「見ての通りさ。善良なる市民だ。あんたこそ誰だ?人を拉致って置いておいそれと帰れると思うなよ。」


アレンがまくし立てるがいつもより毒が入ってる。安全な立ち位置になった途端マウントを取り始める悪い癖だ。


「ゲルダ、怪我はない?」

僕は人質のゲルダへと安否を問う。


「大丈夫!スヴィンたちも無事よ!」

ゲルダが無事でホッと一息つく。

けどまだ終わっていない。


「あんたらの目的はなんだ?」


アレンが女へと尋ねる。

女は少し黙っていたが、自分の状況と立ち位置を理解して重い口を開けた。


「…私たちはあんたたち兄弟を無力化、若しくは殺すことを命じられてる。生半可な気持ちで向かうと危ないって言われてたけどこれほどまでとは思わなかったわ。」


物騒な話になってきた。

「どうやら組織があるらしいな。おれらはそんなに不満を買った憶えは無いんだがな。もしかしたら前に盗みに入った豪邸のどれかのうちの1つに当たったかもしれない。」


僕らは今まで数多くの屋敷を狙ってきたが、これほどまでに僕らを指定して襲ってきた事は無かった。



「いい?このまま人質として待ってるとこの子の腕が壊死するわ。」


その宣告と共にゲルダの表情が芳しくなくなる。


「…本気なのか?」

アレンはゲルダの様子も考慮して真意を尋ねる。


「そうよ!私を傷つけることは許されないわ!」

女は強く答える。


「…あんたはなにを望んでいるんだ?」

アレンが尋ねるが間髪いれずに女から返答がくる。


「あんたじゃなくて私はマィア!!」


急な自己紹介に僕は拍子抜けしたが、女は続ける。



「私の目的は弟。アレン=マクスウェルよ。」

一瞬場が静まる。

アレンの表情に少しヒビが入る。僕も動揺する。

先程までよりも強い視線でアレンはマィアを睨む。


「…お前、どこでおれの名前を?」

「だからお前じゃなくてマィアだって!!」


マィアが強く言い放つと彼女の後ろから槍の形を模した氷がアレン目掛けて飛んでくる。


「!!!!」


アレンは驚いて目を見張るが、無理もない。質量と飛んでくるスピードを考えて常人だと対処は無理だ。

僕も急なことで驚いたが目前に飛んでくる氷の槍を迎撃する為に一歩踏み込んで回転する。

素手で壊すには危険だと判断して飛来するギリギリのタイミングで脚を回して壊す。

辺りにガラスが割られる様な、つんざく音が響き渡る。そして透明な結晶が散りばめられる。


マィアは興奮しているのか肩で呼吸をしている。

アレンは急なことで何が起こったのかわからないと言った顔をしている。

しかし手元では銃を抜こうといた。


「アレン、油断してはいけない。君は今間に合ってなかったよ。」


「…すまない兄貴。おれも冷静じゃなかったようだ。」


「次から気をつけよう。マィアって子、能力だけはヨハンよりも危ないかも。」


「そうだな。ヨハンはどちらかと言うと話が通じない怖さがある。けどこの女は過激というか、おっかない。」

「僕もその意見には全面的に賛成だよ。」

敵であるマィアはこちらを血走った眼で見ている。


おぉこわ。


「マィア、冷静に話をしよう。君は今の状況を見てもまだ言うか?君の仲間のヨハンをおれたちは打ち倒した。君が人質を連れて、そしてヨハンと一緒に逃げる算段は難しいんじゃないか?」


マィアとの目線を合わせる。

マィアも大手を振って出てきたが、状況は彼女とて良くない。


「提案だ。ヨハンと一緒に帰って欲しい。おれたちは君らを狙って襲うことはしない。ただ、また襲ってくるなら今回のようには済まさない。」


マィアが固唾を呑む。状況は把握したらしい。

しかしそこに思わぬ言葉が聞こえてくる。



「奴らの甘言に騙されるな。」

後ろから水を差す言葉。

驚いて僕らは振り返るとそこには気絶から戻ってヨハンがこちらを向いていた。


「敵は狡猾なアレン=マクスウェル。こいつを信じてはいけないのは我らが1番知っている筈だ。」


ヨハンの忠告でマィアの表情は再び厳しいものになる。もう少しで説得出来そうだったのに。


「アレン、君は一体どんな悪さをしたのさ。」


僕は肘で小突きながら言った。


「知らないぞ。おれはそんな悪人ではないと思ってた。」

アレンは知らない知らないと手を横に振るが、顔には該当が多くて思いつかないと書いていた。

こんな弟嫌だ。


ヨハンが僕らに向かって言い放つ。

「我ら旅団、もとい猟団は目標を絶対に諦めない。」


ヨハンは真っ直ぐに僕らを見てくる。さっきまでと雰囲気が変わる。

殺気立っている。

僕は手袋をはめ直し、アレンは手早く銃のリロードを済ませる。



さぁ、ゲルダを取り返しにいこう。


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