第39話 兄は加減を忘れる。
前回から割と早い更新です。
戦いも手に汗握る展開になってまいりました!
「ここにいたのね。」
私はやっとヨハンを見つけられたことで言葉を出す。
屋敷の地下でもう戦闘は行われていたみたい。
目先の方にヨハンが剣を剥き出しにして構えている。
ヨハンの仕事が遅いことで違和感を覚えた。
話と違うわ。
よく見たら肩にナイフが刺さってる。
ヨハンがこんなにやられてるの初めてみるけど、大丈夫…の筈よね。
思う所はあったけど私は待っていることにした。
大丈夫、人質はいるわ。
私が登場したことで男2人が私へと振り向く。手配書で見た面影のある男2人を確認する。
実際に見てもそんなに似てなかった。しかし兄弟は双子だと分かるくらいには区別がつかなかった。
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声がする方を振り返ってみると見慣れない女がいた。
しかしその女の手にはゲルダが捕まっていた。ゲルダは両腕を後ろに拘束されており、水色に澄んだ氷に手を覆われていた。
「!!!ゲルダ!!!」
その様子を見た兄貴が叫ぶ。
まずいな、状況が悪くなってる。
「アレン…ヘイマン…。これって予知の通り…。」
ゲルダからの声が漏れる。
「どうしてこんな…。」
兄貴は驚いて声を上げる。
「大体察しはついた。おれらが盗みに入る留守を狙っての強襲か。シンプルだが確実な方法だ。」
おれは床から起き上がりながら状況の説明をする。
この環境でどうにか良い方向に事を持っていこうと考えるが分が悪すぎる。
おれが一考を講じようとすると、急に兄貴が走り出す。
まずい、ゲルダのことを見て冷静では無くなっている。
まだ怪我も癒えてない筈だ。
「兄貴待て!!」
おれは叫んで呼ぶが兄貴は一直線に向かって行く。
見るからに隙を見せている。このままだとヨハンのリーチ圏内で兄貴は危ない。それを好機と見てヨハンは一瞬にして姿を消して兄貴へと追撃する。
兄貴の身体へと剣が重なるのが見える。おれは現実を受け入れたくなくて一瞬目を背ける。
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ゲルダの姿を捉えて僕は一直線に向かっていた。
後ろからアレンの声が僕へと届く。
だけど今すぐにゲルダを助けないとダメな気がした。
本当はそんなことないかもしれないけど、ゲルダが泣き出しそうな瞳で僕らを見ているのが分かると冷静にはなれなかった。
僕はゲルダから1番遠かった位置に居たこともあって、走り出したが眼前にはアレンと対峙したヨハンがこちらを見ていた。
アレンが時間を要しても倒せていない強敵だ。
僕とアレンは闘い方が違うが、僕も苦戦しそうな敵ということは容易に想像がついた。
「兄貴待て!!!」
アレンの強い一言が僕へと刺さる。しかしその間にも一瞬で間合いを詰めたヨハンが切りかかってくる。
とても早い体術だ。これは切られてしまうと本能で理解した。
僕は逃げることが難しくなったのを悟り片手で剣を受け止める。
こんな鋭い剣なら僕の腕は衝撃と共にすっぱりと切られるだろうなと思いながらも他に防ぎようがなかった。
左腕に衝撃が走る。
僕の左腕は耐えられず切られる。
…筈だった。
「…なぜ…。」
ヨハンは手応えがあったと言うのに意味が分からないといった表情を浮かべた。
さっきまでの僕なら手袋ごしの左腕は切られていた。
だから、準備した。
アレンが敵と戦っている間に、止血と戦いに備えた。
僕はまず止血をしてその間に盗みに使う小道具を改めて確認する。
その中でここにくる前にスーに貰ったものを思い出してそれを取り出す。
少し不恰好だが厚みのある手袋だった。それも普通の手袋より弾力性に優れたゴム手袋といったものだった。
これを貰った時はどう見ても使えるものだとは思っていなかったがスー曰く
「これでなぐると、しなない。けどお兄ちゃんつよすぎるから、きぜつしちゃう。ヒーローみたいだよ。」
と言われたのを思い出す。
僕はどうやらヒーローだと思われているのでこの好意は甘んじて受け入れた。
しかし良いものを貰った。
これを付けて戦った方が手の平の防御力が高そうだ。
けどこれだけだと鋭利な剣に切られてしまう不安要素はあったので盗みに使うための油分たっぷりのオイルを手袋に付けて、手袋をはめた。
その甲斐あって攻撃を止める、よりも受け流すことに特化したものになった。
ズバ、という音では無くスピッという間抜けな音を立てて僕の身は守られ結果掠る程度にした。
敵の動揺が確かに分かったので僕はアレンが成し得なかった貴重な追撃をする。勝負は1発だ。
それはもう思いっきり殴った。
もちろん、グーで。
右手から敵の胸に掛けて思いっきり打ち付ける。
それはもう本当に綺麗に入って反対の壁に向かってヨハンがぶつかる鈍い音が聞こえた。
殴った拍子に油で少し滑って腹を殴ったけど、相手にとって打ち所が悪かったかもしれない。
肝臓がやられてないと良いけど。
敵がぶつかった音が地下室に響き渡る。
「…嘘でしょ。」
ゲルダを拘束している女が思わず声を上げた。
「ヘイマンやり過ぎ…。」
「あ、兄貴こぇぇ…。」
後ろから僕を人として見ていない目線を感じた。
後でアレンはきっちり絞めあげよう。
ヨハンが気絶してるのを目視で確認したので、僕ら兄弟は正体不明な女とゲルダを見据える。
「さて、派手に行こうか。」
「どっちが悪者か分からなくなってきたぞこれ。」
なんとも言えない表情をしているゲルダを前に僕らは赴く。動き過ぎて血だらけの僕と胸を押さえてふらふらの弟は、とても格好なんてつかなかった。
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