第36話 少女は拉致される。
大変長らくお待たせしました!
36話、更新です!!!
おれたちは施錠されていた扉を開けた。
さぁ宝はどこだ金はどこだとおれたちは息巻いていたが、部屋に入って気づく。
「ここは…。」
厳重に鍵をされていたのが納得する。
「ここは金庫じゃなくて、武器庫だったのか。」
おれたちの前へ壁に陳列された多くの銃が並んでいる。
見た所綺麗に手入れもされており直ぐに使えそうなものまである。
「セキュリティが厚い所を選んだらこのざまか。時間を掛けた割には金目の物は無さそうだな。」
おれは見回しながら観察する。
「うわー武器かぁ。僕は要らないかな。」
兄貴は分かりやすく落胆している。
兄貴の士気を下げない為にもおれはメリットを話す。
「そう言うな。おれは凡人だからありがたい。おれの生存率を上げることは2人の生存率を上げることに結びつく。」
おれは利点を話して兄貴の気持ちを削がないようにする。正直武器庫に入った所でたかが知れてる。
「今は2人じゃないよ。5人の生存率だよ。当初に比べたら多くなったね。」
確かに。
おれは兄貴と話しながらも武器庫を漁る。
するとある武器に目をつけた。
「これは見慣れないハンドガンだな。状態も良さそうだしおれの物より質が良い。これは貰っておこう。」
軽く握ってみる。
グリップが握りやすい。
反動がどのくらいか試してみたいがここで試し撃ちは出来ない。
「ねぇアレン。これ何だと思う?」
兄貴の声の方を見ても直ぐに見つからなかった。
探すように近くに行くと兄貴がしゃがんで下を見ていた。
傍に寄ると、床に取手が付いていた。それも台座が上に乗っており、おれが武器に夢中なっていたら視点が行かない所だった。
「これは…地下に繋がっている通路か…?しかも分かりにくい配置だ。兄貴じゃないと気づかなかったな。」
おれは素直に賞賛すると兄貴ははにかむ。
おれは台座を退かそうと力を込めるが全く動く気配が無い。
「手伝うよ。やっと僕の番だね。」
兄貴がおれの様子を見てられなかったのか助けてくれる。何事もなく台座を退かして地下に続く扉が現れる。
~~~~~~~~~~~
私たちは部屋で大人しくしていた。
スヴィンとオリバーは打ち解けたのか賑やかだった。
ややオリバーの方がスヴィンと接して疲れているように見えるけど、気のせいかもしれないと思うことにした。
オリバーには年の近い子供として頑張って仲良くなって欲しい。
しかし部屋で過ごしているだけだが唐突に寒さを感じる。
「これって…。」
今の時期は夏季になろうとしている比較的温暖な気候のはず。
これには2人も異常を感じたようで、
「さみぃ。」
「も、毛布どこだ…。」
2人が口々に不満を漏らす。
私もこの気温はおかしいと思うくらいには軽く震えていた。
すると部屋の扉が大きな轟音と共に開けられる。
扉からは冷たい風と一緒に小さな氷が飛散する。
私はこの状況が異常なことを悟った。
何か来る。
いつも状況は分からない。私は不意にスヴィンに襲われた記憶と相まって緊張が走る。
どうすればいいのか、よりも私は小さな2人の傍に駆け寄る。
「大丈夫!!?」
2人へと強く尋ねるが、急な音と寒さで喋れないのか強く頷くことで返事をする。
私は2人を庇うようにして扉へと身体を向ける。
するとゆっくりと中に女性が入ってくる。年齢は私と同じくらいの若い女の子だ。
目が少し大きく、可愛げがある印象を受ける。
着ている服は薄手なノースリーブでこの気温を考えると寒そうにも見える。
「奴隷鎖をしている女。あんたが巫女かしら?」
女の子が尋ねてくる。
追っ手?
何かは分からないけど私たちの敵なのは雰囲気で分かる。
「何のことかしら?」
私は知らぬふりを演じる。
「違ってもいいのよ。私は連れて来るように言われただけだから。」
途端に女の子は右腕を挙げて何かを放つ。
私は無意識に手で顔を覆うが強い冷気が身体に当たる。
後ろにいるスヴィンたちも
「「さむぅい!!」」
と可愛い叫び声が聞こえる。
私たちがこのままだと不利なのが分かる。
このままだとジリ貧。なら、せめて2人でも助かるなら。
「待ってこの子たちに危害を加えないで。」
私が言い終わると弱くなった。
今は小さな子たちを守らなければと思った行動が功を成したようだ。
少し話しが通じるみたいだ。
「あんたを連れて行くわ。断る余地は無いから大人しく付いてきて。」
私は黙ったまま頷いた。
少女は手を出して私を指差す。
すると私の腕が冷たいベールに囲まれた。その途端に氷が具現化され私の腕を拘束する。
「!!!!?危害を加えないって言ったのに!!」
私は少女を睨め付ける。
「あんたが言ったことは守るわ。その事にあんたは含まれていない。その子たちには何もしないわ。」
私は唾を飲む。
確かにその通りだ。
矛盾は言ってない。
案外律儀というかしっかりと言葉を汲んで理解してる。
「外に出て。何も出来ることなんて無いから早く。」
私は少女に急かされる様に外へと促される。
私は2人へと叫ぶ。
「無事に帰ってくるから…!」
オリバーは涙目に、スヴィンは大人しく頷く。
少女は言い終わらない内に建物を破壊して外に出る。
おもむろに手を突き出し何もない土地に氷の道路を作る。少女の靴底に歯がついているのか器用に滑り私を連れて行く。奴隷鎖を手持ちにされている為に首が軋む痛みを感じる。
少女は滑りながら手から氷のロードを作り出し器用に進む方向へと導く。
しかし私はこの進む方向に違和感があった。
「この方向は…。」
「気がついた?あんたたちがここの領主を調べ上げてたのが分かったわ。目当てが何なのか私らには直ぐ分かった。もうすぐであんたが会いたい人にも会えるわ。」
少女は全てを知っているかのように話してくる。
状況は私の予知の通りに進んでいく。
アレン、無事でいて。
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