第35話 兄弟は潜入する。
だいぶ遅い更新になりました。
平日もやっと終わりですね。
遂にアレンたちは潜入します!!
堂々と潜入に成功した。
館の玄関はひっそりとしており薄暗かった。こちらとしては丁度良い。
やけに室内が静かだから外で騒がしくするとすぐ音が聞こえてくるのが分かる。やはり騒がしくするのは得策では無さそうだ。
「アレン、金庫がありそうなところだとどんな場所だろう。」
「そうだな。普通はセキュリティが厚い所で保管するが、ここは平和ボケしているからな。もしかしたら領主の寝室の近くなんてことがあるかもしれない。」
おれはやや冗談交じりに話す。
兄貴は気に入ったのか笑いながら返す。
「ハハハそんなことないでしょ。そんなリスキーなことする?」
兄貴は笑ってはいるが疑っているようだ。
「どちらにしろ片っ端から探すしかない。この建物の規模だと給仕や警備の数を合わせて30人〜50人くらいだろう。セキュリティが堅そうなところから探す。」
「問題無いよ。そしたらまずこの奥に突き当たったところから調べて行こう。」
おれたちは敵の気配に警戒しながら索敵を始めた。
兄貴と2人で盗みに入るのはゲルダを助けた時以来か。
やけに久しぶりだと感じる。
前回の時のイメージを思い出して辺りをよく注視しながら動く。
腰を低くして足音を極力たてないように速く歩く。
腐っても領主の館なのか床にはカーペットが一面に敷いてあり足音を消してくれる。
屋敷の角を曲がろうとすると、兄貴がハンドサインを出す。
"待て" の合図だ。
おれはそっと後ろに回り状況を確認する。
「何があった。」
「見てみてよアレン。あの部屋の作りはお金の匂いがしそうなところじゃない?」
兄貴が言ったのを確認するためにおれは覗き込む。
そこは四隅に作られた部屋で、他よりも入り口が大きく作られていた。見た目もそれなりの作りになっていた。
「確かにただの部屋にしては不審だな。よしあの部屋から探そう。」
おれは盗む前に状況を確認する。
向かうのは廊下の一本道目測で20メートルちょっとか。
逃走経路はこの道しかなく1つだけ…ではなかった、窓がある。
万が一の際はここから抜け出そう。
問題なく部屋の前まで着いた。
遠くから見るだけだと分からなかったが、しっかりと鍵が付いているのが分かる。
おれは先程拝借した鍵束を片っ端から試そうとするがそもそも鍵穴が無い。
「開かないな。」
「これは早速ビンゴじゃない?」
おれは鍵の状態を確認する。大きな南京錠になっておりダイヤルは6桁か。適当に数字を弄るが0〜9まである。
「これ全部試して開けたら何通りあるの?」
兄貴が疑問に思ったのか尋ねる。
「そうだな。0〜9の数字が3桁で1000通りだ。6桁だから1,000,000通りで100万だな。」
「果てしない数だね。」
兄貴は呆れた顔をする。
100万通りも試してみようなんて更々思わない。
これは時間がかかるのでどうやれば1番時間が短縮されるのか考えてみる。
20秒ほど考えて検討を付け終えた。
そして思いついたナンバーを入力する。
いくつか試すが開く兆しが無い。
「開かないね。」
「流石に一発では開かないさ。」
おれはこの鍵を取り付けたであろう領主の考えを汲み取る作業を始めた。
ここの街の治安は比較的良い。
そして平和だ。
ここまでの警備の緩さも考えて領館が容易く入れることからナンバーも比較的簡単な設定にしているのでは無いかと考えた。
まず思いついたのが領主は毎年自身の誕生パーティをしていた。
そろそろ年もいい頃なのに誕生日すら自分で主催かと呆れたものだ。
おれが調べたその日を思い出して入力するが鍵は未だに堅牢のままだ。
鍵の状態も細かくチェックする。
相変わらず南京錠は閉じたままだが少し年季を感じる色合いになっていることに気づいた。
「最近付けた鍵ではないな。おれの調べではこの建物の築年数は20年は経っていると聞いた。」
「それにしては綺麗だよね。」
「小まめに手入れをしているんだろう。余裕が無いと出来ないことだ。」
おれはもう一度領主の考えを読み解く作業を始める。
20年前にこの屋敷を作った。
その時は全てが新しく失いたくないものだっただろう。
そんな心境を抱えてナンバーを設定したんだ。
生年月日なんかに設定してもその設定された人物が死んでしまっては憶える反復は無くなり失念しやすいだろう。
ふぅ…。
一息呼吸をつく。
今後変化の無い番号は何だろう。
考える。考えろ。時間は限られている。こうしている間に見つかっては呆気なさすぎる。
様々なものに試行錯誤を繰り返し案を作る。
……思いついた。不変のもの。
他にもいくつか思いついたがこれで当たってみよう。
おれは潜入の時に持ってきた携帯用に付けている腰の鞄から小さな地図を取り出す。おれの書き込みも入っているが今はそこを注視している時間は無い。
「何か思いついたみたいだね。」
兄貴は静かに待ってくれている。
途中から会話をしないで考える時間を作る配慮は天性の優しさだなと思う。
「見てくれ。この街はこのスポットだ。そして領館はこれだ。」
おれはペンで丸く囲う。そして視線を広くして微笑む。
「この位置の座標をこれから入力する。兄貴読み上げてくれ。」
おれは地図を兄貴に放る。
「はいよ。…えっと147と384!」
言われた通りにナンバーを入力する。
…カチャ。
短いが施錠音が鳴った。
「ビンゴだったな。」
「相変わらずその頭の回転凄いなって今久々に思い出したよ。流石だね。」
順当に上手くいってる。
金目のものを掻っ払ってさっさと逃げる。この願いを願わくば叶えて欲しいと思いつつ、おれは扉を開ける。
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